愛知県東海市の太田川駅前と言えば、「デフレの正体」で藻谷浩介が「好景気にも関わらず閑散な駅前の代表」として取り上げていた。「デフレの正体」が発行されたのは5年前で、確かにその頃はまだ区画整理事業などは目に見える形ではできていなかったかもしれない。しかし、その後の太田川駅周辺の変わり様は目を見張るばかりだ。
名鉄太田川駅は名古屋駅から中部国際空港方面に向かう常滑線と半田・河和方面に向かう河和線の分岐点に当たり、特に中部国際空港開通後は鉄道輸送力の強化と乗換えの円滑化等の要請に応えるため、平成13年度から鉄道連続立体交差事業が進められてきた。
またそれに先立つ平成4年度からは太田川駅周辺土地区画整理事業が着手され、駅の東側は連立事業が完了した平成24年度までには駅前広場も整備された。そして、平成25年3月には「太田川駅前まち開きフェスティバル」が開催されている。既に、駅東には優良建築物等整備事業により、市民交流プラザや商業施設等が入居した「ソラト太田川」が平成24年4月にオープンし、駅の東側は50mの歩行者道路を中心に整備が完了している。
一方、駅西には昭和40年代からユニーが出店していたが、連立事業の仮線敷設等の要因もあり平成14年に閉店。その後は地元商業者による小規模商業施設が運営されていたが、今年3月にユニーにより再建築され、ピアゴを核テナントとするラスパ太田川がオープンした。駅に近い南館にはニトリやスタバも入っている。
また、駅西から伸びる30m歩道の先には日本福祉大学が建設され、今年4月にオープンした。美浜キャンパスから経済学部と国際福祉開発学部が移転するとともに、看護学部が新たに開設されている。
このように太田川駅周辺に次々と様々な施設がオープンする中、いよいよその総仕上げとして、駅西地区に再開発ビルが完成した。名称は「ユウナル東海」。建物としては一体だが、形状としては南側の住宅棟と北側の文化施設に分かれる。住宅棟は16階建て、106戸の分譲住宅はすでに完売し、引渡しも終わっている。今回完成したのは北側の文化施設、「東海市芸術劇場」の部分。1025席の大ホールを中心に、274席の多目的ホールと交流広場等からなり、交流広場には杉本健吉画伯の陶板が飾られている。また、大ホールには名古屋の御園座からいただいた杉本画伯による3つの丸い文様が描かれた緞帳が吊り下げられた。
周辺に配される店舗やラスパ太田川への連絡通路、それから駅につながる駅西広場はまだ工事中だったが、10月に完成すると、10月4日にはオープニング祝祭コンサートが開かれる予定だ。また、日本福祉大学へ続く30m歩道へつながる歩道橋の工事も行われており、それらが完成すると太田川駅西周辺は一体的な地域の交流拠点となる。あと少し、最終完成が楽しみだ。
藻谷浩介はその後、太田川駅を訪れただろうか。これを維持していくのが大変と言うだろうか。鉄鋼の街・東海市もようやくその財政力にふさわしい街の顔を持つに至った。