すまい・まちづくりノート

団地へのまなざし

埼玉県草加市の松原団地をフィールドにして、団地のローカル・ネットワークを中心に調査・研究した論文である。筆者は松原団地に隣接する獨協大学に勤務する社会学者で、中でも社会情報学を専攻している。本書はいくつかの研究論文を再構成したものだが、第1…

日本列島回復論☆

非常に興味深く、実現性のある提案だと感じた。「日本列島回復論」というタイトルは、田中角栄の「日本列島改造論」を念頭につけられたものだ。 田中角栄内閣以降に形づくられていった土建国家モデルは、地方への雇用機会の提供と都市部の中間所得層に対する…

近代建築そもそも講義☆

久しぶりに藤森照信の本を読んだ。週刊新潮での連載から抜粋して本にしたもの。全編、藤森照信が書いていると思われるが、なぜ大和ハウス工業総合施術研究所との共著になっているのかわからない。また、文中、かなり詳細に建築物の意匠を説明する部分がある…

土地はだれのものか☆

人口減少や都市の縮退が喫緊の課題となってきた昨今、土地問題に係る現状と課題を指摘し、対策を提言する書籍が数多く出版されている。しかしその多くは都市計画や不動産業界などの専門家によるもので、法学の立場から書かれた本は少ない。本書は「土地はだ…

今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

今年読んだ都市・建築関係の本は19冊。今年から読んだ後に「いい」と思った本は☆を付けるようにしたが、付けられた本は8冊。そこからさらに5冊に絞るのは大変だった。今年もまた、人口減少や高齢化に伴う都市や地方の衰退・老朽化等に関する本が多い。ベスト…

生きのびるマンション☆

筆者の山岡淳一郎氏はノンフィクション作家だが、マンション関係の著作も多い。本書も、建物自体の高齢化、そして入居者の高齢化というに直面する区分所有マンションの実態と問題について赤裸々に指摘するとともに、それを乗り越えようとしている管理組合な…

マイパブリックとグランドレベル

裏トビラに印刷された著者の顔写真がモデルのようにきれいなのに驚いた。ネットで検索して見る画像も、スタイルがよく自信にあふれている。人に見られることに慣れており、また人からカッコよく見られたいと欲しているタイプの女性なのかな。だから、趣味の…

コミュニティと都市の未来

タイトルを見て衝動買いしてしまったけど、吉原直樹って誰だっけ? 少しイヤな予感もしつつ、「いつか見たことがある」と思って調べてみると、「コミュニティを再考する」の筆者の一人だった。この本を読んだ時に、吉原氏の書いた章はかなり難解で、どこまで…

夢みる名古屋☆

ふわふわとしたタイトルで、流行のナゴヤ本かと思ってしまう。だが内容は強烈な都市開発批判だ。過激な超左翼と言ってもいいかもしれない。だが、読み進めると、名古屋・愛知県の戦前から戦後にかけての、今はほとんど語られることのない歴史が明らかにされ…

アナザーユートピア☆

「Another Utopia」と題する新建築に掲載された槙文彦の論文に呼応し、様々な分野の専門家が論文を寄せた。槙が提起したのは、「オープンスペース」にはもっと多くの可能性があるのではないか、専門領域を超えたディスカッションの対象とすべきではないかと…

地域をまわって考えたこと

小熊英二と言えば、自分の父親の半生を客観的に取材した「生きて帰って来た男」は面白く読んだ。歴史社会学者という肩書になっているが、現代社会に対してもそれなりの意見を述べる論客というイメージでいた。本書はそんな小熊氏が移住希望者向けの雑誌「TUR…

空き家を活かす

昨年の秋に発行され、購入して以来、長く書棚の上に積まれたままになっていた。松村秀一が「空き家を活かす」と書けば、内容は全国のリノベーション事例になるに決まっている。実際、本書では、和歌山市のリノベーションスクールに始まり、全部で8つの事例が…

熱海の奇跡☆

4月に筆者・市来広一郎氏の講演会「熱海のリノベーションまちづくり」に参加した。非常に啓発される講演会だった。次は本書を読もうと思っていたが、ようやく読み終えることができた。時間が空いたが、それもまたよかったのではないかと思っている。講演会だ…

団地と移民

安田浩一と言えば、「ネットと愛国」で有名になり、その後も右翼やヘイトスピーチなどを取り上げたルポルタージュが多いライターだ。本書では団地に住む移民を中心に、差別やヘイトの問題を取り上げているのかと思って読み始めたが、思った以上にまともに現…

家の文化学

「家」という言葉から当然のように家屋としての「家」だと思って読み始めたが、そればかりではなくて「イエ」制度のことでもある。本書に寄稿している執筆者は、アメリカ文学、日本古典文学、古筆学、古典芸能、日本近世文学、民俗学、女性論、社会学、そし…

