名古屋栄に「ヒサヤオオドオリパーク」がオープン

 しばらく工事が進められてきた名古屋栄地区の久屋大通公園が先月18日、リニューアル・オープンした。たまたま当日、名古屋へ行く機会があったので、ついでに寄ってきた。時間はちょうどお昼時。だが、天候はあいにくの小雨模様。それでも久しぶりにオープンした公園には多くの人が集まっていた。
 地下鉄「栄」駅で降りると、地上に出て、まず南方向に歩いて行った。栄の中心的なビルの一つであった中日ビルは解体工事が進み、跡形もなくなっている。それを横目に、久屋大通を南に向かう。今回オープンしたのは、外堀通から錦通までの「北エリア・テレビ塔エリア」で、それより南の若宮大通までの「南エリア」は、これから整備が進められる。だが、以前、市バスのバスターミナルがあった区域については、「栄バスターミナル(噴水南のりば)跡地暫定活用事業として、2023年春までと期間を区切って再整備が実施され、中日新聞社を代表とする事業グループにより、今年3月に「ミツコシマエヒロバス」がオープンしている。

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解体された中日ビル

 広小路通に面してイベント広場があり、一周70mの小さなトラックと人工芝を介して、南に、屋上バーベキューのある平屋の商業施設が建つ。小雨であまり人出は多くなかったが、パラソルの下のベンチで食事をするグループもあり、これまでよりも広々とした感じがして気持ちいい。ただ、「ミツコシマエヒロバス」という名称は、久屋大通西側に隣接する三越百貨店の前ということを知っている人にはいいが、あまりにカタカナが長く連なると、どこが切れ目か、わからなくなる。「ミツコ・シマ・エヒロ・バス」ってどういう意味。

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ミツコシマエヒロバス

 南へ歩くと、途端に人通りもなく、寂しくなる。かつて森永製菓がスポンサーとなり「エンゼル球場」があったことから、「エンゼルパーク」と名付けられているが、中でも北側の区域は「愛の広場」と呼ばれる。「慈(いつくしみ)」というタイトルが付いたベンチで和む親子や鳩と戯れる子供らが楽しそうな「愛・5人家族」など、多くの銅像が展示され、また、間歇的に噴き上げる噴水広場もあるが、今は歩く人もなく、ひっそりと次の整備を待っている。これらの銅像はどうなるのだろうか。

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ベンチに座る「慈」
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「愛・5人家族」

 そのまま南に歩いても寂しくなるばかりなので、「愛の広場」の南端辺りで引き返した。「ミツコシマエヒロバス」の広小路通を挟んで北側、錦通との間の空間が「希望の広場」。ここにある「希望の泉」は変わらず、元気に水を噴き上げている。噴水越しに見るテレビ塔の姿もこれまでと変わらない。錦通久屋の交差点から東を見ると、「オアシス21」、そして「愛知県芸術文化センター」と「NHK名古屋放送センタービル」が並ぶ。また、錦通の中央分離帯には野々村一男作の「双身像」が建っている。

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希望の泉
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愛知県芸術文化センター」と「NHK名古屋放送センタービル」

 横断歩道を渡ると、いよいよ、「ヒサヤオオドオリパーク」の一角に足を踏み入れる。だが、公園の両サイドに並ぶ店舗に視界を遮られて、まだテレビ塔を見ることができない。これまでも大きな木々に遮られていたかもしれないが、建物の陰というのは少しいただけない。正面に回り込むとようやく、テレビ塔が全貌を見せてくれた。かつてはレンガ敷きの広場だったが、今度は芝生広場。そしてサンクンガーデン(旧「もちのき広場」)を挟んでテレビ塔が聳える。左右にはびっしり店舗が並ぶ。

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錦通から見るテレビ塔

 「ヒサヤオオドオリパーク」は正式には「レイヤード ヒサヤオオドオリパーク」、若しくは「RAYARD Hisaya-odori Park」と言う。2017年の都市公園法の改正により創設された公募設置管理制度(Park-PFI)に基づき、名古屋市が公園の整備及び運営管理を行う事業者を公募し、三井不動産(株)を代表とする事業者を選定し、整備したもので、「RAYARD(レイヤード)」は三井不動産が用いる公園一体型商業施設のブランド名だ。それにしても、こちらも全部カタカナで表記するのは煩わしい。せめて「レイヤード 久屋大通パーク」が一般的にならないものか。
 サンクンガーデン(単に「地下広場」と呼ぶらしい)には大型ビジョンが設置され、広場手前の手すりにもたれてテレビ塔を眺めるのも面白い。サンクンガーデンを回り込むと、テレビ塔に向けて、水盤が延びる。水盤の両側は芝生。そして歩道を挟んで、店舗が並ぶ。水盤に映るテレビ塔は夜間にはもっときれいになるようだ。ただし、両側の店舗は、水色に塗られた「Café de paris」や縦縞模様の「ダンデライオン・チョコレート」など、外観もバラバラで、猥雑な感じがする。

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地下広場とテレビ塔
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水盤とテレビ塔

