団地へのまなざし

埼玉県草加市の松原団地をフィールドにして、団地のローカル・ネットワークを中心に調査・研究した論文である。筆者は松原団地に隣接する獨協大学に勤務する社会学者で、中でも社会情報学を専攻している。本書はいくつかの研究論文を再構成したものだが、第1…

日本列島回復論☆

非常に興味深く、実現性のある提案だと感じた。「日本列島回復論」というタイトルは、田中角栄の「日本列島改造論」を念頭につけられたものだ。 田中角栄内閣以降に形づくられていった土建国家モデルは、地方への雇用機会の提供と都市部の中間所得層に対する…

菱野団地の連棟式住宅、ナニコレ珍百景に登録!

昨年11月に「黒川紀章が設計したニュータウン・菱野団地」で報告したように、菱野団地を見学した。この時に、原山台の連棟式住宅が左右で全く違った外観に増改築されている状況があまりにすごかったので、「『ナニコレ珍百景』に投稿したいほどの景観」と書…

近代建築そもそも講義☆

久しぶりに藤森照信の本を読んだ。週刊新潮での連載から抜粋して本にしたもの。全編、藤森照信が書いていると思われるが、なぜ大和ハウス工業総合施術研究所との共著になっているのかわからない。また、文中、かなり詳細に建築物の意匠を説明する部分がある…

土地はだれのものか☆

人口減少や都市の縮退が喫緊の課題となってきた昨今、土地問題に係る現状と課題を指摘し、対策を提言する書籍が数多く出版されている。しかしその多くは都市計画や不動産業界などの専門家によるもので、法学の立場から書かれた本は少ない。本書は「土地はだ…

あけましておめでとうございます

今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

今年読んだ都市・建築関係の本は19冊。今年から読んだ後に「いい」と思った本は☆を付けるようにしたが、付けられた本は8冊。そこからさらに5冊に絞るのは大変だった。今年もまた、人口減少や高齢化に伴う都市や地方の衰退・老朽化等に関する本が多い。ベスト…

NPO法人「つるおかランド・バンク」の取組

一般社団法人 地域問題研究所の主催で「既成市街地再生研究会 つるおかランド・バンクの取組に学ぶ」と題するセミナーが開催された。NPO法人「つるおかランド・バンク」の廣瀬理事長が講演されるというので、興味を持って参加した。「つるおかランド・バンク…

生きのびるマンション☆

筆者の山岡淳一郎氏はノンフィクション作家だが、マンション関係の著作も多い。本書も、建物自体の高齢化、そして入居者の高齢化というに直面する区分所有マンションの実態と問題について赤裸々に指摘するとともに、それを乗り越えようとしている管理組合な…

黒川紀章が設計したニュータウン・菱野団地

やきもののまち・瀬戸市。名古屋市の東部にあるこの街に、黒川紀章が設計したニュータウンがある。晩年は東京都知事選に出馬するなどしたが、黒川紀章は名古屋の生まれで、若い頃、近郊のニュータウンの計画に携わっていたとしても不思議ではない。1966年か…

南海トラフ巨大地震の高い発生確率が住宅の耐震化を阻害する?

10月下旬から中日新聞で驚きの連載が始まっている。「ニュースを問う」というコーナーの「南海トラフ80%の内幕」。既に先週の日曜日で6回目が掲載された。まだ続くのだろうか。内容は「地震調査委員会が公表する南海トラフ地震の30年以内の発生確率70~80%…

マイパブリックとグランドレベル

裏トビラに印刷された著者の顔写真がモデルのようにきれいなのに驚いた。ネットで検索して見る画像も、スタイルがよく自信にあふれている。人に見られることに慣れており、また人からカッコよく見られたいと欲しているタイプの女性なのかな。だから、趣味の…

コミュニティと都市の未来

タイトルを見て衝動買いしてしまったけど、吉原直樹って誰だっけ? 少しイヤな予感もしつつ、「いつか見たことがある」と思って調べてみると、「コミュニティを再考する」の筆者の一人だった。この本を読んだ時に、吉原氏の書いた章はかなり難解で、どこまで…

ニュータウン人・縁卓会議2019 in 港北ニュータウン

2019年9月22日(日)に、港北ニュータウン内の東京都市大学横浜キャンパスで「ニュータウン人・縁卓会議」が開催された。会議の冒頭で、東京都市大学の室田教授から、ニュータウン人・縁卓会議のこれまでの歴史などが説明された。2006年10月に多摩ニュータウン…

港北ニュータウンと「中川地区」まち歩き

港北ニュータウンで「ニュータウン人・縁卓会議」が開催された。私は高蔵寺ニュータウンの現状を報告するために参加したが、会議前の午前中、港北ニュータウンのまち歩きツアーがあったので、まずはそれに参加した。 横浜市営地下鉄「センター北」駅の直上に…

