2015-01-01から1年間の記事一覧

見えない道路

「見えない道路」とは二項道路のことである。タイトルはカッコいいが内容は正直わかりにくい。長く東京都で建築行政に関わってきた筆者が2001年に提出した学位論文をベースに二項道路に係る諸問題について考察する。文章がわかりにくいことに加えて、第2章「…

下呂を元気に! 下呂交流会館

温泉で有名な下呂市に5年前、市民交流のための施設「下呂交流会館」がオープンした。先日機会があって見学することができた。完成した施設内容もさることながら、運営や利用状況もすばらしく、元気をもらって帰ってきた。いい施設だった。 立地は下呂温泉か…

地方創生の正体

国があり、都道府県があって市町村がある。日本の統治構造‐自治構造はそう組織されている。そして住民はそうした多重構造の中で、特に地方の居住する住民は、その構造を下から眺め、実感している。昨年度から突然のように取り組み始められた「地方創生」は、…

多縁社会

我々は「縁」によって生かされている。「縁」はかつてのような血縁、地縁だけでなく、いまや様々な形の「縁」が我々の人生を生かしている。そしてそれが様々な住まいの形として見られる。本書は基本的に、こうした様々な住まいの形を紹介するものである。し…

既存ストックの福祉的活用

数週間前に「既存ストックの福祉的活用」について、金城学院大学の加藤準教授の講演を聞く機会があった。先生は建築計画が専門で、自ら設計したケアホームやデイサービスセンターの紹介をされた後、地域包括ケア時代の福祉施設について説明があった。ここで…

<小さい交通>が都市を変える

非常に面白い。とは、自動車や航空機、電車などのととの間にある移動手段をいう。一番身近なもので言えば例えば「自転車」。身障者用には電動車椅子もあるが、これら自ら操作するもののほかにも斜行エレベーターやベロタクシーなどがある。それだけではない…

中山道・馬籠宿と御嶽宿

秋になると無性に中山道に行きたくなる。それでぶらっと馬籠宿と御嶽宿へ行ってきた。 まずはシルバーウィークの中の1日、9月22日に家族連れで阿智村に向かう。いつものそば屋「おにひら」でお昼を食べた後、昼神温泉から一般道で清内路峠を越えて南木曾町へ…

2020年マンション大崩壊

前著「空き家問題」は、空家対策特別措置法の制定等もあって、大きなヒットになった。また内容も実務的でわかりやすく面白かった。その筆者が今度はマンションの問題について取り上げた。タイトルの2020年とは東京五輪の開催される時期だ。東京五輪後、湾岸…

「ユウナル東海」と名鉄太田川駅周辺のまちづくり

愛知県東海市の太田川駅前と言えば、「デフレの正体」で藻谷浩介が「好景気にも関わらず閑散な駅前の代表」として取り上げていた。「デフレの正体」が発行されたのは5年前で、確かにその頃はまだ区画整理事業などは目に見える形ではできていなかったかもしれ…

中部の都市を探る

筆者の一人、中部大の大塚教授からいただいた。しばらくツンドクを続けていたが、ようやく読み始めた。読んでみるとけっこう面白い。全部で20名の執筆陣が様々なテーマで中部圏、そして名古屋を読み解く。地理学、都市計画、交通政策、経済学、建築史など専…

安城農林高校 伝統ある校舎を復元

愛知県立安城農林高校を訪ねる機会があった。正門を入って正面の本館棟の建て替えが昨年度から行われており、今年の春に完成した。正面入口上部の三角形の立派なペディメントを備え、ギリシャ風の4本の柱の手前には張り出しのバルコニーが出る立派な外観だ。…

空き家の管理・活用について考える。

先日、都市住宅学会東海支部の公共住宅部会で空き家問題について議論が盛り上がった。空き家対策と言えば除却と活用が二本柱として掲げられる。先日施行された空き家特措法では老朽化した特定空き家への対策が主に強化されたが、一方で活用の促進も重要と言…

孤立死対策は回覧板が一番! そして、民間型シルバーハウジングについて考えた。

先日友人と話していたら、彼の町内で孤立死があったという話になった。ちょうど彼の家が町内会の役員(班長)に当たっていて、回覧板を回したが、いつまで経っても帰ってこない。数軒先の方に聞くと「うちにはまだ回っていないよ」という返事。どうやら一人…

井上章一 現代の建築家

タイトルを見て、伊東豊雄や手塚貴晴などの現代建築家を語る本かと思っていた。予約して手に取って思わずびっくり。長野宇平治から始まって、伊東忠太、吉田鉄郎、渡辺仁、松室重光、妻木頼黄。ついでなので全員の名前を書いておく。武田五一、堀口捨巳、前…

愛知県農業大学校 追進館

愛知県岡崎市の東部、美合町に県が運営する農業大学校がある。昭和9年に開校され、この地域で多くの農業の担い手を育成してきた。愛知県は全国有数の農業県・畜産県でもある。現在でも全寮制の農学科では1学年100名弱の学生が2年間に渡り、農業・畜産に関す…

【完】ドイツ流街づくり読本

5年ほど前に同じ筆者による同タイトルの本「ドイツ流街づくり読本」を読んだ。その後、「【続】ドイツ流街づくり読本」があって、今回の「【完】ドイツ流街づくり読本」が完結編。続編は読んでいないが、最初の「ドイツ流街づくり読本」はドイツの都市計画…

住宅リフォームにあたり耐震化を目指さない世帯が増えている?

