空き家の管理・活用について考える。

 先日、都市住宅学会東海支部の公共住宅部会で空き家問題について議論が盛り上がった。空き家対策と言えば除却と活用が二本柱として掲げられる。先日施行された空き家特措法では老朽化した特定空き家への対策が主に強化されたが、一方で活用の促進も重要と言われる。空き家の活用と言うとすぐに地方公共団体による「空き家バンク」の設置が言われるが、住宅を住宅として再利用するのでは、結局また別の住宅で空き家が発生するだけだ。世帯数が減少する状況の前では、住宅を減らさないことには空き家は減少しない。空き家を減らす方策についてもっと真剣に考えたほうがいい。
 空き家を減らすために一番簡単なのは除却することである。だが建物を除却すると固定資産税が6倍にも上昇してしまう。今回の法律で特定空き家については除却されなくても1/6減免の規定を適用しないことが示されたが、建物自体がまだしっかりしていれば除却しなくてもかまわない。それを除却に向かわせるためには、除却をして固定資産税が上昇してもそれを補って余りある収入を確保する必要がある。一般的には駐車場経営だろうか。そうした代替案がないと除却を簡単に勧めるのは難しい。相続者が近くに住んでいれば菜園として利用し楽しむなんて方法もある。
 建物を住宅として利用しなければ、新たな空き家の発生はない。グループホームなどの福祉施設などに利用する方策も考えられる。私の実家ではかつて自営業の事務所として利用していたスペースを父親がギャラリーに改装して利用している。また離れとして利用していた2階部分は倉庫となっている。かつて住んでいた実家の住宅を倉庫代わりに利用している人は多いだろう。時々通って利用されていれば問題はない。
 もちろん除却して土地を売却できればそれに越したことはない。これから土地余りの時代がやってくると、タダでいいから隣家の方に譲りたいなんて人も現われるかもしれない。地方では土地所有が負担となってババ抜きの様相を呈する地域もあるだろう。山林なんて既に実質そういう状況だと思われる。
 これから多くの人が空き家の管理や活用に頭を悩ませる時代がやってくる。土地・建物の管理・活用に関するアドバイスやコンサルティングが求められるようになるだろう。1月に講演「住宅地における多様性の獲得」を聞いた東大の大月先生も、不動産業者の役割の重要性を強調されていた。宅地建物取引主任者が宅地建物取引士に名称が改められたが、「取引」だけではなく「管理・活用」に関する新たな職能が求められている。