2018-01-01から1年間の記事一覧

今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

今年は都市・建築関係の本を18冊読んだ。例年よりは多め。その中からベスト5を選定してみた。都市の縮退や空き地・空き家等に係る本が多いのが今年の特徴。一般のメディアなどで取り上げられることも多くなってきた。 【第1位】都市をたたむ(饗庭伸 花伝社)…

第三セクターとエリア・マネジメントについて

地元県市と公益企業等が出資をして設立されたいわゆる第三セクターで、主には商業施設の管理運営を行っている会社がある。近頃、地元市が主導して、その商業施設を含む地域のエリア・マネジメントを行うために、まちづくり会社を設立した。地元商工会議所等…

人口減少社会の中で都市撤退の作法はあるか

上記タイトルのシンポジウムに参加した。12月8日に開催された都市住宅学会大会(名古屋)のメインシンポジウムだ。パネラーは次の5人。海道清信氏(名城大学教授)、唐渡広志氏(富山大学経済学部教授)、吉岡初浩氏(愛知県高浜市長)、市原正人氏((株)ナ…

世界の空き家対策

このところ、米山秀隆氏の空き家対策に関する本を続けて読んできた。日本の空き家問題とその対策を考える一方で、海外ではどうなっているのか、という疑問を持っていたが、さすが米山氏、しっかりと海外事例についても調査し、まとめられている。本書では米…

捨てられる土地と家☆

先に「縮小まちづくり」を読んだが、ほぼ同じ内容を、空き家・空き地の増加という観点から書いたのが本書。第1章「空き家・所有者不明土地の実態」から始まって、第2章「現状の対策」、第3章と第4章で「より根本的な対策①・②」、そして第5章はまとめとしての…

幸せな名建築たち☆

(一社)日本建築学会が編著となっている。会報「建築雑誌」に連載されていた41の住宅・建築物に「聴竹居」を加え、42の住宅・建築物の居住者・所有者・管理者に対するインタビューをまとめたもの。会誌編集委員会の下に、『幸せな名建築たち』小委員会が設置…

「住宅団地再生」連絡会議in高蔵寺

今年は高蔵寺ニュータウン入居開始50周年ということで、様々な催しが開かれている。6月には、ニュータウンで最初に入居が始まった藤山台地区の住民有志による「藤山台50周年記念式典が高蔵寺まなびと交流センター「グルッポふじとう」体育館で開催された。 …

ル・コルビュジエがめざしたもの

ル・コルビュジエ論かと思って読み始めたら間違う。あとがきで書いているとおり、モダニズム建築に関連して書かれた多くの論考などを集めたものである。本書に続いて、ポストモダン以降の建築を論じた現代編もすぐに刊行される予定という。いや、もう発行さ…

「(遊)OZAKI組 Homepage」の閉鎖について

「Yahoo!ジオシティーズ」から2019年3月末でホームページを終了する旨の連絡が届きました。この「(遊)OZAKI組」blogの過去ログは、右サイドの「リンク」にあるホームページ「(遊)OZAKI組 Homepage」に掲載していますが、「Yahoo!ジオシティーズ」ホームペー…

ほっとかない郊外

泉北ニュータウンで興味深い活動が行われているという話はこれまで何度も聞いてきた。この4月には都市住宅学会中部支部により、NPO法人すまいるセンターの西上代表理事による講演会が開催されたが、都合により出席できなかった。本書は昨年10月に発行された…

日本の醜さについて

井上章一を私は建築史家と思っている。「京都ぎらい」でブレイクして以降、本人は自分のことをどう考えているのだろう。本書は「小説幻冬」という文藝詩で連載した「結局、日本人とは何なのか?」を改題し加筆修正したものと書かれている。「あとがき」では…

藤森照信の建築探偵放浪記☆

○50年近く建築探偵業を続けていると、自分の関心の傾向が分かってくる。まず、その建築が作られた社会的、文化的、宗教的、歴史的背景への強い関心がある。作った人への興味も深い。/一方、そこに使われている素材、例えば泥とか石とかコンクリートとか、そ…

高蔵寺ニュータウンについて(その3)

「高蔵寺ニュータウンについて(その2)」から続く。 サンマルシェ内に設置された市民団体拠点施設「東部ほっとステーション」には現在、10団体が登録し活動を行っている。その中の一つ、NPO法人「高蔵寺ニュータウン再生市民会議」は、ニュータウンの計画立…

高蔵寺ニュータウンについて(その2)

「高蔵寺ニュータウンについて(その1)」から続く。 2016年3月に「高蔵寺リ・ニュータウン計画」が策定・公表された。計画期間は2025年までの10年間。「ほっとできるふるさとでありながら、新たな価値を提供し続ける“まち”であり続けること」(リ・ニュータ…

高蔵寺ニュータウンについて(その1)

都市住宅学会の機関紙「都市住宅学」第102号に、依頼を受けて、高蔵寺ニュータウンの最近の動向等に関する文章を書いた。著作権の問題もあるが、せっかくまとめたことでもあり、適当に改変しつつ、ここに掲載したい。 高蔵寺ニュータウンは、1968年に最初の…

