13歳から考える住まいの権利

 「13歳から考える…」とあるように、中高生向けの本である。一昨年から始めた大学講義の内容を確かめる目的もあって、本書を手に取ってみた。当たり前だが、非常にわかりやすく書かれている。自己流で構築した講義内容だったが、内容的には、私が大学で講義しているものとほぼ変わりない。よかった。
 それでも少し私の講義の中で足りない部分がある。住宅の機能として、住所を得ることにより初めて得られる権利があること。ホームレスの減少の要因には、ネットカフェ難民の増加も考えられること。ホームレス対策としての「ハウジングファースト」も知らなかった。日本住宅会議が掲げるハビタットによる住宅の7条件はわかりやすい。
 ①風雨から守られていること、②安全な飲料水や衛生設備があること、③強制立ち退きやプライバシーの侵害がないこと、④学校、医療施設等に安易に到達できること、⑤適正な通勤圏内に立地していること、⑥家族生活のための最小限の広さを確保していること、⑦負担しうる居住費であること。
 もちろん中高生並みの講義を大学でしようというのではない。だが大学生だからといってこれらのことを十分理解しているとは限らない。非常勤講師としては、まずは基礎の部分をしっかりと構築しておくことが役割の一つではないかと思っている。4月からの新しい講義に向けて、講義内容も少しずつ修正を加えていこうと思う。その点で十分参考になる一冊だった。

○住宅は、単なるねぐらではなく、人間の内面的成長や精神的充足を実現する場でもあります。また住宅は、そこに暮らす人同士のコミュニケーションの場であり、生命を育むケアの場であり、自分が自分らしくあるための安らぎの場でもあるのです。/さらに、住宅は自分が誰なのかを証明する役割も持ち合わせています。/学校へ入学する、就職する、携帯を契約する…など生活の多くの場面で住所が必要になります。住所は住宅がなければ得られません。(P35)
厚生労働省によれば、2007年に1万8564人だったホームレス数が、2021年には3824人にまで減少していると報告されています。この現象の背景には、ホームレス状態に陥った人への支援体制を強化したということもあるでしょうが、路上以外の場所に避難する人の存在も指摘されています。/ネットカフェで生活をするネットカフェ難民の人たちもそれにあたります。(P39)
○何かあったときには、気持ちを伝え、解決方法を一緒に探していく。「一緒に住む力」がシェアハウスでは必要です。だれかと暮らして得られる安心や安全は、協調したり、妥協したり、慣れない主張をしたりと、少ししんどいこととセットになっていると考える必要があるかもしれません。(P123)
○世帯の多様化にともない、長らく家の中で家族によってまかなわれてきたケアは当然のものではなくなりました。物理的な建物というハードだけでなく、人々の生活の質や幸せといったソフト面においても、適切な住まいをどうやって確保するか。転換期を迎えているこの問題を解決するためには、親や子、きょうだいなど、血のつながった関係になる家族だけでなく、社会全体で取り組む必要があります。(P136)