ひとり空間の都市論

「都市」を「ひとり空間」という視点から見る・考察する、というのは面白い視点だ。筆者は都市・建築論を専門とする社会学者。建築職の立場からすると、都市にしろ、住宅や商業施設などの建物にしろ、既に「ひとり空間」という視点からの様々な取組や考察が…

奇跡の集落☆

新潟県十日町市池谷集落と言えば、地域おこし協力隊の活動の中では最も有名な取組の一つのようだ。6世帯13名という廃村寸前の状態から11世帯23名まで盛り返し、限界集落から脱却していく過程を詳しく紹介している。筆者は、この集落に地域おこし協力隊として…

限界都市 あなたの街が蝕まれる☆

日経新聞で2018年3月から連載されてきた「限界都市」シリーズを加筆修正して発行されたのが本書だ。日経といえば企業寄りのスタンスだと思うが、本書ではそんな企業の利益追求活動による弊害をあからさまに描き出す。それだけ都市における矛盾、問題が深刻に…

西洋の都市と日本の都市 どこが違うのか

昨年、「西洋都市社会史」を読んで、本書を読んでみたくなった。「西洋都市社会史」が、タイトルに似合わず、ヨーロッパ各国都市の訪問記だったのに対して、本書は「比較都市史入門」という副題がついているように、ハンザ都市を中心とする西洋都市史を教科…

地方都市の持続可能性

本書の最終盤、第5章に突然「この先例として学ぶべきは東京の多摩ニュータウンや愛知の高蔵寺ニュータウンなどだろう」(P249)と書かれていてびっくりした。でもその後は多摩ニュータウンの高齢化や施設の老朽化を指摘するのみで、高蔵寺ニュータウンについて…

ベルリン・都市・未来☆

「アーティストやハッカー、DJ、ネオ・ヒッピーたちは、いかにベルリンの再生とソーシャル・イノベーションを引き起こしたのか? 近年、スタートアップ都市として注目を集めるベルリンを、「創発」という観点から描く。」 図書館の内容説明に、上記のように…

老いた家 衰えぬ街☆

前著「老いる家、崩れる街」は、既に進行しつつある空き家・空き地の大量発生に対して、都市計画的見地から問題点を指摘し、方策を提案したものだった。本書では、大量の「空き家予備軍」に焦点を当て、「問題先送り空き家」の実態と問題点を指摘する。特に…

つくられた桂離宮神話

「京都ぎらい」以降、井上章一はすっかり有名になった。TVの歴史番組でもちょくちょく見かける。自らの著作に加え、歴史学者である本郷和人との対談本「日本史のミカタ」も出版している。先日、友人から「外国人が見た日本」(中公新書)に「桂離宮とタウト…

モダニズム崩壊後の建築

先に読んだ「ル・コルビュジエがめざしたもの」の続編。本書では副題「1968年以降の転回と思想」にもあるとおり、1968年以降の現代建築に対する批評などを収録している。本文中にもあるが、現代建築と近代建築の境はどこになるのか。筆者は前書で近代建築、…

今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

今年は都市・建築関係の本を18冊読んだ。例年よりは多め。その中からベスト5を選定してみた。都市の縮退や空き地・空き家等に係る本が多いのが今年の特徴。一般のメディアなどで取り上げられることも多くなってきた。 【第1位】都市をたたむ(饗庭伸 花伝社)…

世界の空き家対策

このところ、米山秀隆氏の空き家対策に関する本を続けて読んできた。日本の空き家問題とその対策を考える一方で、海外ではどうなっているのか、という疑問を持っていたが、さすが米山氏、しっかりと海外事例についても調査し、まとめられている。本書では米…

捨てられる土地と家☆

先に「縮小まちづくり」を読んだが、ほぼ同じ内容を、空き家・空き地の増加という観点から書いたのが本書。第1章「空き家・所有者不明土地の実態」から始まって、第2章「現状の対策」、第3章と第4章で「より根本的な対策①・②」、そして第5章はまとめとしての…

幸せな名建築たち☆

(一社)日本建築学会が編著となっている。会報「建築雑誌」に連載されていた41の住宅・建築物に「聴竹居」を加え、42の住宅・建築物の居住者・所有者・管理者に対するインタビューをまとめたもの。会誌編集委員会の下に、『幸せな名建築たち』小委員会が設置…

ル・コルビュジエがめざしたもの

ル・コルビュジエ論かと思って読み始めたら間違う。あとがきで書いているとおり、モダニズム建築に関連して書かれた多くの論考などを集めたものである。本書に続いて、ポストモダン以降の建築を論じた現代編もすぐに刊行される予定という。いや、もう発行さ…

ほっとかない郊外

泉北ニュータウンで興味深い活動が行われているという話はこれまで何度も聞いてきた。この4月には都市住宅学会中部支部により、NPO法人すまいるセンターの西上代表理事による講演会が開催されたが、都合により出席できなかった。本書は昨年10月に発行された…