2008-01-01から1年間の記事一覧

自然な建築

「自然な建築とは、場所と幸福な関係を結んだ建築のことである」。こう主張する著者が、最近、設計・建築された8つの作品を紹介しつつ、自然と建築の関係について論じていく。8つの作品のテーマと名称は、以下のとおりである。 ・ 水:タウトの日向邸に隣…

住宅200811

(社)日本住宅協会が発行する「住宅」という機関誌がある。この11月号は、「特集/まちなか居住」として、弘前大学の北原教授の「まちなか居住の課題と展望」と題する論文を筆頭に、国土交通省市街地建築課による「街なか居住施策の概要」や国土交通政策研究…

デンマークの公営住宅制度

愛知教育大学の小川正光先生からデンマークの公営住宅制度について話を伺った。先生は数年前にデンマークへ留学し、今年も調査訪問をされているが、今回はデンマークの公営住宅法の話が中心である。その前段で、デンマークの自治制度や住宅事情について伺う…

建築雑誌 200812

今月の建築学会誌「建築雑誌」で、「環境共生を巡る7つの論点」と題する特集をしている。「解題1:事実はまま常識に背馳する」というタイトルが付けられたリードから情動的な地球温暖化対策に対する疑念を掲げているが、続く各パートでも、最近の環境対策…

「200年住宅」法に対する危惧

「長期優良住宅の普及の促進に関する法律」いわゆる「200年住宅」法が成立した。2月に閣議決定したものの、今春の波乱国会の中で継続審議となり、ようやく11月28日の今国会で成立した。さすがに法文には「200年住宅」ではなく「長期優良住宅」としているが、…

韓国における集合住宅供給とリモデリング

都市住宅学会中部支部の講演会で、椙山女学園大学客員研究員にして、韓国で大韓住宅公社住宅都市研究員研究委員や韓国建設交通省中央建設技術審議委員などの要職を務めてきた趙美蘭(Jo Miran)氏から、韓国の集合住宅供給のこれまでの経緯と、氏が提唱し韓…

可児市桜ヶ丘ハイツの住民主導のまちづくり

「各務原の景観まちづくり」を見学した後、続いて可児市桜ヶ丘ハイツに向かった。ここは、住民主導で地区計画の策定や様々なまちづくり活動が展開されており、今期の都市住宅学会で学会賞を受賞することとなった地区である。推薦をされた名城大学の海道先生…

若者が希望を持てる社会づくり

「少子社会日本」や「希望格差社会」などを著し、報道ステーションなどのTVでも活躍する社会学者の山田昌弘氏の講演を聴いてきた。「若者が希望を持てる社会づくり」というタイトル。 「希望」とは精神的なものであり、お金の多寡に左右されるものではない。…

各務原の景観まちづくり

都市住宅学会中部支部の見学会で、岐阜県各務原市と可児市を見学した。秋の午後からの見学会で、明るい時間が短く、駆け足で巡ったものの可児市に着く頃はもう夕闇が迫り、あわただしい半日となった。まずは各務原の景観まちづくりから。 まず最初に、「学び…

オーストラリアの公共住宅施策

今年度、都市住宅学会中部支部の中に公共住宅部会が設置され、公営住宅を始めとする公共住宅制度の抱える課題や将来的なあり方等について検討を始めている。先週はオーストラリアのニューサウスウェールズ州における公営住宅施策について、話を伺った。報告…

フランスの景観を読む

フランスの景観・都市計画制度を、全体的な思想から制度の詳細に至るまで、丁寧に説明し、非常にわかりやすい本である。景観・保存・規制という言葉がタイトルに並ぶが、フランスの都市計画制度全体がそれらの言葉で説明されうる体系となっている。それは建…

建築半丈記

著者の永井規男氏は、関西大学の名誉教授にしてNPO法人古材文化の会(旧・古材バンクの会)理事長でもある建築史の先生である。本書も、先に読んだ吉田桂二氏の「家づくりの知恵」と同様、建築の先達によるお気楽なエッセイ集である。 建築史の学者らしく民…

家づくりの知恵

吉田桂二(正確には「吉」は下の棒が長い)と言えば民家建築や民家再生の第一人者。その先達が語る家づくりに関するエッセイ。特に現代的課題である「環境」をテーマに、造り方だけでなく住み方、暮らし方、生き方までを縦横無尽に書き連ねる。エッセイと言…

建築家は住宅で何を考えているのか

塔の家や住吉の長屋、ニラハウスなど現代に至る住宅の名作41点を、01家族像とプランニング、02ライフスタイル、03集住/かたち、04街/風景、05工業化と商品化、06リノベーションの可能性、07エコロジカルな住宅、08素材/構法、09ちいさな家、10住みつづけ…

不正と裏金

愛知県、岩手県を始め、多くの都道府県で、不正経理と裏金作りが行われていた、という報道には正直びっくりした。しかし、よくよく報道を読み聞きしてみると、国庫補助金についての会計検査で、補助の本体事業に伴い支給される事務費において、本体事業と直…

