2012-01-01から1年間の記事一覧

大阪の保証金方式による借家建設

12月14日に開催された公共住宅部会(都市住宅学会中部支部)は面白かった。テーマは「日本の住宅事情史 Topic-1 (大阪の保証金方式による賃貸供給)」。講師は豊橋技術科学大学名誉教授の三宅醇先生。 先生は最近、「日本の住宅事情史」をまとめる構想を持…

団地の空間政治学

「団地の時代」や「滝山コミューン1974」で一貫して団地の政治状況について研究してきた筆者による団地の空間政治学。本書では、大阪の香里団地、東京多摩の多摩平団地とひばりヶ丘団地、千葉の常盤平団地と高根団地を取り上げ、各団地での自治会や居住者組…

江戸・東京・名古屋 歴史に学ぶ安全安心なまちづくり

「歴史に学ぶ安全安心なまちづくり」と題するセミナーに参加してきた。タイトルが安直だが、講師陣は三者三様。トップバッター、名古屋大学減災連携研究センターの武村雅之先生からは「関東大震災から見える江戸・東京の街の変化」。2番バッター、名古屋大学…

住宅サイドから考える道路の再生・維持・更新。問題は道路をいかに廃止するか。だが同時に宝の山でもある。

笹子トンネルの事故には驚いた。最初、トンネルの崩落事故と報道され、数十年前の北海道での豊浜トンネル崩落事故を思い起こしたが、今回は天井パネルの落下による事故で、崩落という言葉は正しくない。 その原因についても多くの専門家から様々な声が挙がっ…

災害からのすまいと地域の回復

もう1か月以上前に聞いた講演だが、その夜はそのまま講師を囲む会に参加したため、記憶も薄れ、今日までまとめないままになっていた。テーマは表記のとおりだが、事前に打ち合わせをした際に、「『災害からの住宅誌』で取り上げていた海外での被災後の仮住ま…

コミュニティデザインの時代

いま民間の都市計画系コンサルタントは行政からの発注が減って、経営的に厳しい状況に追い込まれていると聞く。いくつか倒産した会社もあるし、人員整理を行っている会社も多い。そうした状況の中で、山崎亮氏が実践するコミュニティデザインの仕事が注目を…

住宅政策の未来?

これまでもこのブログに書いてきたことのように思うが、いつ書いたか検索するのも面倒だし、最近思ったことということで改めて書き留めておきたい。 しばらく前に、愛知県内のシルバーハウジングでLSA(生活援助員)を務める方たちや市町の福祉部局、LSA派遣…

都市の条件

平山洋介氏は「コミュニティ・ベースト・ハウジング」以来、注目を続けている住宅研究者の一人である。神戸大出身で「居住福祉」を著した早川和男研究室の流れを組む研究者だが、体制批判というスタンスだけでなく、幅広い視野の中で、日本の住宅問題と住宅…

都市と消費とディズニーの夢

先に読んだ「商店街はなぜ滅びるのか」をAmazonで検索すると、「よく一緒に購入されている本」に本書が紹介されていた(今は違う本になっている)。それで興味を持って読んでみたが、正直がっかり。「商店街はなぜ滅びるのか」は日本の商店街の歴史を、労働…

首都圏の防災学習施設と小江戸川越・蔵造りの町並み

先々週の3連休、日曜日から月曜日にかけて、東京・埼玉へ1泊2日で旅行してきた。娘が4日かけて卒論のための施設調査に行くというので、じゃまにならないようについていったもの。 娘の調査先は東京と埼玉県の防災学習施設。ということで、まずは有明の防災体…

第四の消費

三浦展の消費社会論の集大成と言える。消費社会を大正初期から始まる第一の消費社会、戦後の第二の消費社会、オイルショック後の第三の消費社会、そして人口減少などが始まって以降の第四の消費社会と4つに区分し、特に現在から今後さらに進行する第四の消…

焦土からの再生

●日本の各都市は戦災による無惨な状態から見事に再生した。本書の拙い文でその事実がどこまで伝えられたか自信はないが、戦災復興をなし遂げた不屈の歴史が東日本大震災の被災地を勇気づけることにつながれば幸いである。(`327) あとがき文末の文章である。…

商店街はなぜ滅びるのか

光文社新書はよくこういった煽り型のタイトルを付ける。それでかなり損をしている気がするが、内容は、商店街の衰退の原因を説明するものでも、再生方策の提案をするものでもない。真面目に近代的な商店街の誕生から現在までの歴史をなぞる好著である。 商店…

地域の豊かさの意味と公共政策

「住民の幸福とは-地域の豊かさの意味と公共政策」と題する講演会に参加した。講師は前半が千葉大法経学部の広井良典教授。後半は公益財団法人荒川区自治総合研究所の二神所長。 まず、広井先生からは「地域の豊かさの意味と公共政策-ポスト成長時代の社会…

東日本大震災への住宅行政の対応と平時の備え ~ 仮設住宅中心を改め、仮設避難施設を供給し恒久住宅対策に重点を移すべき

先日開催された公共住宅部会は意見交換の後半で刺激的な提案が飛び出し、活気と興奮に満ちた研究会となった。基調報告は中部地方整備局の宮森住宅整備課長。ブログ記事と同じタイトルで1時間以上にわたり、東日本大震災への住宅行政の対応と自ら岩手県で応急…

