2009-01-01から1年間の記事一覧

ドイツ流街づくり読本

筆者は新潟に生まれ、ドイツに渡って建築事務所に就職し、ドイツの大学で学び、ARCHITEKTの称号を取得してドイツで建築家として活躍をしている。ドイツで建築活動を行う中で、ドイツの都市計画を知り、日本でその意味が十分に伝わっていないことを痛感し本書…

日本と欧州における社会住宅のストック・フローの差から考える持家政策を見直すべき理由

住宅供給は社会主義国でもない限り、原則として民間が経済活動として行うものだと思ってきた。しかし、「民間非営利組織による住宅事情」について研究報告をされた海老塚良吉氏の論文「英米独仏における社会住宅の供給組織の動向:1998年度都市住宅学会」(…

地方分権とナショナル・ミニマム

地方分権改革推進委員会が公営住宅の入居基準を地方で独自に定めることができるよう改正するよう勧告を出した。当初、単身者入居も認める方向で報道されていたが、最近は収入基準も地方で定める方向の議論が出ているようだ。 先日の都市住宅学会のワークショ…

格差社会の居住貧困

日本住宅会議からは隔年で「住宅白書」が発行されている。2007-2008のテーマは「サステイナブルな住まい」だから、「居住貧困」がテーマになるとは世相が大きく変化したものである。「居住貧困」という概念は、早川和男先生の「居住福祉」からつながる住宅問…

公営住宅自治会支援ビジネスを始めませんか

公営住宅の入居者が高齢化、低所得化し、自治会の運営が困難になってきている。UR賃貸住宅などでは、家賃の中に共益費相当分も含まれているため、入居者は家賃さえ払っていれば、共用部分の清掃やエレベータの管理などは住宅事業者がやってくれる。URであれ…

学会大会というものに参加して

私は学部卒で、卒業論文も書かずに(卒業設計だけで)卒業したので、学会大会なぞトンと縁がなかった。就職後、必要があって(というか、恥ずかしいことに、割引価格で参考書籍が購入できるという特典につられて)建築学会に入会し、誘われて見学会や講演会…

公共住宅の課題と再生

11月27~29日で都市住宅学会大会(名古屋)が開かれ、最終日の最後のプログラムの一つで、ワークショップ3「公共住宅の課題と再生(理念・事業・制度)」が開催された。コーディネーターを東海学園大学の三宅先生が務め、パネリストは国土技術政策総合研究…

「白壁・主税・橦木」の町並み保存活動

都市住宅学会全国大会(名古屋)の見学会で名古屋市の白壁・主税・橦木町界隈を歩いてきた。最近、通勤帰りにこの界隈を歩いていくこともたまにはあり、見慣れた景観ではあるけれど、改修し一般公開後、まだ入館したことのなかった建物に入ることができた。…

民間非営利組織による住宅供給と貧困ビジネス

「民間非営利組織による住宅事情」に関する研究報告を聞いた。都市再生機構都市住宅技術研究所の海老塚氏による講演で、海老塚氏の執筆で3月に発行された同名の書籍をベースにした話。もっとも、本書を私はまだ読んでいないし、海老塚氏の講演も、民間非営利…

コミュニティを問いなおす

あとがきで、本書は「グローバル定常型社会」と”対”の関係にある、と書かれている。「グローバル定常型社会」で語られた有史以来の歴史認識とその上で提唱される「環境と福祉の統合」。ローカル・コミュニティを出発点としたグローバル・ミニマムな対応とい…

団地再生まちづくり2

友人が東京都東久留米市でUR都市機構が実施した「ひばりが丘団地ストック再生実証実験」を見学してきた。雑誌などで読んだ限りでは、減築を始め多様なストック再生の試みを行っており面白そうだなと思っていたが、見てきた友人によれば、取り壊し予定の住棟…

低層RCで造る 田原市緑ヶ丘住宅

今年3月に紹介した稲沢市営西島住宅が、今年度の優良住宅団地として住生活月間国土交通大臣表彰を受けた。それほど大した住宅とは思わないが、買取制度の活用と高齢者福祉施設との併設が評価されたのだと思う。 平成20年度は岡崎市土井住宅が受賞しており、…

エコビレッジ志段味 もうすぐ完成

荒川修作の奇抜なデザインで注目を集めたシティファミリー志段味を囲んだ広い敷地が昨年度から仮囲いで囲まれ、建築工事が行われてきたが、いよいよ最近仮囲いを外し、その全貌が見えるようになった。エコビレッジ志段味である。総戸数約200戸を予定するが、…

内子・大洲 - 伊予を巡る

内子町は江戸末期から明治時代にかけて、木蝋の生産で賑わった山あいの町である。人口は2万人弱。果樹や椎茸など農業生産が主体で高齢化も進行している。昭和57年に重要伝統的建造物群保存地区に指定され、平成11年度から17年度にかけて街なみ環境整備事業に…

松山の建物を巡る-道後温泉本館・坂の上の雲ミュージアム・萬翠荘ほか

愛媛県には大学時代に友人と尾道から因島や大三島などの島をフェリーで渡り、新居浜から松山を経て宇和島まで旅行したことがある。しまなみ海道が開通するはるか以前のことで、宇和島の小さな町並と城跡、また外泊の石垣の景観だけを妙に覚えているが、道後…