公営住宅と貧困系ニート

先日、子供の権利条約等の活動をしているNPOの方から、公営住宅における子供の実態について話を聞く機会があった。非常に衝撃的な話で、公営住宅のあり方を考えるにあたり、無視できない内容だったので、ここに概要を紹介しようと思う。 まず驚いたのは子…

「51C」家族を容れるハコの戦後と現在

「おひとりさまの老後」がベストセラーとなった上野千鶴子氏は有名なフェミニストにして社会学者だが、彼女を初めて目にしたのは、2001年に開催された建築学会主催のシンポジウム「公共住宅の行方を探る:岐阜北方集合住宅の試み」でのことだった。その時の…

建築史的モンダイ

PR誌「たいせい」やWEBちくまに連載された建築的エッセイ26編を加筆収録し、書き下ろし2編を加えたもの。相変わらず軽妙な藤森節が炸裂。面白いことこの上ない。加えて、素人向けに、建築的見地からさまざまなことをわかりやすく説明しており、私の知ら…

地震と防災

地震発生のメカニズムや地震の特性、震度観測の変遷と現状から、地震災害の歴史、地震研究の歴史や内容と最新の知見、耐震設計や地震動予測、さらには地震教育に至るまで、地震と防災に係るあらゆる最新の知識が非常にわかりやすくかつバランスよく整理され…

市全域 避難勧告

昨日の豪雨はすごかった。わが家は先週の落雷でドアホンに外灯、湯沸し器と一部のパソコンがいかれてしまい(Homepageが更新休止中なのはそのせいです)、未だにテンヤワンヤしていることもあり、落雷のすごさに恐れをなしていたが、一夜明けてみれば、岡崎…

空間<機能から様相へ>

ヤマトインターナショナル東京本社で鮮烈なデビューを遂げ、梅田スカイビルで驚愕を集め、JR京都駅のコンペで社会的な批評の嵐を巻き起こした建築家・原広司の建築評論集。それらの建築作品の前には、「集落の教え100」などの世界の集落調査からの建築評論が…

松本市中町・蔵造り通

このところ恒例となった車山高原避暑旅行は、少し趣向を変えて、中央道・諏訪ICを通り過ぎ、長坂ICから国道141号を北上。泉郷や清里、野辺山を通って松原湖から八ヶ岳に向かい、稲子湯からスタート。秘湯の一つに挙げられる温泉は、小さな内湯に石を積み上げ…

福祉国家デンマークのまちづくり

デンマークのまちづくりや社会制度が最近注目されだしたように思う。スウェーデンなどの北欧圏の中でも、さらに特徴的な社会体制が整備され、共同参加による民主主義により国民の幸福度の高い国家が実現しているという。昨年、デンマークへ留学した某先生の…

ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか

筆者は、イタリア・パリで長く生活し、現在は大阪芸術大学の教授を務める「環境・建築芸術学」の先生である。「ヨーロッパの都市はなぜ美しいのか」の答えは、あとがきであっさりと書いている。「それは市民の美的なものへの関心が高いからである(P296)」。…

ゆく都市 くる都市

今、都市・建築に関するエッセイを書かせたら、誰が一番うまいだろうか。それほど多くの本を読んでいるわけではないが、橋爪紳也は関西の雄の一人と言えるだろう。この「ゆく都市 くる都市」は2006年度の1年間、毎日新聞に週に一度連載してきた文章をまとめ…

城下町・犬山・まち歩き

国宝・犬山城のお膝元の城下町に高層のビジネスホテル建設騒動が持ち上がり、犬山市に景観条例ができたのが平成5年。平成6年からの2年間、この街の景観まちづくりに多少とも関わったことがあったが(ほとんど何もできなかったが)、地元(市・住民)の努…

集合住宅と日本人

「あとがき」によれば、当初、出版社より「日本人論」というテーマを与えられ、筆者の専門に引き寄せ、集合住宅における「共同性」を主題に書き下ろしたという。それゆえか、司馬遼太郎や山本七平、丸山真男らを引用し、「日本教」に言及する部分や、政治学…

あいちまちづくりシンポジウム「地域が担うまちづくり・まちおこし」

毎年6月のまちづくり月間に合わせて、国交省中部地方整備局と愛知県、名古屋市等が共催してシンポジウムが開催されている。今年(6月10日)は、最近活発に活動している豊川稲荷門前のまちづくりについて聞けるというので、参加した。 基調講演は「地域と…

西村幸夫 風景論ノート

景観法施行の前後に西村先生がさまざまな雑誌等に書き連ねてきた論文等を集めてできた本である。副題の3つの言葉がそのまま全体3部構成の内容となっている。すなわち、景観によるまちづくりをテーマにした「第1部 都市風景の恢復と景観まちづくり」、町並…

集合住宅物語

同潤会青山アパートを筆頭に、全部で39の集合住宅が訪問記録と豊富な写真で紹介されている。上下2段組み348ページの大部だが、半分近くは写真なので、思ったよりは早く読み進めることができる。 それにしても楽しい。冒頭の青山アパートや同じ同潤会の鴬谷ア…