昨年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

 去年は12冊しか読まなかった。妻の病気などもあり、なかなか落ち着いて本を読んでいる心境にならなかった。今年から始める予定の新しい仕事への準備をしていたこともある。それでも平山洋介の本が2冊も発行されたことはよかった。読んだ冊数は少ないが、例年よりもレベルは高かったと思う。

【第1位】マイホームの彼方へ平山洋介 筑摩書房
 昨年は何と言ってもコレ。住宅問題・住宅政策論を体系的に論じた教科書ともなる集大成の本だ。持ち家政策が「成長後の社会」でいかに機能不全を起こし、格差と住宅貧困を拡大させているかを統計資料等も用いてわかりやすく説く。10月に発行された「『仮住まい』と戦後日本」はいくつかの雑誌に出航した論文集だが、そちらには具体的な方策なども書かれている。2冊読むことで、筆者の考えがよりわかりやすく理解できる。

【第2位】日本列島回復論(井上岳一 新潮新書
 今や資源も人も「山水郷」に集まっている。「山水郷」にこそ日本の未来はある。地方に足を置く企業の可能性も示しつつ、具体的かつ実践的に「山水郷」を核とした日本列島回復論を描く。非常に魅力的な本だ。前半の資本主義批判も切れ味がよい。

【第3位】日本住居史(小沢朝江・水沼淑子 吉川弘文社)
 縄文弥生時代から現代まで。日本の住宅の歴史を、豊富な図や写真とともに、典型的な住宅を取り上げつつ、具体的かつわかりやすく説明していく。藤森輝信に匹敵するくらい、読み物としても優れている。楽しかった。

【第4位】近代建築そもそも談義(藤森輝信・大和ハウス工業総合技術研究所 新潮新書
 週刊新潮での連載を収録したとのことだが、かなりまとまって書かれ、本書で初めて知った逸話も多い。藤森輝信氏の引き出しはどこまで深いのだ。だから藤森輝信はやめられない。

【第5位】土地はだれのものか(「土地はだれのものか」研究会 白揚社
 法学や経済学などの分野から人口減少時代の土地問題について書かれた本。歴史的視点から日本の土地法制が構築されていった過程を追う論考も興味深い。日本の土地問題を再構築するためにはこうした法曹会からのアプローチが欠かせない。日本の将来にとって非常に重要かつ有益な指摘と提案に満ちている。