2010-01-01から1年間の記事一覧

人口減少時代における土地利用計画

序章、終章を除き、全部で25編の論文が収録されている。執筆者は共著者も含めて21名。そのうちの一人から格安で譲っていただいた。が、B5サイズ2段組に細かい活字でびっしりと専門的内容が詰まった本を読み進めていくのはしんどい。長い間机の上に放ってあり…

「大学町」出現

本書を読もうと思った動機は、筆者が名古屋大学出身だったから。最近、名古屋大学及び関係者と関わることが多くなった。キャンパスにも行くことが増えた。これまではただ通り過ぎるだけの場所だったが、最近は鏡が池を眺め、起伏のある地形を歩き、周辺の高…

持家政策を評価する視点と公共住宅の役割

藻谷浩介の「デフレの正体」の中に、「公営住宅と持家対策の2段階方式で成功した戦後の住宅政策を見習った医療福祉制度の構築」という提案がある。建築・都市計画関係者からはすこぶる評判の悪い日本の住宅政策を成功例として評価している点が気になっている…

名古屋城本丸御殿の復元工事

グランパスが優勝した。名古屋城の金の鯱(しゃちほこ)がことさら輝いて見える。 名古屋城は慶長15(1610年)年、徳川家康がいわゆる「清洲越」と言われる清洲城からの遷府を決定し、加藤清正・福島正則らに命じて普請、1612年に完成した平城である。 1615年…

非営利住宅セクター(社会的企業)による住宅供給と英米住宅政策比較

都市再生機構都市住宅技術研究所を今年の7月に退職。今は法政大学兼任講師として教壇に立つ海老塚良吉氏に、「非営利住宅セクターによる住宅供給(日本と欧米の状況)」と題して講演をしていただいた。 海老塚氏には昨年の11月に「民間非営利組織による住宅…

公共住宅団地の高齢化を考える

世の中「高齢化ばやり」である。年金問題、介護福祉の問題、地域の衰退・・・。さまざまな事柄が高齢化に結びつけられて問題とされている。それはある意味、事実だが、それを課題と考えるかどうかは、課題視する側の事情や意識に拠る。事象に伴う将来像を描…

分譲マンションは今後どうなるのか?

都市住宅学会中部支部主催、研究交流会「分譲マンションは今後どうなるのか?-時代の変化が予想する成立と存続の条件」を聴いてきた。講師は、元高崎健康福祉大学大学院教授・元国立公衆衛生院住宅衛生室長の松本恭治氏。既にこれらの役職から退職され自由…

オランダにみるほんとうの豊かさ

先日、角橋先生からいただいた本をようやく読み終えました。著者名には、奥様の方が先に名前が綴られており、先生自身からも「妻の方が多くを書いている」とおっしゃっていたが、何の何の、ご主人が書いている部分、サポートしている部分が多くあるのがわか…

「オランダの社会住宅」訳者の角橋氏に聴く

「オランダの社会住宅」の訳者で「オランダの持続可能な国土・都市づくり」の著者である角橋徹也氏の講演を聴く機会があった。私が幹事を務める都市住宅学会東海支部公共住宅部会主催の講演会の講師になっていただいたもので、角橋氏へのアポイントメントか…

地域再生の罠

●日本の「地域づくりの視点」は、先に欧米の器や制度を「技術的・表面的」にみて、その技術・表面を日本にそのまま持ち込んで、それに「市民が合わせることを強要」されている。・・・日本は専門家、自治体から商店主まで、公益と市民への配慮が感じられない…

日本版グリーン・ニューディール政策への提言

「ドイツの省エネリフォーム政策」で紹介した村上敦氏の本を読んでみた。本と言っても一般の書店やAmazonなどでは流通しておらず、以下の販売サイトからダウンロード購入した。 ○イオルウィズ「日本版グリーン・ニューディール政策への提言」 ちなみに、こう…

小海町高原美術館

8月14日。お盆の週末の真っ最中。今だ続く高速道路1000円の割引制度を活用し、中央道長坂ICから国道141号を北上する。松原湖入口を左折して、松原湖畔を通り過ぎたところに小海高原美術館はあった。 地上1階地下1階の建物は、駐車場から見ると、低く長いコン…

ぼくらが夢見た未来都市

全部で9章構成。五十嵐が建築家の描いた未来都市とその思想を紹介し、磯がSF小説やアニメ、映画などで表現された未来都市を紹介する。 大阪万博とそれに向かう1960年代。丹下健三や黒川紀章などの"大"建築家が発表した東京計画。ルネサンスからル・コルビュ…

建築士2010年8月号から 「斜面住宅」と「建築士試験」

先に、愛知建築士会の会報から目に止まった記事を引用したので、今度は日本建築士会連合会の会報「建築士」から。目に止まったのは2つ。一つは巻頭のOPINIONから鮫島和夫先生の「高層住宅VS斜面住宅 どちらが安全安心?!」。もう一つは速水清孝氏の連載講座…

ドイツの省エネリフォーム政策

愛知建築士会の会報「愛知の建築」に、前々号から、ドイツ在住の環境ジャーナリスト・村上敦氏による建築講座「省エネを進めるドイツの建築」が連載されている。3回目の2010年8月号は、「ドイツ既築のリフォームの現状と制度について」。 環境対策については…