 そのままテレビ塔下まで歩く。テレビ塔は免震工事をするとともに、エレベーター棟を増設。内部も改修され、ホテルやレストランなどが入る。だが、テレビ塔の左右(東西)には、足元まで店舗が迫り、窮屈になった印象。テレビ塔や店舗に用がないと、スタスタと通り過ぎてしまう。テレビ塔は近くで立ち止まって上を眺めるのではなく、遠く離れて見なさい、という感じ。少し気ぜわしい。

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テレビ塔の足元

 それでもテレビ塔の北側、桜通の南側は芝生広場が広がっており、少しホッとする。振り返ると、窮屈そうにテレビ塔が聳えている。それにしても、各店舗の外観がバラバラなのは、あえて意図したものだろうか。桜通の東側にかかる歩道橋を渡って、一番北のエリアへ。ちなみにこの歩道橋、「レインボーブリッジ」と言う。トヨタ自動車に勤務していた友人から後日、「レインボーブリッジは、久屋大通公園内にロサンゼルス広場が整備された際に、トヨタ自動車が寄付をして設置された」という話を聞いたが、ロサンゼルス広場が整備されたのは、お互いまだ就職前の1978年。彼はたぶん就職直後に、先輩からその話をよく聞かされたのだろう。

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レインボーブリッジからテレビ塔を振り返る

 歩道橋を渡ると、「ZONE 2」と呼ぶエリア。テレビ塔周辺やその南側ほどではないが、店舗がパラパラと距離を取って、立ち並んでいる。周りの機微の間から、古い町家が見える。今までもそうだが、公園は、周囲の街並みとは全く無関係に整備された。足早に過ぎ去ると、魚ノ棚通から北の「ZONE 1」には気持ちよく芝生広場が広がっている。中央に、丸みを帯びた2体の像が並ぶ形のモニュメントがあり、左右に一棟ずつの店舗が立地する。東側の「FabCafe Nagoya」は大垣共立銀行が協働で出店参加をしている。と、直前にお会いした銀行員の方が言っていた。

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「ZONE 2」
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木々の間から町家
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「ZONE 1」

 そして最後の通りを渡ると、あとは外堀通を走る名古屋高速道路まで何もない。いや、その手前にアイストップとして、「天狼院書店」。カフェが併設され、居心地も良さそうだ。この立地でどこまでがんばれるかは定かではないが。そして振り返る。広がる芝生の先にテレビ塔。この景観はすごい。以前の公園は両側に高木が聳え、薄暗い雰囲気だったが、一変した。かつての林がなくなってしまったのは残念という意見も聞くが、左右には適度に高い木々が残っており、しょうがないんじゃないかな。

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芝生広場と名高速
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芝生広場とテレビ塔

 それよりも、公園の左右、車道と歩道、そしてビルなどが立ち並ぶ街区への配慮、というか、意識が全くないことの方が問題。帰りは公園東側の歩道を歩いた。これまでも「ZONE 2」の辺りは、公園地下のセントラルパーク駐車場への入口もあることから、左右の歩道空間と公園との縁は切れていたが、それでも前は木々があった。しかし公園整備後は、店舗の背面が丸見えになっている。景観への配慮は全くない。ところどころ店舗の切れ目から公園内が見えるだけ。

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東側歩道から見る店舗背面
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東側歩道から見る公園

 そして、周囲との連続性のなさが特に際立つのが、「オアシス21」との関係。テレビ塔を過ぎて、左手に「オアシス21」、その向こうにはNHK名古屋放送センタービルが見える交差点があるが、公園側の外観は実に味気ない。「オアシス21」の最上階「水の宇宙船」に広がる水面には、テレビ塔に向けて、色とりどりのカーネーションの花を集めた架け橋「Flower Ship(フラワーシップ)」が作られていたが、オアシス側のお祝いに対して、テレビ塔側はあまりに冷淡。「オアシス21」は、芝生もきれいな気持ちのいい空間なだけに、商業施設で賑わう「ヒサヤオオドオリパーク」を訪れた人にとっても、憩いとなる空間のはずだ。同じ名古屋市が所有する公園のはず。もう少し連携があってもよかったのではないか。

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オアシス21北西の交差点
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オアシス21愛知芸術文化センター
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愛知芸術文化センター前の広場
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オアシス21」の「花の架け橋(Flower Ship)」

 「オアシス21」からエレベーターで地下まで降り、地下街のセントラルパークに行くと、多くの店舗にシャッターが降ろされていた。11月6日にリニューアル・オープンの予定だが、スーパーマーケットを核とした食物販ゾーンが新設される計画となっている。今は多くの集客を集める「ヒサヤオオドオリパーク」だが、名古屋人は手強い。名古屋初出店の店舗も多いが、いつまでこの賑わいが続くだろうか。周辺の業務施設や文化施設、商業施設などとの関係性を断ち切って、地下鉄駅利用者だけをターゲットにするのでは、意外に厳しいかもしれない。
 おしゃれなテナントか、都心のスーパーマーケットか。地上か、地下か。久屋大通の上下で異なった戦略の商業施設がオープンする。どんな結果になるか。これは見ものだ。