「住宅団地再生」連絡会議in高蔵寺

 今年は高蔵寺ニュータウン入居開始50周年ということで、様々な催しが開かれている。6月には、ニュータウンで最初に入居が始まった藤山台地区の住民有志による「藤山台50周年記念式典が高蔵寺まなびと交流センター「グルッポふじとう」体育館で開催された。
 この種の住民主体によるイベントは、春日井市が50周年記念ロゴを作成し、認定事業に対してロゴの使用を促しているため、色々な取組が行われている。春には社会福祉協議会が主催する「さくらウォーク」というウォーキングイベントが開かれ、7月にサンマルシェ(ニュータウンの中心商業施設)で開催された恒例の「きてみん祭」も50周年記念事業の冠を付けていた。
 そして、10月にはUR都市機構が中心となり、「高蔵寺ニュータウンまちびらき50周年 魅力ある街 トークセッション」も開かれた。これもグルッポふじとうの体育館で開催され、女優・タレントのいとうまい子や春日井広報大使北京五輪シンクロナイズドスイミング代表の松村亜矢子らが壇上に上がり、多くの市民を集めていた。私も出席してみたが、もっぱら健康づくりに関する話題が中心で、高齢者にとっては興味のある話だったかもしれない。
 そして11月5日・6日と「『住宅団地再生』連絡会議in高蔵寺ニュータウン」が開催された。この会議は、地方公共団体や民間事業者が中心となり、郊外住宅団地の課題と方策を検討するため、平成29年に設立されたもので、今回が3回目の開催となる。6日は見学会が中心。5日はシンポジウムの後、分科会に分かれての意見交換会が開かれたが、このうちのシンポジウムに参加してきた。
 シンポジウムでは春日井市長の挨拶、国土交通省からの情報提供の後、春日井市から「高蔵寺ニュータウンの紹介」と、中部大学の服部敦教授から「高蔵寺ニュータウン計画からリ・ニュータウン計画へ」と題する基調講演が行われた。春日井市からの報告は既にこのブログでも書いてきた内容とほぼ同じなので省略。服部先生からは1967年鹿島出版会から発行された「高蔵寺ニュータウン計画」(高山英華編)を基に、ニュータウン計画の推移などを説明し、現在のニュータウンの状況を紹介された。高山英華氏の係わりや津端修一氏の考えなどの部分では多少異論もあるが、概ね好意的な内容であり、気持ちよく聞いていられた。
 ちなみに「強力なワンセンター」という評価についてはそのとおりだが、一方で先生が主導して作成した「高蔵寺リ・ニュータウン計画」では「サブ核」の設置が提案されており、サブ核と強力なワンセンターとの関係やあり方について、先生がどう考えておられるのか、一度聞いてみたい。講演の終盤は、「計画資産(Designed Assets)」を生かしたまちづくりと、「計画されない資産(Not Designed Assets)」、すなわち住民活動やまちづくり会社の事業などを期待するという具合にきれいにまとめられていた。
 このシンポジウムで興味深かったのは、その後で報告された5件の事例発表だった。
 一つ目は、瀬戸市からの「菱野団地住民バス」の取組について。菱野団地は春日井市に隣接する瀬戸市で、昭和41年から開発され、45年から入居が始まった住宅団地だ。あの黒川紀章が全体設計をしているが、県営住宅、県公社住宅の周辺に戸建て住宅が建ち並び、県営住宅については順次建て替えが進められているが、団地全体の管理者は存在せず、中心部の商業施設はかなり老朽化してきている。
 住民バスについては、昨年社会実験として4ヶ月ほど運行され好評だったことから、今年8月から再スタートをしたもの。定員10名のワゴン車を1日10便運行しており、運賃は無料。費用のうち14.1%(市のコミュニティバスの収支率を採用)は自治会負担としている。瀬戸市ではようやく昨年11月に住民や学識者等による検討委員会を立ち上げ、菱野団地再生計画の策定を始めた。遅きに失したという感もあるが、今後の巻き返し、再生を期待したい。
 2番目は、堺市から「泉北ニュータウンまちびらき50周年事業」について。堺市では大阪府やURなども参加して、実行委員会を組織し、50周年事業を実施したとのこと。ただ、事業内容としては、シンポジウムや記念イベントの開催などが主で、これで1500万円近く使ってしまったというのは、本当に意味があったのかと思わざるを得ない。その点、春日井市高蔵寺ニュータウン50周年に際し、職員の手作りでロゴだけ作って、あとは住民やグルッポふじとうの自主事業等に委ねているのは、かなり賢い。もっとも当日は、連絡会議メンバー向けの説明だったので、取組の内の部分的な説明に留まっていたかもしれない。
 3番目は、春日井市から「高蔵寺ニュータウンにおける先導的モビリティを活用したまちづくり」。4番目は、中部大の豊田教授から「押沢台北ブラブラまつり」について。これらは既に、「高蔵寺ニュータウンについて(その2)(その3)」で紹介しているので割愛。でもブラブラまつりについては豊富なスライドで住民たちのイキイキとした姿が紹介され、楽しかった。
 最後に、「地域主体の構想づくりとその実践」と題して、「NPO法人まちの縁側育み隊」の名畑恵さんから、名古屋錦二丁目長者町地区の再生のまちづくりについて報告があった。NPOが参加して、住民と一体となって、計画づくりからしくみづくりへと進んでいった報告は迫力がある。この過程で、町内会などの地縁組織が「一般社団法人錦2丁目まち発展機構」を設立(2018年2月)され、さらにその100%出資により「錦2丁目エリアマネジメント株式会社」(2018年3月)が設立されている。こうした実践力はすばらしい。
 当日は「NPO法人まちの縁側育み隊」のメンバーにも数人お会いしたが、シンポジウム後の分科会ではさらに深い意見交換があっただろう。ただ残念ながら意見交換会テーマの中ではぜひ参加したいと思うようなテーマはなかった。これは現在の私の職域に関連してはということでもあるが。いずれにせよ、東部市民センターの500席のホールがほぼ満員となるような盛会な会議だった。これを機に高蔵寺ニュータウンはもちろん、全国のニュータウンにおいて、その計画遺産を生かした活性化が進むきっかけになればいいと思う。