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住まいを再生する

昨秋、講演をお願いした平山先生から本書の刊行を知らされ読み始めた。住宅問題や建築関係の研究者に留まらず、弁護士や法学、行政学、経済学などの多様な執筆者が分担して、東日本大震災及び福島原発事故による被災者支援と地域復興に向けて、現在直面して…

居場所としての住まい

筆者の小林秀樹と言えば、つくば方式定期借地権住宅で有名だが、「ナワバリ学」と言われると、「何それ?」と思ってしまう。しかし、「あとがき」によれば、そもそも大学院生時代の研究テーマは家族のナワバリの研究だったそうだ。現在の千葉大に赴任後、再…

自治体のエネルギー戦略

東京都庁の大野氏の著作ということで気になっていた。前に岩波新書から発行された「都市開発を考える」は今でも自宅の本棚に置かれている好著の一つだ。あれから20年余。大野氏は東京都庁で約15年前にそれまでの都市行政から環境行政部署へと異動され、東京…

里山資本主義

著者に「デフレの正体」の藻谷浩介氏の名前が挙がっている。「あとがき」でも藻谷氏自身が「デフレの正体」以来の執筆と書いているが、実は藻谷氏が書いているのは「中間総括」と「最終総括」の2章に「おわりに」だけで、いわば本論に当たる第1章から第5章ま…

風景という知

久し振りにオギュスタン・ベルクの名前を見て思わず注文してしまった。一昨年に発行された本。わずか119ページと短いながら、中身は難解。かなり苦戦してしまった。オギュスタン・ベルクってこんなに難解だったっけ。それでも父親の紹介や母親のスケッチ、妻…

3.11後の建築と社会デザイン

東日本大震災が発生して概ね4ヶ月後の2011年7月16日に行われたシンポジウムの記録である。消費社会研究家の三浦展氏と建築家の藤村龍至氏が司会をして、多くの豪華なメンバーがパネラーとして参加し、2部に亘って開催された。第1部では、建築家の山本理顕氏…

住宅の歴史社会学

●住居が固定された物質ではなく社会的な過程であるならば、その再編成もまた、社会的なものとして構想されねばならない。性急な解決を求める前に必要なのは、近代住居空間の社会的な構成を読みとき、分析することだ。歴史社会学は、そのための距離と自由を確…

東北発の震災論

「限界集落の真実」で一躍注目を浴びた山下祐介氏だが、東日本大震災の直後、2011年4月から弘前大学を出て、首都大学東京に異動した。しかしけっして東北を捨てたわけではない。以前のようにどっぷり浸かることは難しくなったかもしれないが、これまでの関係…

まちなか戸建

先日、森本先生の講演をお聞きし、やはり読まずばなるまいとさっそく本書を手に取った。基本的には先日の講演会と同じ流れである。講演の中でも話しておられたが、「2部 まちなか戸建の性能」と「3部 まちなか戸建を支える地域ビルダー」が先日の話にはなか…

あなたならどうする孤立死

1~2ヶ月程前に愛知県内の県営住宅で死後1年近く経った夫婦の白骨死体が発見されるという事件があった。孤立死は死亡者本人や周辺地域住民以上に、住宅所有者にとってこそ経済的な損失が大きいと考えるし、行政よ何とかしろ、と言っていればいい問題ではない…

小さな建築

隈研吾といえば竹や木など、自然素材を使った建築物を多く作ってきている印象がある。それはたぶん、人間の身体性に近いところで設計をしていきたいという意図があったのだろうと思うが、「小さな建築」というのは「身体性」に近い位置にある。 「はじめに」…

江戸の都市プランナー

「都市プランナー」というタイトルに騙された。歴史学者からすると、自治活動のリーダーは「都市プランナー」なのだろうか。出版社の戦略かもしれないが、せめて「江戸の都市行政家」位にしてほしかった。 本書は江戸末期の文化6年(1809)から安政5年(1858…