夢みる名古屋☆

ふわふわとしたタイトルで、流行のナゴヤ本かと思ってしまう。だが内容は強烈な都市開発批判だ。過激な超左翼と言ってもいいかもしれない。だが、読み進めると、名古屋・愛知県の戦前から戦後にかけての、今はほとんど語られることのない歴史が明らかにされ…

アナザーユートピア☆

「Another Utopia」と題する新建築に掲載された槙文彦の論文に呼応し、様々な分野の専門家が論文を寄せた。槙が提起したのは、「オープンスペース」にはもっと多くの可能性があるのではないか、専門領域を超えたディスカッションの対象とすべきではないかと…

地域をまわって考えたこと

小熊英二と言えば、自分の父親の半生を客観的に取材した「生きて帰って来た男」は面白く読んだ。歴史社会学者という肩書になっているが、現代社会に対してもそれなりの意見を述べる論客というイメージでいた。本書はそんな小熊氏が移住希望者向けの雑誌「TUR…

空き家対策の決め手は壊すことという真っ当な意見

先月末、都市住宅学会中部支部の空き家セミナーを聴講した。講師は(株)住宅相談センターの吉田貴彦氏。大学で法学部を卒業後、不動産会社、ハウスメーカーを経て、2004年に独立。当初はホーム・インスペクションが中心だったようだが、最近は国交省の「地域…

空き家を活かす

昨年の秋に発行され、購入して以来、長く書棚の上に積まれたままになっていた。松村秀一が「空き家を活かす」と書けば、内容は全国のリノベーション事例になるに決まっている。実際、本書では、和歌山市のリノベーションスクールに始まり、全部で8つの事例が…

ブランドとしてのDIYカリスマ

DIYクリエイターのChikoさんとは、2017年に高蔵寺ニュータウン住宅流通促進協議会が開催したDIYワークショップ(「高蔵寺ニュータウンについて(その2)」)で知り合い、その後、Facebookでのお付き合いが続いている。一方、DIYワークショップの成果を引き継…

(住宅)事業評価に係る研究者の目線・事業者の目線

大学研究者や行政担当者等が集まった学会組織で、地域でこれまで行われてきた様々な住宅事業について評価・分析するような冊子を作ろうということになった。基本的には学生の研究活動の一環として、卒論・修論のテーマとして取り上げることで、効率的に評価…

萩城城下町を歩く

津和野と言えば萩。山陰旅行の最後は、萩の城下町を歩いてきた。 中央公園駐車場にクルマを停めて、まず向かったのは「青木周弼旧宅」。ちなみに旧城下町一帯が国指定史跡「萩城城下町」に指定されているが、青木家旧宅が単独で指定されているわけではない。…

津和野は重伝建にして日本遺産の街

津和野と言えば、「アンノン族」や「るるぶ」の時代に萩と並んで大ブームとなった。私も学生時代に一度訪ねた記憶がある。それから40数年。今、津和野はどうなっているのか。GWに山陰を旅行した際に、津和野の町も歩いてきた。ちなみに旧津和野町は2005年に…

熱海の奇跡☆

4月に筆者・市来広一郎氏の講演会「熱海のリノベーションまちづくり」に参加した。非常に啓発される講演会だった。次は本書を読もうと思っていたが、ようやく読み終えることができた。時間が空いたが、それもまたよかったのではないかと思っている。講演会だ…

団地と移民

安田浩一と言えば、「ネットと愛国」で有名になり、その後も右翼やヘイトスピーチなどを取り上げたルポルタージュが多いライターだ。本書では団地に住む移民を中心に、差別やヘイトの問題を取り上げているのかと思って読み始めたが、思った以上にまともに現…

石見銀山・大森の町並み

山陰旅行で訪れた古い町並み歩き。倉吉の報告をしてからだいぶ時間が過ぎてしまった。公私にゴタゴタが続いているが、気分転換のためにも次の石見銀山・大森の町並みを報告しておこう。 石見銀山へは4月29日の午後に到着した。前日、倉吉から境港へ行って新…

家の文化学

「家」という言葉から当然のように家屋としての「家」だと思って読み始めたが、そればかりではなくて「イエ」制度のことでもある。本書に寄稿している執筆者は、アメリカ文学、日本古典文学、古筆学、古典芸能、日本近世文学、民俗学、女性論、社会学、そし…

ひとり空間の都市論

「都市」を「ひとり空間」という視点から見る・考察する、というのは面白い視点だ。筆者は都市・建築論を専門とする社会学者。建築職の立場からすると、都市にしろ、住宅や商業施設などの建物にしろ、既に「ひとり空間」という視点からの様々な取組や考察が…

倉吉の町並みを歩く

GW中、山陰を旅行した。家族旅行なので鳥取砂丘や秋吉台など、いわゆる観光地にも行ったが、古い町並みもいくつか訪れた。その中からまずは倉吉から報告をしたい。倉吉へは28日の午後に到着した。まず市役所にクルマを止める。本庁舎は1956年丹下健三の作品…