今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

 今年は都市・建築関係の本を18冊読んだ。例年よりは多め。その中からベスト5を選定してみた。都市の縮退や空き地・空き家等に係る本が多いのが今年の特徴。一般のメディアなどで取り上げられることも多くなってきた。

【第1位】都市をたたむ(饗庭伸 花伝社)

 今年は饗庭伸の講演会「人口減少時代の都市計画・まちづくり」(http://ozakigumi.hateblo.jp/entry/2017/12/02/213149)に参加できたことが最大の収穫だった。「都市のスポンジ化」という言葉ばかりがクローズアップされるが、「人口減少を過度に恐れない」という姿勢は本当に正しいと思う。都市計画制度に対する理解も秀逸。饗庭氏を筆頭に、都市計画は新たな時代に入っていくという予感がする。

【第2位】ニュータウンの社会史(金子淳 青弓社

 今年は高蔵寺ニュータウン50周年で、様々なイベントに参加させてもらった。都市住宅学会会報への執筆も勉強になった。その論文の中でも紹介させていただいたが、ニュータウンは今後どうなっていくのか、どうすべきか。社会学者の視点から多摩ニュータウンを論じる。「ニュータウンは時の経過とともに……『タウン』になる」。まさにそのとおりだ。そしてその時には「ニュータウンというカテゴリー自体が消失する」。そうなればいいのかもしれない。

【第3位】捨てられる土地と家(米山秀隆 ウェッジ)

 年後半になって、米山秀隆氏の本を3冊も読んでしまった。今や、空き家・空き地問題は国民的課題になりつつある。TVでも空き家管理や過疎地での住まい、移住などが連日のように放送されている。その中で具体的かつ実現可能な政策を提案しているのが米山氏だ。ぜひ数多の政治家にもこれらの本を読んで、政策化に向けて尽力してほしい。

【第4位】藤森照信の建築探偵放浪記藤森照信 経済調査会)

 もっとお気楽な本かと思っていたが、しっかりと構成された好著だ。500ページ近い大部の中に71件の建築物等が紹介され、本書で初めて読んだ内容も多い。これが雑誌に連載されていた、ということもすごい。改めて藤森照信の偉大さを実感した。

【第5位】僕らの社会主義國分功一郎・山崎亮 ちくま新書

 哲学者とコミュニティデザイナーという異色の対談だが、建築装飾や建築デザインから近代・現代建築の意味を振り返り、今後の建築を構想する。作家主義批判から住民参加へとつながっていく建築論は筆者たちゆえの必然の結論か。個人的にはポストモダンに対する解釈が興味深かった。

【選外】

 上記以外には、「『都市の正義』が地方を壊す」(山下祐介 PHP新書)や日本建築学会の「幸せな名建築たち」が興味を惹いた。いよいよ本格化する人口減少と不安定な世界情勢の中、これからの都市や建築はどうすれば幸せでいられるだろうか。