都市を学ぶ人のためのキーワード事典

 饗庭伸の名前があったので思わず借りてしまったが、饗庭氏は「まえがき」と各扉ページの小文を書いているのみで、他は、24のテーマごとに若い研究者等が、そのテーマに関するキーワードを10程度選出し、それぞれ定義や関連事項等を書いている。24のテーマは、「人口減少」「都市再生」「都市のリノベーション」「公共施設再編」「パブリック・ライフ」「マーケット」「アートと都市」「住まい」「超高齢社会」「こどもとともに育つまち」「町並み・景観まちづくり」「ツーリズムと都市」「地方創生」「国土の計画」「グリーンインフラ」「緑地と農」「レジリエンス」「交通まちづくり」「エネルギー」「データとシミュレーション」「ワークショップ」「ガバナンス」「来たるべき都市」。
 「まえがき」で「全てを通して読むことは想定してないので、必要なキーワードを探し、その周辺のキーワードもあわせて読んでみるという形で使っていただきたい」と書かれているが、自分の専門領域のテーマについては物足りないし、あまり詳しくないテーマについては、より詳細なことはその専門書等に当たってみる必要がありそうだ。そこで念のため、全てを通して読んでみたが、それなりに楽しめる。ざっと頭に入れた上で、必要になったら、専門書を読むということになりそうだ。ということで、ざっと全て読んでみてもけっして損はない。
 以下には、私が関心を持った、でも詳しくは知らないキーワードについて引用しておいた。いつか役に立つこともあるだろう。

○DO方式: DO方式とは、公共施設の発注方式の1つで、基本計画・設計・運営を一括発注する方式だ。DesignとOperationの頭文字を取ってOD方式と呼ばれている。/これまでの公共発注は、基本計画・設計・工事・運営を別々に発注する「分離発注」が主流だった。…一括発注の仕組みとしては、工事も併せて発注するPFI方式があるが…参加できる企業が限られる。そこで、立地や事業規模から大手ゼネコンが参加する可能性が薄い場合などには、工事を切り離したDO方式が有効に働く場合がある。(P038)
○包括施設管理業務委託: 行政は、様々な部や課で構成されている。そして行政が所有する多くの公共施設を、それぞれが分担するように所管している。…包括管理では、行政が様々な施設管理業務を1つに束ねて、大手の管理会社や地元企業のコンソーシアムと契約する。この契約一本化による事務負担の低減効果は非常に大きく…また統轄事業者によって…統一的な考え方に基づく保全が適切に提供される…。また…対象となる施設の点検修繕等のデータが一元化される(P051)
再帰的超高齢社会: 高齢者自身が、いま暮らしている地域で、自分の人生とともに培ってきた社会資源・地域資源を活用し、身体的機能や社会的機能が低下しても自分らしく暮らし続けられるように、試行錯誤を通じて自ら環境を創りこんでいくまちづくりが重要である。…高齢者だけが安心できる仕組みをつくっても、ケアワークを担う若い世代が自分らしく質の高い暮らしを送れなければ、医療・介護サービスは供給されない。…再帰的超高齢社会においては、全世代を対象として、人生の不足のリスクに一喜一憂せず、なるべく自律的・快活に自分らしく暮らせるまちづくりが重要となる。(P116)
○時限的市街地: 時限的市街地とは、地域関係者が被災地にとどまって復興まちづくりに取り組むための暫定的な生活を支える場のことである。…東京都都市復興マニュアルでは、仮設市街地と呼ばれている。…被災住民自身が被災地内あるいは近傍に留まりながら、被災地の協働復興を目指していくための手段であり、応急仮設住宅に加えて店舗や作業所、小規模な医療施設、図書館などを建設し、生活再建のための準備拠点として使用させる。(P214)