港北ニュータウンと「中川地区」まち歩き

 港北ニュータウンで「ニュータウン人・縁卓会議」が開催された。私は高蔵寺ニュータウンの現状を報告するために参加したが、会議前の午前中、港北ニュータウンのまち歩きツアーがあったので、まずはそれに参加した。
 横浜市営地下鉄「センター北」駅の直上にある「ショッピングタウンあいたい」の5階コミュニティルームで、まち歩きのコースや主旨の説明があった。説明いただいたのはNPO法人「ぐるっと緑道」の塩入理事長。2019年3月に横浜市都筑区が策定した「緑道再整備ガイドブック」の抜粋コピーを資料に、ざっと港北ニュータウンの特徴などを説明された。
 午後の会議の中でも説明があったが、港北ニュータウンは昭和40(1965)年に横浜市六大事業の一つに位置づけられ、日本住宅公団により開発が行われた。ちなみに「横浜六大事業」とは、「都心部強化事業」「港北ニュータウン建設事業」「金沢地先埋立事業」「横浜港ベイブリッジ建設事業」「高速道路網建設事業」「高速鉄道(地下鉄)建設事業」の6つ。これらはいずれも建設が完了し、現在の横浜市の都市構造の骨格となっている。
 港北ニュータウン開発の計画的特徴として、「グリーンマトリックスシステム」が挙げられる。これは全面買収方式に比べて緑地やオープンスペースの確保に制約のある土地区画整理事業で開発が進められる中、地区内の緑道を主骨格に、隣接する集合住宅や学校、企業用地などの斜面樹林等の民間の緑を公共の緑と束ねて連続させ、地区全体の空間構成としたことを言う。確かに昨年、一人で「港北ニュータウン」を歩いてきた際にも、緑の多さは魅力的だった。ニュータウン全体をぐるっと囲む緑道網に加え、ニュータウンの中央部を東西に横断する形で早渕川が流れ、また地区の北と南の端には、農業専用地区が設けられている。
 ちなみに、緑道は開発前の谷戸(谷地形)に沿って設けられ、緑道の両側に接する部分にある民間の保全林や植栽林は、保存緑地として土地所有者と横浜市で協定を結び、税制上の優遇措置などがとられている。また、緑道は主要な公園を環状に結ぶとともに、駅や公共施設と緑道とを自動車歩行者専用道路が結び、安全な歩行者ネットワークが形成されている。
 今回は、昨年と同様、「センター北」駅から北へ伸びる歩行者専用道を進み、緑道に突き当たってからは、前回は東へ進んだが、今回は西へ地下鉄ブルーライン「中川」駅まで歩く。駅直上の「ショッピングセンターあいたい」が開業したのが1998年。観覧車もある「モザイクモール港北」が開業したのは2000年で、その他の商業施設もまだ20年以内の比較的新しい商業地区である。また、大型商業施設の周辺は、間口が狭く奥行きの長いバーコード換地が多く、ペンシルビルも多いと言っていた。

f:id:Toshi-shi:20190922105719j:plain
「センター北」駅前
 前回同様、歩行者専用道路を歩き、陸橋で幹線道路を越え、民間ディベロッパーが分譲したと思しき住宅地を抜けると、右手に神社があり、緑道に入っていく。この緑道を「くさぶえのみち」と言う。中心にせせらぎが流れ、その両側をウォーキングする人、ジョギングする人が通り過ぎていく。せせらぎの上流へ向かう。途中、幹線道路である「区役所通り」の下をくぐるトンネルの形が楽しい。
f:id:Toshi-shi:20190922112055j:plain
くさぶえのみち
 区画整理のゆえか、墓地があったり、農地が残っていたりする。農地には「防災協力農地」の立て札が立っていた。緑道の北側に1列、戸建て住宅が並ぶが、かつては茅葺屋根の民家が並んでいたという。そうして歩いているうちに、山崎公園に到着した。
f:id:Toshi-shi:20190922113137j:plain
防災協力農地
f:id:Toshi-shi:20190922112419j:plain
茅葺き屋根の民家が並んでいた
 幹線道路の下をくぐると、ちょうど池の掃除をしていた。釣り人も多くいる。広い円形の芝生広場もあり、春には周辺の桜が満開の花をつけると言う。プールへと向かう緩い坂道の脇にせせらぎの源流がある。井戸水をポンプで汲み上げて流しているそうだ。プールと手前の公園はガウディ風のモザイクタイル張りになっている。さらにその奥では里山保全工事が進められていた。
f:id:Toshi-shi:20190922113721j:plain
山崎公園
f:id:Toshi-shi:20190922114119j:plain
せせらぎの源流
 その先の中川西小学校の南の通路はかつては桜のトンネルだったが、今は南側の常緑樹が育ち過ぎてしまい、北側の桜も高木となってしまった。そこで常緑樹の伐採なども行われていると言う。公園を抜けたところで左側の視界が開ける。すぐ下に広がる農地ではキウイを作っているとのこと。その先には早渕川沿いに緑が広がっている。そこから北へ上がる道は「富士見のこみち」と呼ばれている。左手にハウスクエア横浜の大きな建物を見つつ北上すると、右手に緑道に面して噴水池もある、緑豊かで気持ちよさそうなマンションがある。「港北ガーデンヒルズ」。三井不動産等により1990~91年に完成した603戸の大規模マンションで、分譲当時はかなりの人気だったという。
f:id:Toshi-shi:20190922115530j:plain
港北ガーデンヒルズの緑
 にしっ子通りと名付けられた道を進んでいくと、中川駅前の「中川歩道橋」に着く。鋳物風骨組みのガラス屋根が特徴的。なぜかローマ風のオベリスクも数本並んでいる。中川歩道橋から駅へ降りる階段の蹴上部分に絵が描かれている。これはNPO法人「ぐるっと緑道」などによる中川ルネッサンスプロジェクト(NRP)の一環として取り組まれたもの。NRPの表示がある案内板も置かれている。
f:id:Toshi-shi:20190922120238j:plain
中川歩道橋
f:id:Toshi-shi:20190922120321j:plain
案内板
 さらに東京都市大学へ向かう中川駅前商業地区内の中央遊歩道「花と香りのみち」には、花壇やベンチなどが多く置かれている。これらも中川ルネッサンスプロジェクトの仕事。これらの活動には「ヨコハマ市民まち普請事業」の助成金が利用されている。
f:id:Toshi-shi:20190922121625j:plain
「花と香りのみち」の花壇
 「センター北」駅から「中川」駅まで、歩いてみればわずかな距離だが、実に緑が豊富で、港北ニュータウンの良さを感じることができた。また多くの住民によって愛されていることも。うらやましいと言うしかない。