オランダの社会住宅

オランダの社会住宅を他国に紹介する英語版著書を翻訳したものである。オランダの社会住宅制度をざっと要約すると以下のとおりとなる。 オランダの住宅の内訳は、持家が52%、民間賃貸住宅が12%で、残り36%が社会賃貸住宅となっている。 社会住宅の供給事…

「生協のんびり村」の暮らしと活動

東海市と言えば、「デフレの正体」で藻谷浩介氏が、太田川駅前を「好景気にも関わらず閑散な駅前の代表」として取り上げていたが、「生協のんびり村」はその太田川駅から河和線で2駅目、南加木屋駅から歩いて5分ほどのところにある。南加木屋駅の東から北に…

団地の時代

政治思想史を専門とする原武史。直木賞作家である重松清。昭和37・38年生まれの同学年の二人による「団地」をめぐる対談集。 原武史が書いた「滝山コミューン1974」を中心に、団地の同質性に根ざす政治性の観点から公開対談した「対話のまえに」に続いて、こ…

安全な建物とは何か

「知りたいサイエンスシリーズ」のうち、「食品汚染はなにが危ないのか」「化学物質はなぜ嫌われるのか」など社会に関わる問題を取り上げた中の1冊。一般向けにやさしく耐震設計の実際について解説しつつ、建物の安全性とは何か、法律の役割と基準・規準の役…

ニュータウン再生

筆者は大阪の都市計画系研究機関において長年にわたり千里ニュータウンの変遷を見守り研究を続け、退職を機に大阪大学大学院に入学。本書はそこで提出した博士論文をベースに記述されたものである。現在、NPO法人「千里・住まいの学校」の代表理事を務めるな…

マンションの課題

都市住宅学会中部支部講演会は、「ストック活用社会における住まいづくりを考える」と題して、京都大学名誉教授・三村浩史先生が話される予定であった。が、講演会前日、急遽、先生が来名できなくなり、地元の3先生によるマンション問題に関する研究発表会に…

中京競馬場の見納め 改修工事に

中京競馬場が3月28日の高松宮記念を最後に、2年間の改修工事に入る。中京競馬場を運営する日本中央競馬会に土地・建物を貸す(株)名古屋競馬で働く先輩の好意により、休止前の競馬場を見学させていただいた。 日本中央競馬会(JRA)は、日本中央競馬会法に基づ…

よみがえる商店街

都市計画やまちづくりを担当していると、どうしても商店街のまちづくりに行き会わざるを得ない。しかし商店街の活性化と都市計画や街づくりは全く別物である。これは私が関わっている常滑やきもの散歩道のまちづくり活動でもたびたび感じることである。商業…

鵜沼宿にふたたび

高校時代の友人が神戸からやってきた。実家が各務原にあり、どこかまちあるきをしたいというので、鵜沼宿を歩いてきた。 一昨年の秋に行ったときは、学びの森(冬ソナ公園)や瞑想の森(斎場)などを見学し、可児の桜ヶ丘ハイツへ向かう途中に寄ったため、時…

シルバーピアという仕組み

東京都営住宅のシルバーピアを見学してきた。そもそも見学に行くまでシルバーピアとは何かがわかっていなかった。シルバーハウジングに関する調査研究の一環として行ったもので、シルバーハウジングとは、生活援助員(ライフサポートアドバイザー=LSA)によ…

「都市縮小」の時代

●21世紀は「都市縮小の時代」である。人口減少を前提とした都市の新しい「かたち」が問われる。都市の広がり、自然との関係、別の言い方をすれば、暮らし方、働き方の見直しが迫られるということである。(P18) 第一章の書き出しの文章である。 ●縮小都市は新…

第17回愛知まちなみ建築賞

愛知まちなみ建築賞の表彰式が愛知芸術文化センターで開催された。会場に空きがあるので何人か出てくれないかと言われ、翌日が休みのこともあり、午前中で何とか仕事にキリをつけ出席した。 今年度の受賞は全部で7点。主催者あいさつ、表彰式、選考委員長で…

オランダの持続可能な国土・都市づくり

オランダの国土づくり・都市づくり、そして同時に行われる住宅政策を、オランダの干拓の歴史から遡って、20世紀オランダモデルの達成、さらにグローバル経済下の21世紀における新たなモデルの模索に至るまで、総括的に論じた書籍である。難しく、かつ広範な…

居住の貧困

あとがきで、「戦前戦後を通じて、政治あるいは行政にとって、・・・住宅問題がマイナーな扱いしかされてこなかった」(P215)と言い、「本書によって住宅問題、とりわけ住宅政策に関心を抱く人が増えることを期待しています。」(P218)と書かれている。私も全…

地域の再生は地域力による。住宅市場は誰が整備する?

第5回あいち住まい・まちづくり研究会は「地域戦略」をテーマに、愛知大学三遠南信地域連携センターの黍島先生から「中山間地の居住と定住」、名古屋大学小川准教授から「地域戦略としての中古・賃貸市場の整備」について報告・提案があった。 前半の黍島先…