あの日からの建築

伊東豊雄という建築家はもちろん昔から知っていたけれど、やはり「せんだいメディアテーク」でガラッと変わったというイメージがある。本書は鈴木布美子というインタビュアーに対して話したことをまとめ、加筆・修正してできた、伊東豊雄の半生を振り返り、…

発展する地域 衰退する地域

先に読み終えた「都市は人類最高の発明である」と同時並行に読んでいたので、内容が頭の中で一緒くたになっている。前著は都市が人類にとって発展という意味でも環境的にも最高の方法であると絶賛するものだったが、1984年に発行された本書も都市が経済発展…

都市は人類最高の発明である

アメリカの都市経済学者による都市論である。タイトルのとおり、都市を絶賛する。「ジェイン・ジェイコブズに強く影響を受けている」と自ら語るが、経済学的視点で見ることでジェイコブズも否定した摩天楼を評価する。経済学者の常で、都市規制を否定し、交…

団地の空間政治学

「団地の時代」や「滝山コミューン1974」で一貫して団地の政治状況について研究してきた筆者による団地の空間政治学。本書では、大阪の香里団地、東京多摩の多摩平団地とひばりヶ丘団地、千葉の常盤平団地と高根団地を取り上げ、各団地での自治会や居住者組…

コミュニティデザインの時代

いま民間の都市計画系コンサルタントは行政からの発注が減って、経営的に厳しい状況に追い込まれていると聞く。いくつか倒産した会社もあるし、人員整理を行っている会社も多い。そうした状況の中で、山崎亮氏が実践するコミュニティデザインの仕事が注目を…

都市の条件

平山洋介氏は「コミュニティ・ベースト・ハウジング」以来、注目を続けている住宅研究者の一人である。神戸大出身で「居住福祉」を著した早川和男研究室の流れを組む研究者だが、体制批判というスタンスだけでなく、幅広い視野の中で、日本の住宅問題と住宅…

都市と消費とディズニーの夢

先に読んだ「商店街はなぜ滅びるのか」をAmazonで検索すると、「よく一緒に購入されている本」に本書が紹介されていた(今は違う本になっている)。それで興味を持って読んでみたが、正直がっかり。「商店街はなぜ滅びるのか」は日本の商店街の歴史を、労働…

第四の消費

三浦展の消費社会論の集大成と言える。消費社会を大正初期から始まる第一の消費社会、戦後の第二の消費社会、オイルショック後の第三の消費社会、そして人口減少などが始まって以降の第四の消費社会と4つに区分し、特に現在から今後さらに進行する第四の消…

焦土からの再生

●日本の各都市は戦災による無惨な状態から見事に再生した。本書の拙い文でその事実がどこまで伝えられたか自信はないが、戦災復興をなし遂げた不屈の歴史が東日本大震災の被災地を勇気づけることにつながれば幸いである。(`327) あとがき文末の文章である。…

商店街はなぜ滅びるのか

光文社新書はよくこういった煽り型のタイトルを付ける。それでかなり損をしている気がするが、内容は、商店街の衰退の原因を説明するものでも、再生方策の提案をするものでもない。真面目に近代的な商店街の誕生から現在までの歴史をなぞる好著である。 商店…

開発空間の暴力

大津市のいじめ自殺事件が連日報道されている。「いじめ自殺を生む風景」という副題のとおり、本書では1980年から2006年に至るまでのいじめ自殺事件が発生した地域の特徴について調べ、地域開発と風景がいかにいじめ自殺に影響しているかを考察する。 いじめ…

まちの幸福論

コミュニティデザイナー・山崎亮が最近注目を集めている。いくつか著書がある中で、「まちの幸福論」というタイトルに惹かれて、まずは本書を手に取ってみた。 第1章・第2章で筆者がコミュニティデザイナーの道を歩むまでの経緯や経験を語り、第3章でNHK「東…

空き家急増の真実

日本の人口減少が始まるにつれて、過疎地や地方都市において空き家の増加が問題となりつつある。いや都市部でもニュータウンの空き家増加は大きな話題になっている。空き家問題については、老朽化して放置された危険な空き家の撤去をいかに進めるかという問…

