すまい・まちづくりノート
大学の講義で、ハビタットについて説明しようとした。しかしイスタンブール宣言にしろ、最新のキト宣言にしろ、その内容はけっしてわかりやすくはない。そこでネットを見ていたら、ハビタットによる住宅の7条件を見つけた。下に引用した内容だが、この原典を…
人口減少局面に入って久しい日本。にも関わらず、相変わらず全国で再開発事業が進められている。私の住む街でも、駅前広場の再整備について、いったん決定した整備案が、住民意見等が提出される中で、見直しが行われた。一方、隣々駅前では、1階がコンビニ、…
コーポラティブハウスについては、大学の講義の中でも取り上げて説明をしている。だが、一時のブームは去り、今や名古屋圏で事例を聞くことは少ない。居住者が計画段階から協働して住まいづくりを進めること。その理念は良しとして、実現することは難しい。…
昨年末に、中日新聞で、この本を題材にした連載記事が掲載された。学生のレポート課題にするにはいいかと思い、感想などを書いてもらうことにした。しかし、自分自身が元となった本を読んでいないのはまずいだろうと思い、さっそく読んでみた。 松本明子の実…
広井良典が商店街の本?というので、どんな内容かと思ったら、広井自身は総論にあたる第1章のみで、第2章以降はさまざまな経歴の筆者が分担して書いていた。執筆者には、経産省の役人もいれば、日本商工会議所職員、京都府商店街創生センター職員、東京R不動…
筆者の三好庸隆氏は、市浦都市開発建築コンサルタンツでいくつかのニュータウンの整備計画に従事した後、独立し、現在は武庫川女子大で教授を務めている。この間、明舞団地の再生コンペで最優秀賞を受賞するなど、もっぱら関西のニュータウンを中心に研究等…
饗庭伸の名前があったので思わず借りてしまったが、饗庭氏は「まえがき」と各扉ページの小文を書いているのみで、他は、24のテーマごとに若い研究者等が、そのテーマに関するキーワードを10程度選出し、それぞれ定義や関連事項等を書いている。24のテーマは…
隈研吾は好きではない。その作品は、無理に木材などを使用しているような感じがするし、彼自身にも権威主義的な臭いを感じる。それで、本書もそうした偏見を持って読み始めた。 「日本の建築」というタイトルだが、対象とするのは明治以降の日本建築。タウト…
大学の講義で「建築思想」について学んだことがあるだろうか? 「西洋建築史」の講義で多少は触れられたか? 「建築論」の講義はあったが、何を学んだのだろう。もっとも私の時代はまだポスト・モダニズム以前であり、CIAM等の1920年代以降の流れや、黒川紀…
○静岡県から九州沖にかけてマグニチュード(M)8~9級の巨大地震が30年以内に「70~80%」の確率で発生するとされている南海トラフ地震。この数字を出すにあたり、政府や地震学者が別の地域では使われていない特別な計算式を使い、全国の地震と同じ基準で算…
本書とは関係ない話であるが、先日読んだブレンディみかこの「リスペクト―R-E-S-P-E-C-T」が良かった。他のブログでその感想は書いたが、ホームレス・シェルターの退去通知を受けた女性たちが公営住宅の空き家を占拠し、「居住の権利」を訴えるという実際に…
「現代建築考」というタイトルを見て、藤森照信もついに2000年代以降の建築の評論をするようになったかと早合点してしまった。いや、そうではない。最も早いのはウィリアム・ヴォーリズの「浮田山荘」。最も新しいのは筆者の設計になる「たねや ラ・コリーナ…
7年前に発行された本である。翌年には私も読んだ。当時の読書感想を読み返すと、しっかり本書の内容を理解していたことがわかる。大学の集合住宅に関する講義の最後に、本書を紹介していたが、実際どういう内容だったかというと、記憶が曖昧。そこで今回、読…
筆者は不動産事業の専門家として、これまで空き家問題を中心に執筆をしてきた。具体事例が豊富なそれらの本はいずれも興味深いものだったが、本書は筆者の父親が亡くなり、相続を経験したからか、不動産を中心に相続制度について論じている。とは言っても、…
朝日新聞デジタルで昨年2月から6月にかけて連載された記事を再構成したもの。老朽化するマンション。そして高齢化する居住者。その結果、様々な課題と問題を抱えるマンションの管理の実態については、ようやく一般紙でも取り上げられるようになってきた。昨…