信州 蔵のまち 須坂を巡る +松代

数年前、小布施に行った帰りに、蔵造りの町並みを通り過ぎ、ここはどこかと思ったことがある。須坂と知って、一度じっくり訪れたいと思っていた。今回、志賀高原へ行った帰りに、今度は小布施を素通りして須坂を訪れた。 前に通ったときは街道筋に並んでいた…

愛・地球博の環境配慮を伝える施設群

2005年に愛知県で開催された愛・地球博。「自然の叡智」をテーマに、環境に配慮した技術や活動が展示され、多くの入場者を集めた。企業パビリオンや各国パビリオンが並び盛況を極めた長久手会場とともに、ゴンドラに乗って渡った瀬戸会場では、県・政府パビ…

都市の記憶を失う前に

文化庁で長く歴史的建築物の保存と修復に携わってきた後藤治氏による、歴史的建築物保存に係る課題と解決のための提言の書である。保存のための経済的な制度等について研究するプロジェクトを立ち上げ、提言を行っているオフィスビル総合研究所が共著として…

美濃市 うだつのあがる町並み

今やすっかり定着した夏休み最初の3連休。どこも行かずに過ぎ去ろうとした連休の最終日、3年前に訪れた美濃市がいいからと妻を誘って、「うだつのあがる町並み 美濃市」をめざした。美濃ICまで小1時間。昼食はさらに15分ほど山間に入った洞戸観光ヤナで楽し…

足助のその後 定住者が着実に増えている

久しぶりに足助を訪れた。高嶺下(こうろげ)地区にお住まいのAさんに仕事の依頼をするのが目的だったが、ついでに「にこにこさくせん」他の住宅地を回ってきた。 足助に行くのは何年ぶりだろう。3年ぶりかな? 前に行ったときは私がいたとき(5年前)の状況…

住宅施策の鬼っ子 公営住宅の行く末

最近つくづく感じるのは、公営住宅は戦後住宅施策が生んだ最大の鬼っ子だということである。戦後住宅施策の三本柱と言えば、住宅公団、住宅金融公庫と公営住宅である。そしてそれらを計画論的に支えたのが住宅建設計画であったというのが、一般に言われる戦…

災害社会

筆者は東大卒業後、富山大学でスロー地震などを研究し、2002年より京都大学防災研究所で教授を務めている地震学の専門家である。2008年の四川大地震や岩手・宮城内陸地震などのホットな地震災害を題材に、海溝型地震、内陸型地震のメカニズムと軟弱堆積層に…

環境の時代と住まいの可能性

木造住宅を中心に活躍する建築家・三澤文子氏の講演会があったので参加した。三澤氏は奈良女の物理学科を卒業後、専門学校で建築を学びんだという異色の建築家。その後、藤本昌也氏が主宰する現代建築研究所で民家型構法を学び、夫の三澤康彦氏とともにMs建…

住宅政策のどこが問題か

住宅問題に関する新書はそう多くない。とりあえず早川和男による「居住福祉」(岩波新書)くらいしか思い浮かばないが、これはかなり偏った視点から書かれていたように記憶する。本書の著者の平山洋介も早川門下の一人ではあるが、15年ほども前に出版された…

まちづくりのツボ教えます

5日開催されたまちづくりシンポジウムに参加した。講師は近畿大の久隆浩教授。「まちづくりのツボ教えます」とは何ともベタな演題。若干のいかがわしさを感じつつ、あまり期待せずに参加。最近の疲れもあり、冒頭はうつらうつらしていたが、途中から面白さに…

郊外住宅団地再生研究会

(社)地域問題研究所が呼びかけて、「郊外住宅団地再生研究会」が開催された。人口減少社会における郊外住宅団地(ニュータウン)が抱える問題や課題を共有し、「魅力の維持や再生に向けた取り組みについて、地域住民の活動と行政施策の両面から検討」しよう…

減災のまちづくりと建築の危機管理

防災まちづくりの第一人者、室崎益輝先生の講演会があったので参加した。ちなみに室崎先生の今の肩書きは関西学院大学総合政策学部教授。高名な先生でもなかなか再就職には苦労されているようだ。それはさておき・・・。 いつも都市計画に関する話題が尻切れ…

景観形成と地域コミュニティ

まちなみ景観に関する建築・工学系からの考察は数多くあるが、社会学からのアプローチは観光化や地域活性化とからめて考察されることが多く、直接、景観形成そのものを考察することは少ない。本書は、筆者の一人、鳥越教授とその門下の二人の環境社会学者に…

岩瀬大町の町並みと夕暮れの五箇山

翌日は富山市のみなと町・岩瀬を訪れた。コンパクトシティの優等生として青森と並んで名高い富山市だが、その象徴的公共交通である富山ライトレールの終点近く、東岩瀬駅から先の神通川沿いに岩瀬大町の家々が並んでいる。岩瀬は北前船の拠点として多くの回…

高岡の町並み 山町筋・金屋町

GW中の2日・3日と家族旅行で富山県の各地を廻ってきた。最初に訪れた「となみチューリップフェア」と3日に行った立山室堂の旅は別のブログに譲るとして、その間に家族にワガママを言って、高岡市山町筋と金屋町の町並み、さらに富山市岩瀬と五箇山にも寄って…