2021-01-01から1年間の記事一覧

今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

今年はとにかく本を読まなかった。わずか10冊。しかも退職した6月以降はわずか4冊。大学講義準備の関係で、過去の本を読み返したりもし、新たな本を読む時間がなかった。それでも今年は「平成都市計画史」を始め、いい本に巡り合えた。読みかけで放棄したり…

見えない震災☆

9月から始まった大学の後期授業では、講義の最初に、講義内容に応じたワードを示し、最後にそのワードの説明をすることにしている。取り上げるワードは本のタイトルのこともあるし、誰かの言葉だったりする。今週の講義は「災害と住まい」をテーマに予定して…

アフターコロナの都市の住まい☆

筆者の米山秀隆は、長く空き家・空き地問題について研究を続けている。2018年に読んだ「捨てられる土地と家」や「縮小まちづくり」は興味深かった。アフターコロナ禍で米山氏がどんな考察をしているか、興味があった。 本書のタイトルと同じ題名がついた序章…

日本近現代建築の歴史☆

筆者の経歴には「建築家」と書かれているが、どんな作品があるのか、私は知らない。主な著書に「白熱講義 これからの日本に都市計画は必要ですか」とあり、こちらは数年前に読んだことがある。正直、日埜直彦という人のことをこれまでほとんど知らなかった。…

未来都市はムラに近似する

北山恒という建築家は、名前は知ってはいたが、どんな作品があるかまでははっきりとは知らなかった。本書は、横浜国立大退任時の最終講義とその後の論考、及び、北山氏が設計した二つの建物内に置いて、教え子である高橋一平、中川エリカの二人の若手建築家…

コロナ禍で、都市の意味と役割を再考する

これも1ヶ月以上前の講演会の記録。コロナ禍における新たな都市の在り方について、名城大学名誉教授の海道先生から話を聞いた。と言っても、海道先生がこの分野で先進的な研究をしているわけではない。というか、そんな研究者はどこにもいない。多くの識者が…

都市計画と‘まち’の行方

先に投稿した「平成都市計画史」で、筆者である「饗庭伸の講演会の様子を報告する」と書いた。しかし、その後も色々と忙しく、なかなか書く時間が取れなかった。でもさすがにもう1ヶ月以上が経過した。忘れないうちに感想などを残しておこう。 講演会のタイ…

平成都市計画史☆

筆者の饗庭伸は、平成元年に大学へ入学したと言う。平成の30年間はまさに筆者自身の都市計画研究とともにあった。そしてバブルの真っ盛りからその崩壊、地方分権と民活・市場化、さらに本格的な人口減少時代の到来。その間には阪神淡路と東日本大震災という…

地域衰退☆

なぜ、地域の衰退は起こるのか。ごく単純に言えば「雇用があれば人は定住」(P151)する。派手な観光開発や話題になりがちな景観保存などは「地域の屋台骨を支えるような雇用を生み出しはしない」(P152)と松山大学の市川虎彦の言葉を引用しているが、「まちづ…

新築がお好きですか?☆

「未来の住まい」を読んだ際に、「最近、住宅問題に注目する社会学者が増えている」と書いた。本書の著者である砂原庸介氏は政治学者である。本書では、日本における様々な法律や規範・慣習などの「制度」が、持家住宅の新築取得を中心とした「持家社会」を…

地域の景観・歴史を活かしたまちづくり

先月23日に、上記タイトルの講演会が開催された。日本建築学会東海支部研究集会シンポジウム。講師は、新潟大の岡崎篤行教授と、三重大の浅野聡教授。岡崎氏からは「新潟県の歴史・景観を活かしたまちづくり」と題して、新潟市を中心とした歴史的景観と活動…

未来の住まい☆

「一般社団法人 住総研」が創立70年を記念して「住宅研究のフロンティアはどこにあるのか」と題して開催したシンポジウムの記録である。第1章から第6章までは当日の発表者の内容を収録、第7章には司会進行をした祐成保志氏の寄稿が掲載されている。シンポジ…

地方の論理☆

筆者は北海道開発庁と国土庁で国の地方開発を担当し、その後、釧路公立大学で退官を迎えた。現在は北海道観光振興機構の会長を務め、道内の多くの審議会委員等も歴任している。略歴に「地域政策プランナー」と書かれているが、もともと法学部卒であり、上か…

内田樹のコレクティブ・ハウス論から考える弱者をベースにしたコモンの構想

内田樹の「コモンの再生」を読んでいる。なぜ今、内田樹がコモンということを言い出したのか、興味があった。これを読みつつ思い出したのが、かつて内田樹が「コレクティブ・ハウスを強く否定していた」ことである。それで内田樹のブログ「内田樹の研究室」…

孤立する都市、つながる街

○都市生活における最も深刻な「孤立」という課題を、社会福祉の専門的な取り組みや行政サービスの拡大だけでなく、個人の価値観の転換を促す対話、小さなコミュニティや場づくりの蓄積、シビックエコノミーの創出の可能性と併せて解いていこうとする、まった…

昨年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

去年は12冊しか読まなかった。妻の病気などもあり、なかなか落ち着いて本を読んでいる心境にならなかった。今年から始める予定の新しい仕事への準備をしていたこともある。それでも平山洋介の本が2冊も発行されたことはよかった。読んだ冊数は少ないが、例年…

新しいフェーズへ