愛知県営住宅めぐり-最も新しい住宅と最も古い住宅

 愛知県には約300団地、6万戸の県営住宅がある。このうち名古屋市内にあるいくつかの住宅を見て回った。

Nec_0009 最初は県営紅梅住宅。この3月に竣工し、4月から入居開始をした5・6階建て32戸の新築住宅だ。環境共生に配慮し、屋上緑化や雨水貯留槽の設置、駐車場の緑化等を行っている。また、1階の一角には集会所が整備され、その前面にはウッドデッキが設置されており、こぢんまりとしているが、明るく魅力的な住宅だ。

 ここには以前、昭和25年竣工、RC造4階建ての住宅が建設されていた。昭和25年と言えば公営住宅法が施行された年で、愛知県営住宅のうち最古の住宅だった。従前の住宅を見たことがあるが、豊かな木々に囲まれた年季の入った建物は、景観的にも周囲に溶け込んだ感じがした。

 だが、いざ建替となると、周辺住民から「県営住宅の住民が高齢化しており、今までは落ち葉清掃などを地域で協力してやってきたが、建て替えるのならば地域住民に迷惑がかからないよう、樹木の伐採等をお願いしたい」という要望が寄せられた。このため、建替後はかなり樹木を間引いたが、それでも敷地のコーナーには従前からあった桜などが残されている。

Nec_0018 紅梅住宅に続いて雁道住宅を見に行く。昭和26年竣工で、紅梅住宅が建て替えられたので、今はこちらが愛知県営で最古の住宅だ。RC造4階建て48戸。中庭を囲んで24戸ずつ2棟が並んでいる。庭にはブロック造りの各戸収納庫が並ぶ。住戸前に伸びるシュロの木が目を惹く。住戸南面に人研ぎの洗面台が据え付けられている。

 雁道住宅は敷地の関係で建替えもままならず、当面は存続する予定だが、新規募集は停止し、耐用年数経過後は除却予定となっている。

 二つの住宅を続けて見学し、愛知県営最古と最新の住宅だということに気付いた。続いて建替や改修工事等を予定している住宅をいくつか見学したので紹介したい。

 まず南区の三吉住宅。昭和53年竣工の4階建て2棟115戸の住宅で、近々エレベーター設置工事を行う予定となっている。シンプルな機能主義的デザインはこの当時の流行か。

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 続いて港区の千年住宅。こちらは平成8年に3K住戸に1室増築する工事を行っている。昭和50年代末から平成7年頃にかけて、こうした工事が行われてきたが、元の住宅は昭和30~40年代に建設されており、そろそろ建替え時期を迎えている。

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 途中で名古屋市営宝生荘に寄る。外付けPCフレームによる耐震改修が行われている。フレーム設置により陽当たりが懸念されるが、バルコニーは改修の結果広くなっており、住民からの苦情はほとんどなかったと聞いている。

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 続いて中川区の万場東住宅。2つの住棟をL字型につないでいる。当然、一つは南北軸。昭和54年建設だが、当時の住宅には南北軸に配置した住棟が多い。少しでも多くの戸数を建設したいという要求があったのだろうか。

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Nec_0045 続いて中川住宅に向かう。こちらは昭和47年から50年にかけて建設された住宅で3街区7棟に分けて、全947戸が並ぶ大規模団地だ。中でも北東角にある2棟はツインコリダー形式で、中庭は自転車置場等になっている。ツインコリダー棟の西には南北軸住棟、さらに南側に南面住棟があって、広いオープンスペースを囲んでいる。また別の街区にはL字型2棟で四角に囲んだものや、鋭角L字住棟を2棟並べた街区もあり、バラエティに富んでいる。この結果、伸び伸びとしたオープンスペースと変化のある景観が見られる。

 ツインコリダーと言えば、2対のツインコリダーを北側だけ斜めにつないで「介」の字状になった高御堂住宅(一宮市)もあり、またスターハウス型の住棟も平針住宅(天白区)や松ヶ丘住宅(瀬戸市)などに残っている。

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 愛知県営住宅は、バリアフリーの観点から昭和40年代に建設された中層階段室型住棟が並ぶ団地を優先的に、順次建替えが進められている。ツインコリダー型はエレベーターも設置された高層住棟が多いが、スターハウス型は中層階段室型なので、いつまでこのままの形で残るかは定かでない。