芝園団地は首都圏では有名な中国人が多く住むUR団地らしい。団地における外国人問題に関心を抱いた筆者は2014年から芝園団地に住み始め、かつ自治会役員になり、日本人と外国人の交流や良好な住環境づくりに関わっている。しかし、交流イベントなどは自ら企…
三浦展編ということで期待したが、あくまで三浦展は裏方。多摩ニュータウンで設計事務所「スタジオメガネ」を開設する建築家・横溝惇が三浦展に声をかけて始まった「世界の郊外展」でのトークイベントの内容を収録したもの。2018年12月から10回にわたって開…
「13歳から考える…」とあるように、中高生向けの本である。一昨年から始めた大学講義の内容を確かめる目的もあって、本書を手に取ってみた。当たり前だが、非常にわかりやすく書かれている。自己流で構築した講義内容だったが、内容的には、私が大学で講義し…
「限界ニュータウン」というタイトルからは、高度経済成長期、都心から遠く離れた地域で開発された中小の分譲住宅地で、入居者の高齢化や人口減少に伴い、空き家や空き地が発生している状況を想像させる。だが本書が紹介する住宅地はそんなレベルではない。…
「災害と住まい」という講義の中で、土砂災害も取り上げているが、その発生メカニズムなどは詳しくは知らない。そこで本書を読んでみた。「土砂災害の疑問55」というタイトルのとおり、「土砂災害とはどのようなものですか?」から「土砂災害の多い日本で暮…
ここ10年ほどの間に、筆者がさまざまな媒体で執筆・公表してきた論文を中心に、構成している。その視点は常に、人口減少し縮小する都市空間に対して、都市計画に何ができ、どうすればよいのかという一点にある。成長する時代の手法として発展した都市計画に…
私が担当している大学講義の中で1回、「居住福祉」をテーマに取り上げている。これまで、世界人権宣言などの居住の権利や、早川和夫氏の「居住福祉」などを皮切りに、住宅確保要配慮者など住宅セーフティネット法や公営住宅などを紹介してきた。だが、「居住…
「おわりに」を読むと、筆者の川崎氏は本書を「人口減少時代の住宅政策」の続編として構想したと書かれている。前著は、ここまでの住宅政策の流れを総括し、テーマごとに課題が整理され執筆されていたように覚えている。前著はテーマごとに複数の専門家が分…
森まゆみさんには、30年以上前に、福井県の越前大野で会ったことがある。確かHOPE計画の全国会議だったと思うが、前日に雪の中を「小清水」まで見学に行ったところ、同年代の女性が来ていて挨拶をした。その後の講演会で、あれは森まゆみだったと知った。20…
筆者は歴史研究者である。本書は「建築から世界史を読む方法」というタイトルだが、世界史の視点から西洋の建築史を読み解くものである。大学の建築学科で教わる西洋建築史は、オーダーを習い、ゴシックやバロックの様式を学び、新古典主義やゴシック・リバ…
都市居住を社会学はどう分析し、現在の日本の住宅政策をどう評価しているのか。タイトルと副題からそうした期待を持って購入した。序章の冒頭にも以下のように記されている。 ○これまでの日本社会では…社会学者の政策への関わりは低調であった。社会学の学問…
建築生産に関する研究者・松村秀一の最新刊である。とは言っても、もう1年近く前に出版されている。先日知ってあわてて購入した。(一社)日本建設業連合会の機関誌「ACe建設業界」で連載していたエッセイを中心に、いくつかのテーマにまとめて加筆修正した…
「現代総有」という考え方がある。「土地を地域(共同体)が所有し、若しくは個人所有は認めても、利用は地域(共同体)が決定し、主体となって利用する」という考え方である。第5章が「現代所有」というタイトルになっているが、この章で「現代総有」につい…
編者である住総研「シェアが描く住まいの未来」研究委員会の中心を担った岡部明子氏には、「サスティナブルシティ」など主にヨーロッパでの最先端の都市政策に関する専門家というイメージを持っていた。そこで、岡部氏が書いた序章「シェアを問い直す」を読…
「地域学」とは何だろうか。「地理学」とどう違うのか。いや、そんなことはどうでもよい。グローバル化が進み、国家ナショナリズムが沸騰する現代、私たちが住む足元、「地域」をもっと学ぶ必要がある。「地域学入門」と題された本書は、まさに入門書。いや…