多摩ニュータウンを歩いてきました。(その2)

「多摩ニュータウンを歩いてきました。(その1)」から続く。 エステート永山はURが分譲した中層マンションだが、エステート鶴牧にも似た感じで、緑が多く清楚な佇まい。その手前には高層の民間分譲マンションが並んでいる。そして歩道の南側、旧西永山中学…

多摩ニュータウンを歩いてきました。(その1)

先月の猛暑の最中、いやそれでも曇りがちで、名古屋に比べればまだしのぎやすい天気だった。上京する機会があり、ついでに多摩ニュータウンを歩いてきた。午前中に練馬区で用事があったため、その後、光が丘団地を見学。中心の商業施設IMAで食事をした後、少…

「都市の正義」が地方を壊す☆

○日本社会の人口減少は、地方のみならず首都圏を含めた国民全体の課題である。そして東京一極集中はこの国の構造そのものだから、首都・東京こそがこの問題の中心的な当事者であるはずだ。/にもかかわらず、国民の多くがこの地方創生をまるで対岸の火事のよ…

縮小まちづくり

米山秀隆と言えば、空き家問題の専門家というイメージがあるが、本書では空き家問題の前提となる都市の縮小・地域の縮小をテーマに、第1章・第2章ではエリアマネジメントやコンパクトシティ政策でいかに都市を縮小していくかを考え、第3章・第4章では縮小す…

地元経済を創りなおす

知人から勧められて読了。地域のお金は地域で回すようにしましょう、というのは、藻谷浩介が「里山資本主義」で述べていたことと同じ。これに、「漏れバケツ理論」や市町村単位の産業連関表、地域経済分析システム、地域内乗数効果とLM3などの理論やツールを…

近居とは ― 不十分な社会支援と不安定な家族支援の狭間

先日、「郊外住宅団地における多世代居住の可能性と近居実態」と題する講演会に行ってきた。旧日本住宅公団が昭和43年から横浜市で開発をした左近山団地における近居実態の調査結果を報告したもので、団地入居者の近居率や外出頻度などを調査した上で、近居…

西洋都市社会史

「西洋都市社会史」という堅いタイトルだが、内容はヨーロッパ、特に北ドイツを中心とした各都市の訪問記である。筆者は中世ハンザ都市の都市史を研究する経済学者。筆者が勤務する中央大学の雑誌「中央評論」に掲載してきたエッセイを中心に、全20章にまと…

次の震災について本当のことを話してみよう

福和先生とは地元で昔から何かとお付き合いがある。講演会でいじられることもあれば、飲み会で同席したこともあった。本書には日頃から色々な機会に聞いてきた話がほとんど網羅的に書かれている。その点では内容的に特に驚くこともない。 第2章の冒頭で、阪…

港北ニュータウンへ行ってきました。

港北ニュータウンと言えば、今や人口20万人を超える大ニュータウンで、今さら私が紹介するまでもないとは思うが、たまたま先日、港北ニュータウンを歩く機会があったので、報告をしておきたい。首都圏にお住まいの方には田舎者の見学記としてご笑覧いただき…

知られざる地下街

(P019)に「こんなに距離が短い地下街があった」として、「蒲郡北駅前地下街」が紹介されている。(P025)に「全国地下街一覧」が掲載されているが、80ヶ所の地下街のうち、人口10万人以下の市にある地下街はこの「蒲郡北駅前地下街」だけだ。生まれ育った町な…

岐阜市の歴史的町並み

岐阜市の川原町辺りを歩いたのはもう14年も前のことだ。先月、日本建築学会東海支部都市計画委員会の主催で、岐阜市歴史まちづくり課の方から「歴まち計画」について聞き、現地を案内していただく見学会が開かれた。久しぶりに岐阜市の町並みが見たくて参加…

人口減少時代の都市

「人口減少時代の都市」の後ろには「経営戦略」と補えばいいのだろうか。経済学者から見た成熟型の都市政策の提言。だが、書かれていることにそれほどの意外性はない。むしろこれまで都市計画の研究者が言ってきたことを経済学者の観点から言い直したような…

グルッポふじとう(高蔵寺まなびと交流センター)、オープン

新年度を迎えた先週日曜日の4月1日、高蔵寺ニュータウン内に新たな市民交流拠点「グルッポふじとう」がオープンした。「まなび」「交流」「居場所」をコンセプトにした多世代交流拠点施設というのが、春日井市が紹介する施設のコンセプトで、図書館、児童館…

「ゆいま~る大曽根」を見学

昨年8月に紹介した「ゆいま~る大曾根」は9月に入居が始まっている。その後、追加分30戸も公社からの賃貸が決まり、現在、第2期分の工事と募集が行われている。また、1階の大型店舗だった部分も、地域コミュニティ拠点としてNPO法人「わっぱの会」が借り受け…

ニュータウンの社会史☆

○ニュータウンのなかに入り込んでたくさんの経験を積んでいくなかで、「オールドタウン」だとか、高齢化で限界集落間近だとか、犯罪の巣窟だとかいって、一方的に切って捨てる、その視線のありように激しく反発を覚えるようになった。人の生活や営みを、その…