港北ニュータウンへ行ってきました。

 港北ニュータウンと言えば、今や人口20万人を超える大ニュータウンで、今さら私が紹介するまでもないとは思うが、たまたま先日、港北ニュータウンを歩く機会があったので、報告をしておきたい。首都圏にお住まいの方には田舎者の見学記としてご笑覧いただきたい。
 港北ニュータウンを歩くことになったのは本当にたまたまで、というよりも私があまりに横浜のことを知らなかったがゆえの、私にとっては偶然の出来事だったのだが、夕方に横浜馬車道近くにあるUR本社へ行く予定があり、それまでの間、時間があったので、「どこか見学すべきところはないか」と社内の友人に聞いたところ、「それなら最近リニューアルしたショッピングセンター巡りとかどうですか」と、昨年9月にリニューアルした「ノースポートモール」と10月リニューアルオープンの「みなとみらい東急スクエア」を紹介された。どちらも市営地下鉄駅から遠くなく、半日で2ヶ所回ることも可能だと思い、まずは新横浜駅を降りて地下鉄ブルーラインに乗って「ノースポートモール」へ向かった。
 市営地下鉄は港北ニュータウンに近付くと、地上に出て、マンションも多く立地する中を走っていく。「センター北」駅を降りると、目の前に広い広場が広がり、正面には「ドンキホーテ」の看板がある商業施設「プレミア・ヨコハマ」。その左手には観覧車がひときわ目立つ「モザイクモール港北」。そして改札を出て右手にモダンなデザインが印象的な「YOTUBAKO」があり、目的の「ノースポートモール」はその先のデッキを渡った先にある。
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 「ノースポートモール」の3階にエスカレーターで上がると、ファミリー&キッズコーナーはかなり充実している。また同じ階にあるフードコートも、多様な形状のベンチやイスが全530席もあって楽しい空間になっている。ウェンディーズで買ったハンバーガーを食べながら、これからどうしようかと考えた。「ここは港北ニュータウンじゃないか」「初めて港北ニュータウンにやってきた」「ニュータウンを見ずに、みなとみらい地区へ向かうのは惜しい」「でもそとは日差しが強くかなり暑そう」。自問自答しつつ逡巡したが、せっかく来たのなら、やはり港北ニュータウンを歩かないわけにはいかないと、「みなとみらい東急スクエア」はまたにして、しばらく歩いてみることにした。
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 だが、実は港北ニュータウンについて何も知らない。住都公団が開発したとは思うが、その事業手法は? 面積は? 計画人口は? まずはフードコートでスマホ検索。概ねの概要を頭に入れた後、「センター北」駅前広場に戻り、「プレミア・ヨコハマ」の中を通ってそのまま北へ抜けた。歩行者道路が北へ伸びている。陸橋で幹線道路を跨ぎ、戸建て住宅の間を抜けて歩いていくと、緑豊かな緑道に出た。緑道の真ん中にきれいなせせらぎが流れている。左へ行けば東京都市大学(旧・武蔵工大)と思いつつ、右手へ向かう。「ビュープラザセンター」って何だろうと思いつつ、幹線道路の下をくぐり、徳生公園の池端に至る。ここまで本当に気持ちのいい空間。センター駅から程近いところにこんなにも豊かな自然空間があることに心底驚いた。
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 しかしここから先はマンション街が続いている様子なので、強い日差しの中、そろそろ「センター北」駅に向かって戻ることにする。戸建て住宅地に出て、歩道橋から住宅地を眺め、戸建て住宅に挟まれた緑道を歩いていく。途中、共有庭を囲んだコートハウスもあって興味深い。しばらく行くと児童遊園に出て右折。やや広めの歩行者道路をしばらく歩くと、「センター北」駅前の広場に戻った。まず、高級そうなマンションが多い。戸建て住宅は高蔵寺ニュータウンに比べれば敷地は狭いが、歩行者道路や児童遊園などの緑に恵まれている。そして完全な歩車道分離がされている。高蔵寺ニュータウンではUR賃貸住宅の中でこそ、狭い歩行者道路が住棟の間を縫って続いているが、戸建て住宅地までは続かない。