やわらかく、壊れる

五十嵐太郎の「被災地を歩きながら考えたこと」の巻末のみすず書房刊行書名リストの中にこの本が並んでいた。その時は筆者の佐々木幹郎氏について何も知らなかった。詩人である。大阪で育ち、東京下町に住み、近年はネパールを歩き、世界を旅して紀行文を多…

被災地を歩きながら考えたこと

建築評論家の東北大学教授・五十嵐太郎の震災後初めて出版されたエッセイ集である。建築界では有名になった耐震改修後にも関わらず損傷した研究棟には筆者の研究室も入っていたそうである。震災当日は横浜のトークイベントに参加中で身体的な被害はなかった…

限界集落の真実

「限界集落」という言葉が初めてマスコミで喧伝されたのは2007年のことだったそうだ。自民党が参院選で大敗し、地域間格差問題の象徴として取り上げられた。時に「自然消滅するような地域に税金を投入するのは無駄だ」という議論とともに。 私としてはそうい…

建築の大転換

建築家・伊東豊雄と思想家・中沢新一の対談集。2009年7月の青山ブックセンターでの対談。2011年2月の伊東豊雄設計事務所設立40周年パーティでの対談。2011年3月の伊東建築塾プレイベントでの藤森照信も加えた鼎談。そして2011年7月の伊東建築塾での中沢氏の…

階級都市

「橋爪紳也」氏が書いた都市論だと勘違いしていた。筆者の「橋本健二」氏は社会学者。それも「都市社会学」という分野があるらしい。本書はタイトルのとおり、社会階級が都市に表れているということを説明するものだが、それだけなら、「山の手」と「下町」…

住まいの手帖

「暮らしの手帖」をパクったタイトル。装丁も内容の雰囲気も似てるかもしれない。「都市住宅」や「GA HOUSES」など住宅・建築雑誌等の編集長を長く担当してきた植田実氏による上質のエッセイ集。月刊「みすず」に連載した60回分を掲載している。 住宅の本に…

世界が賞賛した日本の町の秘密

タイトルを見て、「世界が賞賛する日本の町」のいくつかが紹介されているのだとばかり思っていた。それは、京都か、奈良か、それとも金沢・・・? ところが本書で賞賛されているのは、日本のどこにでもある「ママチャリタウン」だ。そう、本書はママチャリを…

後藤新平

越澤先生が「東京都市計画物語」や「東京の都市計画」を書かれていることは知っていたが、そもそも東京のことをよく知らない私が読んでも理解できないだろうと思い、未だに読んでいない。東日本大震災が発生し、震災復興が大きな課題になっている。今この時…

日本の植民地建築

年末に読んだ「植民地建築紀行」に続いて、西澤先生の植民地建築本を読んだ。こちらの方が先に発行されており、あとがきには日本建築学会賞を受賞した「日本植民地建築論」のダイジェスト版として発行されたと書かれている。 「第1章 植民地建築」で西澤先生…

郊外はこれからどうなる?

「はじめに」に「東京郊外を考えるための最低限の基礎知識が身につく、入門書」と書かれている。また「公開講座で・・・若い人たちを相手に話した内容をまとめたもの」とある。 これまで『「家族」と「幸福」の戦後史』や「ファスト風土化する日本」などで郊…

都市計画の世界史

娘に「都市計画の本がない?」と聞かれて、学生時代、日笠端先生の「都市計画」を教科書として使ったことを思い出した。が、今となってはどこにあるのかわからない。結局、この本を図書館で借りてきてレポートを提出したらしい。返却が年明けになっていたの…

植民地建築紀行

著者の西澤氏とは一度プライベートでお会いしたことがある。当時は植民地建築の研究を主にしていることも知らなかったが、それを知った以降もなかなか著者の本を手に取る気がしなかった。それはもちろん日本が植民地支配をしていた時代、支配のための建築物…

ジェイコブズ対モーゼス

「アメリカ大都市の死と生」でこれまでの都市計画を批判し、住民主体による既存の環境を生かした都市再生を説いたジェイン・ジェイコブズ。本書の誕生のきっかけとなったのは、ニューヨークの都市行政官として君臨したロバート・モーゼスとの下町の都市改造…