開発空間の暴力

大津市のいじめ自殺事件が連日報道されている。「いじめ自殺を生む風景」という副題のとおり、本書では1980年から2006年に至るまでのいじめ自殺事件が発生した地域の特徴について調べ、地域開発と風景がいかにいじめ自殺に影響しているかを考察する。 いじめ…

東京丸の内近辺散策

東京での仕事帰りに東京駅まで戻ってから、せっかく来たのでと丸の内近辺を散策した。地下鉄「丸の内」駅から新丸ビルの地下に移動。エスカレーターで地上階に上がる。「新丸ビルも1階基壇部分に少しは昔のイメージを出そうとしているみたいですが」と 後述…

茅野市の藤森作品と茅野市民館

このところ夏には避暑に車山高原によく行く。茅野市神長官守矢史料館へは2005年に訪れたが、その時には完成していたはずの高過庵には寄らなかった。茅野市民館は2007年に行ったが、その時も娘はいなかった。一昨年、娘と一緒に車山高原に行った時は、安藤忠…

UR鳴子団地の再生と高齢者支援

UR(都市再生機構)では平成19年末に「UR賃貸住宅ストック再生・再編方針」を決定し、全国に約76万戸あるUR賃貸住宅の再生・再編を進めることとしている。中部支社管内にも約6万戸弱のUR賃貸住宅があるが、このうち約1万戸については団地再生や用途転換、土…

まちの幸福論

コミュニティデザイナー・山崎亮が最近注目を集めている。いくつか著書がある中で、「まちの幸福論」というタイトルに惹かれて、まずは本書を手に取ってみた。 第1章・第2章で筆者がコミュニティデザイナーの道を歩むまでの経緯や経験を語り、第3章でNHK「東…

空き家急増の真実

日本の人口減少が始まるにつれて、過疎地や地方都市において空き家の増加が問題となりつつある。いや都市部でもニュータウンの空き家増加は大きな話題になっている。空き家問題については、老朽化して放置された危険な空き家の撤去をいかに進めるかという問…

天神橋筋商店街と大阪市立住まいのミュージアム

久々に大阪へ行く機会があり、ついでに天神橋筋商店街を訪問した。ネットを検索すると日本一長い商店街と紹介されている。天神橋六丁目には大阪市立住まいの情報センターと住まいのミュージアムがある。これも一緒に見たいと思って、予定より早い新幹線に乗…

やわらかく、壊れる

五十嵐太郎の「被災地を歩きながら考えたこと」の巻末のみすず書房刊行書名リストの中にこの本が並んでいた。その時は筆者の佐々木幹郎氏について何も知らなかった。詩人である。大阪で育ち、東京下町に住み、近年はネパールを歩き、世界を旅して紀行文を多…

社会学と都市計画の違い

先日読んだ「限界集落の真実」は面白かった。筆者の山下氏は青森県等で集落調査をすると同時に、集落の再生活性化について住民と一緒になって考えた。先進県視察に同行し、集落の人々の「うちの女の人たちなら、もっといい味出すな」という言葉がきっかけと…

被災地を歩きながら考えたこと

建築評論家の東北大学教授・五十嵐太郎の震災後初めて出版されたエッセイ集である。建築界では有名になった耐震改修後にも関わらず損傷した研究棟には筆者の研究室も入っていたそうである。震災当日は横浜のトークイベントに参加中で身体的な被害はなかった…

限界集落の真実

「限界集落」という言葉が初めてマスコミで喧伝されたのは2007年のことだったそうだ。自民党が参院選で大敗し、地域間格差問題の象徴として取り上げられた。時に「自然消滅するような地域に税金を投入するのは無駄だ」という議論とともに。 私としてはそうい…

愛知県営住宅めぐり-最も新しい住宅と最も古い住宅

愛知県には約300団地、6万戸の県営住宅がある。このうち名古屋市内にあるいくつかの住宅を見て回った。 最初は県営紅梅住宅。この3月に竣工し、4月から入居開始をした5・6階建て32戸の新築住宅だ。環境共生に配慮し、屋上緑化や雨水貯留槽の設置、駐車場の緑…

建築の大転換

建築家・伊東豊雄と思想家・中沢新一の対談集。2009年7月の青山ブックセンターでの対談。2011年2月の伊東豊雄設計事務所設立40周年パーティでの対談。2011年3月の伊東建築塾プレイベントでの藤森照信も加えた鼎談。そして2011年7月の伊東建築塾での中沢氏の…

階級都市

「橋爪紳也」氏が書いた都市論だと勘違いしていた。筆者の「橋本健二」氏は社会学者。それも「都市社会学」という分野があるらしい。本書はタイトルのとおり、社会階級が都市に表れているということを説明するものだが、それだけなら、「山の手」と「下町」…

東京スカイツリー

上京したついでに東京スカイツリーを見てきた。2月29日に完成したけど、オープンは5月22日。それまでは見上げるだけ。友人に連れられて地下鉄半蔵門線で押上駅まで。改札を出ると真上にスカイツリー。高過ぎてただ見上げるばかり。カメラを向けるもなかなか…