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 「センター北」駅に戻ってどうしようかと迷ったが、「センター南」駅まで歩いてみた。「ノースポートモール」の横を通り、横浜市歴史博物館まで歩く。この間、広い歩道が気持ちいい。そこから先も歩行者空間は続くが、周りはかなり殺風景。東西に「ルララこうほく」と「港北みなも」の二つの商業施設。もっとも歩道から見ると施設の裏側で駐車場と看板しか見えないが、これだけの大規模商業施設がいくつも立地して成り立っているかと思うと、高蔵寺との規模の違いに改めて驚愕する。しばらく歩き、川を渡り、「センター南」駅の中に入っていく。駅は長いエスカレーターの先だが、とりあえず地上階を通り過ぎて右へ曲がり、都築区役所へ向かった(あとから考えれば、エスカレーターに乗って、駅南の広場からペデストリアン・デッキ経由で行けばよかった)。
 港北ニュータウンの開発経緯や全体計画がわかるような資料はないかと訪ねたのだが、図書館があったので、郷土資料コーナーを物色したところ、「(財)港北ニュータウン生活対策協会」発行の「写真集 港北ニュータウン~むかし・いま・そして未来へ…~」がわかりやすかった。それをパラパラっと見て感じたことは、地域の歴史があり、また区画整理を成功させるにあたって地元地権者の勉強や協力もあった。が、それが現在の入居者にどれだけ伝わっているか。港北ニュータウンアイデンティティは何か。それがもう一つわからなかった。いや、たぶん、港北ニュータウンに長く住んできた人にはそれなりの思いがあるだろうし、住民相互の活発なコミュニティなどもあるのだろうが、高蔵寺ニュータウンにあって港北ニュータウンにないもの。それは「物語」ではないかなと思った。高蔵寺ニュータウンは港北ニュータウンに比べれば、わずか1/5位の規模しかない。歩いても十分、ニュータウンの端から端まで行ける。だから、長く住んでいる人には、どこに何があって、どんな経緯をもって今があるのかを知っている。そして、一昨年上映された「人生フルーツ」、津端修一という都市計画家の存在。そこに高蔵寺ニュータウンと港北ニュータウンの違い、わずかに高蔵寺ニュータウンが優っている点があるのではないか。そんなほのかな希望を抱いた。いや、私の単なる幻想かもしれない。港北ニュータウンの方がずっと環境的にもすばらしいし、それが多くの人を惹きつけ、ほぼ計画人口並みの事業の達成を果たしている。
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 資料の中に「まちづくり館」という名前を見つけ、行ってみる。だがそこは社協などが入っている施設だった。2階に「(NPO法人)港北ニュータウン記念協会」があったので訪ねてみればよかったかも。でも、何を聞きたいのか、明確な意思もなかったので躊躇した。隣に「(株)横浜都市みらい」もあった。「センター北」駅前の商業施設「あいたい」などを管理運営している会社だが、入口が地味だったので気後れして、そのまま「センター南」駅まで引き返した。
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 そしてエスカレーターに乗って驚いた。駅前に広い広場が広がり、商業施設が並んでいる。すごい。こちらも広場の南の端まで歩いて戻ってきた。帰りに不動産屋を覗いたら、中古戸建て住宅が6000万円前後、賃貸住宅も11~16万円近くする。なるほど高級住宅地。高蔵寺ニュータウンと比べるのもおこがましい。そんな劣等感を抱きつつ、チケットショップで名古屋までの格安チケットを購入した。横浜へ行くのも、名古屋へ行くのも、値段は一緒。それだけはよかった。首都圏へ向かう電車運賃の方が、下りよりも2倍も高いとしたら、きっともっと深い劣等感に陥っただろう。夕方、UR本社での仕事を終え、新横浜駅でシュウマイ弁当を買って、新幹線に乗り、心温まる家族のもとへ、高蔵寺へと帰路を急いだ。港北ニュータウンはかなり高いレベルでニュータウンの理想形を実現している。田舎者にはちょっと手が届かないけど、歩いてみるだけなら誰でも自由にできる。