松本市中町・蔵造り通
このところ恒例となった車山高原避暑旅行は、少し趣向を変えて、中央道・諏訪ICを通り過ぎ、長坂ICから国道141号を北上。泉郷や清里、野辺山を通って松原湖から八ヶ岳に向かい、稲子湯からスタート。秘湯の一つに挙げられる温泉は、小さな内湯に石を積み上げた仕切りをはさんで夫婦二人きり。のんびり湯船に浸かり、家から持参した調理パンを食べる。
麦草峠で時間をつぶし、夕方に車山高原に入る。暑かった名古屋を脱し、涼しさを満喫。「今年は例年よりも涼しく、7月始めまでストーブを使っていた」というオーナーの言葉がうらやましい。信じられない。地球温暖化はどこに行った!
翌朝、霧ヶ峰から八島湿原に向かい、涼風の中をしばし散策。ニッコウキスゲはもうほとんど終わり、ヤナギランのきれいな赤紫の花房が群生して緑の高原を彩っている。足下にはハクサンフウロやツリガネニンジン、ノアザミ、キンバイソウ。シシウドやチダケサシの白い花が目の前を遮り、ウグイスが鳴き交わす。
美ヶ原高原美術館で食事を取り、須栗渓谷を通って、美ヶ原の西側まで回り、聳えるパラボラアンテナをながめる。2000mの高地はさすがに涼しい。いつまででもいたくなるが、そうもいかずそろそろ帰途へ。帰りに松本市へ寄る。
まずは開智学校。明治9年(1876年)築の擬洋風建築物は、唐破風に天使が舞い、水色のベランダ手すり壁に白い雲がまぶしい。この明るさが爽やかな気候によく似合う。続いてこの日お目当ての中町商店街に向かう。
中町の中ほどにある中町・蔵シック館は、明治21年に建築された大禮酒造の建物を移築・復元したもので、通りに面して井戸のある広場と土蔵造りの喫茶室が整備され、母屋は広場を抱えて少し下がって整備されている。母屋の正面は黒壁に杉玉が下がり地味な雰囲気だが、妻面は白壁になまこ壁がめだつシックな外観。中に入ると豪壮な木組みが目を見張る。きれいに手入れされた中庭がよく見える喫茶室でまずは一服。
松本市は街なみ環境整備事業による地区整備に積極的に取り組んでおり、現在も3地区で事業実施中。中町地区は昭和63年から13年にかけて事業を実施し、既に完了している。中町・蔵シック館は地区のまちづくり拠点施設として整備されたもので、移築・復元等に国費が投入されている他、公衆トイレの整備や電線地中化、広場整備等も行われている。また、市のまちなみ修景事業による民間建築物のファサード改修補助(補助率2/3、300万円以内)も行われており、多くの建物で修景整備が行われ、特徴ある景観を形成している。
大橋通まで抜けた交差点には井戸のあるポケットパーク。そこから見返す景観もなかなか風情がある。ただし、ウィンドーショッピングを重ねた妻が言うには、なぜかアジアン小物の店や高価な古美術・民芸店などが多く、松本らしい土産物や食料品店などが少ないのが不満とのこと。元々は酒造業や呉服問屋などが多かったようだが、今は松本駅と松本城との間にあって、必ずしも観光客だけを相手にするのではない、個性的な店舗の並ぶ商店街をめざしているのだろうか。松本城などとの連携をねらい、市内循環バス・タウンスニーカーの運行や無料貸自転車・すいすいタウンを実施しているのも面白い。
妻の足がなかなか進まないので、一人でまちを歩き回ることにする。なまこ壁に挟まれた狭い路地を入っていくと、老朽化した小公園に面して中町神明宮。年季の入った鳥居が雰囲気を醸している。女鳥羽川沿いに戻り一ツ橋を渡ると、川向かいに立派な建物がそびえる。旧松本市役所跡に建設された市営上土住宅。1階は空き店舗になっていた。そのまま進むと、絵地図に「大正ロマンの街」と書かれた下町会館と東門の井戸がある。このあたりにも土蔵造りや雰囲気のある古い民家・商家がいくつもみられる。道を巡って戻ってくると、辰巳の庭公園。ここにも井戸が整備され、家族連れが涼を取っている。さらに道を進むと、なわて通り商店街にいたる。
松本城から下る大名町通りが女鳥羽川を渡る千歳橋(かつては大手橋と言っていた)から東の旧松本市役所にかけてのなわて通りは、大正期から戦前にかけて大層にぎわったようだが、女鳥羽川の氾濫等もあり次第に活気を失っていた。平成に入り女鳥羽川整備事業計画が策定され、再整備が政争の的になった時期もあったようだが、平成10年から整備事業が始まり13年に新店舗が完成。今のなわて通り商店街が再生する。「かえる大明神」を祀り、カエルをイメージキャラクターに新しい路地商店街としてがんばっている。妻と合流し、明治10年創業という蕎麦屋「弁天本店」で食事をし、サンドイッチを買って帰路につくことにした。
今日も暑い。標高1500~2000mの車山高原の涼しさ、標高800mの松本の清々しさがなつかしい。そして松本の街は思った以上に元気だった。いいなあ。名古屋は今日もむちゃくちゃ暑くて元気も出ないんですけど・・・。
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