高蔵寺ニュータウンについて(その2)

 「高蔵寺ニュータウンについて(その1)」から続く。

 2016年3月に「高蔵寺リ・ニュータウン計画」が策定・公表された。計画期間は2025年までの10年間。「ほっとできるふるさとでありながら、新たな価値を提供し続ける“まち”であり続けること」(リ・ニュータウン)を目指すとして、7つの基本理念を掲げている。
① 成熟した資産の継承
② 公共施設・生活利便施設の集約化とネットワークの構築
③ 暮らしと仕事の多様性の確保
④ 住民・事業者・市の協働の推進
⑤ 持続可能な都市経営の仕組みの構築
高蔵寺ニュータウンを核とした周辺・広域との連携強化
⑦ まちの新たなブランド力の創造と発信

 また、人口目標として2025年時点で48,000人という数字が掲げられている。この確たる算出根拠は示されていないが、75歳以上の高齢者が居住する世帯が子育て世帯に入れ替われば、目標はほぼ達成できる数値のように思われる。
 リ・ニュータウン計画では7つの先導的な主要プロジェクトを定めている。

○先行プロジェクト(2年以内に着手)
・旧小学校施設(旧藤山台東小学校)を活用した多世代交流拠点の整備
・民間活力を導入したJR高蔵寺駅周辺の再整備
○展開プロジェクト(先行プロジェクトの効果を検証して展開を図る)
・交通拠点をつなぐ快適移動ネットワークの構築
・センター地区の商業空間の魅力向上と公共サービスの充実
・スマートウェルネスを目指した団地再生の推進
○情報発信プロジェクト
ニュータウン・プロモーション
ニュータウンまるごとミュージアム

 さらに、以下の5つの施策分野について具体的な取組を進めることとしている。
① 住宅・土地の流通促進と良好な環境の保全・創造
② 身近な買い物環境の整備と多様な移動手段の確保
③ 多世代の共生・交流と子育て・医療・福祉の安心の向上
④ 既存資産(ストック)の有効活用による多様な活動の促進
高蔵寺ニュータウンを超えた広域的なまちづくりの推進
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 先行プロジェクトの中でも先立って進められてきたのが旧小学校施設を活用した多世代交流拠点の整備である。藤山台中学校区旧小学校施設活用検討懇談会、旧藤山台小学校施設の改修設計に係るワークショップの開催などを経て、2016年から設計・工事が進められ、2018年4月に「グルッポふじとう(高蔵寺まなびと交流センター)」としてオープンした。施設内には、図書館、児童館、コミュニティカフェ地域包括支援センター、こどもとまちのサポートセンターと会議室・体育館がある。これらの施設は2017年10月に設立された第3セクター高蔵寺まちづくり(株)」が指定管理により管理運営をしている。また、この会社では、ニュータウンのエリアマネジメントを担う組織として、空き家等の不動産の流通促進なども実施している。
 なお、市では、もう一つの廃校である西藤山台小学校施設についても、2017年にサウンディング型市場調査を実施するなど、民間事業者の公募に向けた準備を進めている。
 展開プロジェクトのうち「快適移動ネットワークの構築」については、市の予定を上回って、様々な主体によりニュータウンを舞台とした取組が進められている。愛知県では平成28年度自動走行実証推進事業の実証エリアの一つとして高蔵寺ニュータウンを選定し、2016年10月と2018年2月には自動運転と試乗した市民を対象としたモニター調査が行われた。また、春日井市でも名古屋大学と連携し、ニュータウン内の一般市民の自宅付近からサンマルシェまでを自動運転車両で往復する自動運転デマンド交通実証実験や電動ゴルフカートを用いたゆっくり自動運転🄬実証実験を実施した。さらに2017年11月にはトヨタ自動車と連携し、ニュータウン内のUR集会所とサンマルシェの間でパーソナルモビリティの有料利用の可能性を検証する歩行支援モビリティサービス実証実験も行っている。
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 また、2017年には「高蔵寺ニュータウン住宅流通促進協議会」の事業として、DIYリエーターChikoさん指導の下、UR賃貸住宅を借り上げ、公募市民11名によるDIYワークショップを実施。完成後の住宅をDIYモデルルームとして公開した。今年度は引き続き、高蔵寺まちづくり(株)がDIYワークショップを開催するとともに、DIYをサポートするボランティア組織の立ち上げや戸建てのDIY併用型リノベーション住宅の賃貸事業等を始めている。
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 展開プロジェクト「スマートウェルネスを目指した団地再生の推進」については、愛知県が地域包括ケア団地モデル構想を策定。高森台に残る県有地を中心に、福祉施設やサービス付き高齢者住宅等の誘致を進めている。またURでも高森台団地における団地再生事業に加え、中層階段室型住棟へのエレベーターの設置などを進めている。また、春日井市によるスマートフォンを利用した認知症高齢者の徘徊対策「オレンジセーフティネット」の試行や、地域の助け合いにより在宅医療・介護のための駐車場を確保する「ハートフルパーキング登録制度」など、それぞれの立場からの取組が進められている。
 計画に定めたこれらのプロジェクトや施策を着実に進めていくために、春日井市では、公募市民を含めた「高蔵寺リ・ニュータウン推進会議」を設置し、実施状況の確認・評価・検証等を実施しているところである。
 「高蔵寺ニュータウンについて(その3)」に続く。