名城大学の高井先生を中心に住宅リフォーム産業の動向などを研究する会のメンバーに加えてもらっている。先日は愛知ゆとりある住まい推進協議会が実施している「わが家のリフォームコンクール」の応募作品を対象に住宅リフォームの傾向について分析した結果…

人口減少期は持ち家の時代?

先日テレビを見ていたら、芸人の「小島よしお」が幼稚園児などに大人気で子供向けのイベントで引っ張りだこだと紹介していた。主な営業先の一覧が提示され、その中に名古屋近郊の住宅展示場があってびっくりした。最近、ハウスメーカーの方と話す機会があり…

反骨の市町村

筆者の相川俊英氏はダイヤモンド・オンラインで「相川俊英の地方自治”腰砕け”通信記」を連載している。そこからの記事に加筆修正して発行された本ということで、元のウェブサイトを見に行ったら、3月31日を最後に連載が終了していた。私はこれまでこの連載を…

私的空間と公共性

和歌山大の山田先生には2009年に名古屋で開催された都市住宅学会全国大会でのワークショップでお会いしたことがある。その際、先生は「土地・住宅の公共性と公的管理」というタイトルで報告をされたが、リーマンショック後の不況がまだ続いている中で、住宅…

金沢市の歴史的建物を活かしたまちづくり

都市住宅学会中部支部恒例の総会・講演会に参加した。今年の講師は金沢大名誉教授の川上光彦氏。先生は金沢市出身で、京大で学んだ後、郷里の金沢大に赴任し退官したという金沢一筋の方だ。達磨さんのような茫洋とした風貌はさすが加賀百万石の風情を感じさ…

縮小都市の挑戦

空き家の増加が問題となっている。しかし序章「縮小都市の時代」では、縮小を新たな都市発展の方向として見直す見方を提起する。都市に散在する「空き」を「持続可能な縮小都市」を実現するための「資源」として活用できないかと考える。そうした視点でデト…

日本木造遺産

建築史家の藤森照信と写真家の藤塚光政が日本を代表する木造建築23作品を訪ね歩く。どうやら二人は必ずしも一緒に現地に訪れたのではなく、それぞれが都合のよい日に別々に訪問しているらしい。特に写真家の藤塚光政は被写体の撮影条件のよい日を選んで現地…

復興<災害>

塩崎賢明氏は阪神・淡路大震災の直後から、住宅や暮らしの復興を一貫して主張されており、東日本大震災後も同様の姿勢から多くの著書を著すとともに、兵庫県震災復興研究センターや阪神・淡路まちづくり支援機構の代表を務められるなど、復興支援に先頭に立…

日本の都市から学ぶこと

著者のバリー・シェルトンはオーストラリア在住の都市計画家である。日本人の妻を持ち、長崎(と東京?)と名古屋で生活をした経験を持って、日本の都市の構造を読み解く。 最終の第7章に、 ●大半のサインを読むことなく都市を歩き回ったのだが、建物の基本…

白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか

日本の都市計画界の重鎮・蓑原敬氏に饗庭伸を始めとする若い7名の都市計画の研究者や建築家が講義を聴き、対談をする。1部「講義編」では、2011年3月から13年2月にかけて蓑原氏の講義を中心に開催された研究会での討議を紹介し、2部「演習編」では若手7人か…

空き家対策と活用促進

少し前に一般社団法人地域問題研究所開催の「空き家問題の見通しと対策~空き家の有効活用策」というセミナーに参加した。忘れる前にメモを起こしておこう。 講師は3名。まず、富士通総研の米山秀隆氏。空き家問題についての著書もあるこの分野の第一人者だ…

旧商家「駒屋」の復元工事

豊橋市の東部、静岡県との県境に近い位置に、旧「二川宿」の町並みが残っている。10年ほど前に、二川・大岩地区の防災とバリアフリーのまちづくりに関する地域会議があり、東海道沿いのまちなみを歩いた。その時の様子は、「豊橋市 二川・大岩まちづくり」で…

サービス付き高齢者向け住宅は「住宅」なのか、「施設」なのか

先日、サービス付き高齢者向け住宅を調査した名古屋大学のM生、Hさんの発表を聞く機会があった。昨年5月時点で登録されていた愛知県内のサービス付き高齢者向け住宅174件5994戸を対象に、立地や家賃・サービス料、住宅の形態(専用設備の状況)などを変数に…

豊橋・水上ビルを読む

JIA東海支部の機関誌「ARCHITECT」に昨年12月号から豊橋市の建築家・黒野有一郎氏による連載「建築家は、リージョンをもつ。」が始まっている。初回は「『豊橋』と『水上ビル』」というタイトルで、豊橋市の概況と水上ビルの概要について書かれている。そし…