フジモリ式建築入門

「フジモリ式」とあるように藤森照信ならではの建築史観が疾走。独特の語り口で数十万年前のアフリカの原野に作られた火を囲んだ野営から、ヨーロッパの新古典主義、歴史主義まで、日本の書院造、茶室、数寄屋造までを一気に語り尽くす。 「建築は“人々の記…

災害の住宅誌

●災害に見舞われた人々は「生活拠点」を移動せざるを得ない。災害に見舞われれば移動するのだ、ということを予め建築のプログラムの中に組み込んでおけば、災害後に移動することを当然のこととして受け入れることができる。その場合、「持家」というシステム…

建築少年たちの夢

団塊の世代生まれの建築評論家・布野修司が同年代からやや上の年代の日本の建築界をリードしてきた建築家9名を取り上げ、彼らとの交流を振り返りながら、その足跡と建築論等を紹介する。取り上げる建築家は、安藤忠雄、藤森照信、伊東豊雄、山本理顕、石山修…

エイジング・イン・プレイス(地域居住)と高齢者住宅

改正高齢者住まい法が施行され、10月20日からサービス高齢者向け住宅の登録が始められようとしている。高専賃や高円賃の登録制度も整理され、日本の高齢者住宅を巡る状況が大きく変わろうとしている。 本書は、エイジング・イン・プレイス(地域居住)と高齢…

日本の建築遺産12選

ヴィジュアル入門書「とんぼの本」シリーズの1冊。「語りなおし日本建築史」の副題のとおり、磯崎新が日本の建築遺産を12選定し、それをもって日本建築史を語りなおす。常に外国から新たな建築技術や様式を導入しながら、独自の変形「和様化」を図ってきた日…

五一C白書

娘の学校の宿題で本書のまとめレポートの提出があった。提出後、本書を借りて読んでみた。「51C」は言わずと知れた1951年度公営住宅設計標準で、その後の集合住宅におけるダイニングキッチンの導入や間取り計画に大きな影響を及ぼしたとされる。著者の鈴木成…

これからの日本のために「シェア」の話をしよう

最初、書店でこの本を見かけたとき、「今さらシェアの話なんて」と思った。確かに時代は「シェア」の方向に向かっている。三浦展が「シェア」についてどう考えているのか確認しようと図書館で借りて読んだ。 大きな驚きはない。まさに時代は「シェア」に向か…

2100年、人口3分の1の日本

タイトルを見て、もっとおちゃらけた本ではないかと思っていた。しかし読んでみると非常に示唆に富む内容のものである。今のままの推計では、2100年には日本の人口は1/3になる、というのは本当である。だからこそ、東日本大震災の復興についても、この人口減…

津波災害

今回の津波災害が発生する直前の昨年12月に発行されている。その時に読んでおけば、今回の津波に対しても正しい理解をもって臨めただろうと思う。筆者の河田惠昭氏は、阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター長を務め、防災と危機管理、そして海岸・水環…

日本人と不動産

不動産の所有・利用等に関する経済や規制、歴史などを総括的に説明する入門書。「なぜ土地に執着するのか」という副題や、各章のタイトル「日本の街は、なぜ汚いのか」「土地所有のルーツを探る」は、誇大広告気味。だが、入門書としては非常に丁寧でわかり…

スラムの惑星

建築雑誌2011年1月号は「スラムの未来」を特集。この中でこの「スラムの惑星」を紹介していた。訳者の一人、篠原雅武氏も加わった座談会も掲載されている。これで興味を持って本書を読み出した。 翻訳書だからか、かなり読みにくい。多くの文献からスラム関係…

三低主義

建築家・隈研吾と社会研究家の三浦展の対談本。両者ともここ10年近く注目してきた人たちだけに本書を読むのを切望していた。その期待にそぐわない興味深い本に仕上がっている。かつ読みやすくわかりやすい。 戦後建築家の第1世代と言われる丹下健三や第2世代…