城下町・犬山・まち歩き

 国宝・犬山城のお膝元の城下町に高層のビジネスホテル建設騒動が持ち上がり、犬山市に景観条例ができたのが平成5年。平成6年からの2年間、この街の景観まちづくりに多少とも関わったことがあったが(ほとんど何もできなかったが)、地元(市・住民)の努力によるその後の変化には目を見張るものがある。週末、妻が「どこかへ行こうよ」というので、ガソリンの高騰もあり、尾張パークウェイの無料化もあったので、近場の犬山を久しぶりに訪れることにした。

Imgp5934 わが家から車で30分。尾張パークウェイを快適に飛ばすと、あっという間に木曽川河畔に出る。犬山城を眼前に眺めながら、名鉄犬山ホテル横の坂を上るとすぐに城前の広場に出る。前は体育館前の空地が駐車場になっていたが、今はきれいに整備され車を駐めることができず、有料のキャッスルパーキングへ回る。時間無制限で200円なら安いし、このいくらかでも景観整備費に回るのであれば、協力しなければと思う。

 それにしても暑い。お城前の本町通りを下っていくが、相変わらず地元の車がひっきりなしに通る。通りの東側にこぎれいな広場が整備されていた。「大手門いこいの広場」。板土塀に囲まれた一角に、芝が張られ、四阿と大手門が建てられている。誰もいない。この暑さだし。しばらく先の左手に民家を活用したまちの駅「しみんてい」がある。NPO法人犬山市民活動支援センターの会。HPを見るとさまざまな市民活動に年間100万円程度の助成を行うとともに、活動の場の提供などの支援を行っている団体らしい。最近の犬山の市民活動の盛り上がりを象徴する団体ということか。私はただの無料休憩所かと思って、トイレを借りて出て来た。 Imgp5881

 しばらく行くと「FM84.5」の幟。通りの西側、民家の中で、愛知北エフエムの生放送をしていた。軒下に「犬山まちづくり株式会社 弐番屋」の看板がある。平成12年にできた犬山市中心市街地活性化基本計画「城下町新生計画」に基づき設立されたTMOで、市と商工会議所等が出資して作った第3セクターのまちづくり会社。「弐番屋」はこの会社が展開するSHOP事業の店舗で、愛知北エフエム放送(株)が入っている民家が1号館。昨秋には2号館が南側数軒先にオープンした。このまちづくり会社は駅西パーキングの経営の他、チャレンジショップや空店舗活用事業などを実施している。

 愛知北エフエムの南隣が井上邸。井上印刷の看板が掲げられている。登録有形文化財指定。この三叉路の周りには、他にも山田五平餅店やなつかしやなど、古い民家を活用した店舗が多く集まっている。若い女性を相手にする親父店主の姿が見られ、まあいいことかなと。 Imgp5898

 この交差点を東に向かった。三井邸の立派な土蔵と美しい格子窓の外観もさることながら、景観に配慮した新しい建物もいくつか目に入る。また、材忠邸や寅屋などの古い建物も健在。道路がカギ状に曲がった余坂の木戸に面して、ぎゃらりぃ木屋がある。ちょうど藍染作品の展示をしていて妻がつかまった。扇風機にふかれてしばしの涼を楽しんでいると、麦茶を出していただいた。申し訳ありません。木戸跡の先に「余遊亭」という名前のまちづくり拠点施設がある。当日は子どもたちが中庭に集まって、何かの作品づくりをしていた。こうした見通しのよい明るい施設がまちかどにあるのは、まちの活気の表出という意味で効果がある。おしゃれだし。

 道を戻って、寺内町の石畳を南に下っていく。道に面して間口は狭いながらおしゃれな家が見られる。景観まちづくりが進められる中で、市民の意識がこうした形で表れていることを嬉しく思う。南北の道を抜け、寺内町通りを西に戻る。お寺の土塀が目立つ。鍛冶屋町を南に下り、駅前通りを西に向かう。本町通りの入り口東角に目立つ大きなお屋敷が真野邸。本町交差点の南に並ぶ3階建てのビルは昭和40年代初頭に下本町防災建築街区造成事業で建設されたもの。

Imgp5915 本町通りをお城に向かって北上すると右手に、中本町まちづくり拠点施設「どんでん館」。城下に最近整備されたいくつかの施設と同様、街なみ環境整備事業で整備されたもので、山車蔵に似せた近代的なファサードの中に、3台の山車が展示され、音と照明の演出により、早朝から夕焼け、月が昇る夜までの祭りの日の1日を感じさせてくれる。こぢんまりとした展示ながら良質。和室でお茶のサービスもあり、なかなかよかった。 Imgp5925

 この界隈も古い民家を生かした店舗が多い。その中に、むくり屋根がめだつ上品な商家がある。登録有形文化財旧磯部家住宅。土産物にばかり目を向けていると通り抜けてしまいそうな外観だが、入館無料で非常に充実した保存がされている。入り口の土間・板の間から番台、清浄とした仏間・座敷。紅殻に塗られた渡り廊下・中庭を経て、裏座敷、土蔵、奥土蔵、物置。旧呉服商・柏屋として幕末慶応年間に建築され、土蔵の類は明治初期の建築。その後、製茶・販売業に転じ、倉庫として利用されていたものを、市が譲り受け、平成16年から17年にかけて復元改修を行い、公開された。 Imgp5933

 寺内町通りまで戻る。北東に遠藤邸。南東の民家もよく整備されている。通りを西に抜けて帰りは大本町通りを北上する。比較的広い幅員にインターロッキング舗装の通りは、商家中心の本町通りとはだいぶ様相が異なる。昔は武家町だったと聞くが、今はポツポツと長屋も残る住宅街となっている。遮蔽物がなく直射日光を浴びてすっかり暑さに参ってしまった。犬山北小学校の修景された板塀をぐるっと回って、ようよう駐車場にたどり着く。

 久しぶりに訪れた犬山の城下町は、思っていた以上に整備され、訪問者もそこそこ賑わい、いい感じ。15年近く前に書いた「犬山北のまちづくり」のHPを久しぶりに読み返したら、「50年100年続くまちづくりをしよう」と書かれていた。今度はいつ訪れようか。その時にはまたどう変化しているだろうか。

 マイフォトもごらんください。

(参考)

犬山市の中心市街地 【中心市街地すまい研究会】

犬山北のまちづくり 【まちづくり・あれこれ】