2020-01-01から1年間の記事一覧

「仮住まい」と戦後日本☆

「マイホームの彼方に」は、日本の住宅政策を網羅的に俯瞰し、その結果と現状を分析・提示し、「成長後の社会」における住宅政策の転換の必要性と方向を明確に示した好著だった。それからわずか半年、さらに本書が刊行された。前著は日本の住宅政策を体系的…

サステイナビリティの終焉と建築の役割

最近、テレビでよく放送されることの一つに「SDG’s」がある。「持続可能な開発目標」と訳される。CMでもよく流され、「環境に配慮した企業です」とアピールしている。正直、胡散臭いと思っている。まるで「錦の御旗」のようだ。「SDG’s」と唱えれば、どれだ…

経済学で考える 人口減少時代の住宅土地問題

都市住宅学会は、建築や都市計画だけでなく、法学や経済学、社会学などの異なる専門領域の研究者も参加し、都市・住宅に係る諸課題について学際的・総合的に研究を進める場として設立された。そこで、その機関紙には、建築系以外の専門家の論文もよく掲載さ…

日本住居史☆

来年の春から、某大学でハウジング論の講義をしてほしいと依頼があった。それで少し前からそのための準備をしている。日本の住宅事情や住宅政策についてはそれなりに知識と経験もあるが、住宅史については興味に沿って何冊か本を読んだ位で、体系的な知識を…

縮減時代の新たな地域マネジメント 「直観に従う勇気」を持つこと

内田樹の講演を聞いてきた。神戸女学院大学名誉教授にして思想家。内田氏の本はこれまで、「現代思想のパフォーマンス」や「ためらいの倫理学」などの初期の頃から読んできた。最近は少し食傷気味な感もあるが、やはり来名するからには行かずばなるまい。友…

名古屋栄に「ヒサヤオオドオリパーク」がオープン

しばらく工事が進められてきた名古屋栄地区の久屋大通公園が先月18日、リニューアル・オープンした。たまたま当日、名古屋へ行く機会があったので、ついでに寄ってきた。時間はちょうどお昼時。だが、天候はあいにくの小雨模様。それでも久しぶりにオープン…

伊東豊雄 美しい建築に人は集まる

平凡社「のこす言葉 KOKORO BOOKLET」シリーズの1冊。先に詠んだ「藤森輝信 建築が人にはたらきかけること」に続いて、今度は伊東豊雄が語る。 伊東豊雄は外観的にはすごく若く見えるが、来年には80歳になる。藤森輝信よりも5歳。隈研吾と比べれば、一回り以…

藤森照信 建築が人にはたらきかけること

大きさもB6変型判(17.6cm)。ページ数もわずか128ページ。あっという間に読み終えてしまった。「のこす言葉 KOKORO BOOKLET」シリーズの中の一冊。既刊を見ると、金子兜太、大林信彦、安野光雄、中川李枝子など。建築家は藤森照信だけ(その後、「伊藤豊雄…

マイホームの彼方に☆

「あとがき」でも書かれているが、神戸大名誉教授の早川和男先生が一昨年の7月に亡くなった。平山氏は早川先生直系の後継者として、一貫して住宅問題・住宅政策への研究を進めている。前著「都市の条件」から早や8年。久しぶりの新刊はタイトルこそやや軽い…

不動産で知る日本のこれから

空き家問題やマンション問題など、最近、不動産関係で興味深い本を何冊も執筆している牧野氏だが、そうした活動から様々な媒体で執筆依頼を受けることも増えたのだろう。本書は筆者が「文春オンライン」で連載していたものをまとめたものである。1編5ページ…

希望の名古屋圏は可能か

本書の中の一節を執筆した知人からいただいたものの、大部であることから途中で挫折し、しばらく積読状態にあった。コロナ禍で図書館が休館となり、再度、最初から読み始め、ようやく読み終えた。名古屋市立大学大学院経済学研究科の教員や同窓会有志による…

団地へのまなざし

埼玉県草加市の松原団地をフィールドにして、団地のローカル・ネットワークを中心に調査・研究した論文である。筆者は松原団地に隣接する獨協大学に勤務する社会学者で、中でも社会情報学を専攻している。本書はいくつかの研究論文を再構成したものだが、第1…

日本列島回復論☆

非常に興味深く、実現性のある提案だと感じた。「日本列島回復論」というタイトルは、田中角栄の「日本列島改造論」を念頭につけられたものだ。 田中角栄内閣以降に形づくられていった土建国家モデルは、地方への雇用機会の提供と都市部の中間所得層に対する…

菱野団地の連棟式住宅、ナニコレ珍百景に登録!

昨年11月に「黒川紀章が設計したニュータウン・菱野団地」で報告したように、菱野団地を見学した。この時に、原山台の連棟式住宅が左右で全く違った外観に増改築されている状況があまりにすごかったので、「『ナニコレ珍百景』に投稿したいほどの景観」と書…

近代建築そもそも講義☆

久しぶりに藤森照信の本を読んだ。週刊新潮での連載から抜粋して本にしたもの。全編、藤森照信が書いていると思われるが、なぜ大和ハウス工業総合施術研究所との共著になっているのかわからない。また、文中、かなり詳細に建築物の意匠を説明する部分がある…

土地はだれのものか☆

人口減少や都市の縮退が喫緊の課題となってきた昨今、土地問題に係る現状と課題を指摘し、対策を提言する書籍が数多く出版されている。しかしその多くは都市計画や不動産業界などの専門家によるもので、法学の立場から書かれた本は少ない。本書は「土地はだ…

あけましておめでとうございます