今年読んだ「すまい・まちづくり本」ベスト5

 今年読んだ都市・建築関係の本はわずか11冊。平均すると月に1冊のペース。その他の一般図書も51冊しか読んでいない。コロナ禍があり、妻の介護もあって、外出がままならない。見学記や講演会の記録が中心のこのブログだが、それらにほとんど参加できず、またこれからも参加できる見込みは少ない。このブログもそろそろ仕舞い時か。とりあえず、今年読んだ本を振り返るとしよう。

[第1位]土地は誰のものか (五十嵐敬喜 岩波新書
 土地に私的な所有権・利用権を認めてきた日本の土地法制を、人口減少が進み、不明土地や空き家・空き地の発生が続く今、改めて考察し、新たな仕組みを考えてみようと提言する。古代から現在までの土地所有権の歴史から掘り起こし、「現代総有」に辿り着く。「土地」と「国民」がいてこその国家だ。今こそ大胆に、土地問題に切り込む時かもしれない。

[第2位]住まいから問うシェアの未来 (住総研「シェアが描く住まいの未来」研究委員会 学芸出版社
 「シェア」を切り口に所有権について考察する。排他的所有権を否定し、利用を優先する方法を考える。「土地は誰のものか」とは違い、現在の事例、それも国内にとどまらず、海外も含めた様々な事例が紹介される。「シェア」と言うからわかりにくい。「所有」のない世界を構想しよう。一般人にとって「住まい」こそ、最優先・必要不可欠な利用物権なのだから。

[第3位]都市の問診 (饗庭伸 鹿島出版会
 いつもながら饗庭伸の文章はわかりやすい。でも、このタイトルは少しわかりにくかった。多くの媒体で発表された論文が集められている。「住宅地」と「拠点」と「交通網」を等閑に整理し、「急ぎ仕事」と「気長仕事」を明確に区分する。都市を「暮らしと仕事のための資源調達の場」と言い、都市計画を「この調達の効率を高めるため」のものと定義する。縮小する都市への計画論が的確、かつ明確だ。

[第4位]これからの住まい (川崎直宏 岩波新書
 近年の住宅政策の方向である「市場重視政策」「ストック重視政策」「賃貸住宅政策」「セーフティネット政策」「居住福祉政策」について、経緯と評価を語り、今後の方向として「ハウジング・スモールネス」を提示する。だがそれを地域の住民や組織、企業に放り投げているのは如何なものか。地方行政の役割は今後ますます重要になっていくのではないか。

[第5位]建築から世界史を読む方法 (祝田秀全 KAWADE夢新書)
 歴史研究者である筆者が、世界史の視点から西洋の建築史を読み解く。単に様式を習うのでなく、どういう歴史の流れや背景の中で、その様式や建築が生まれてきたかを大胆にまとめている。なぜルネサンスが復興したのか。なぜ民主主義が生まれた革命の時代にグレコ・ローマン様式がリバイバルするのか。建築の視点から楽しく世界史を知ることができ、面白かった。