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「空き家」が蝕む日本

すまい・まちづくりノート

 日本で住宅インスペクションを初めて業として始めた長嶋氏のことは、数年前から注目していた。最近は国交省が設置した研究会の委員を務めるなど活発に活動をされている。タイトルから当然、空き家問題に関する本だと思った。長嶋氏らしい空き家対策の提言でもあるかと期待したのだが・・・。
 第1章は若い頃経験した不動産業界の不誠実な実態披露から始まる。そして第2章が「空き家」問題。空き家課税(一定期間空き家になっている住宅を課税)や住宅総量目安(世帯や住宅ストックの状況等から必要な住宅新築戸数目標)の設定などは大胆で面白いが、簡単には実現しないだろう。それでも国交省の「中古住宅市場活性化ランドテーブル」に参加し、中古住宅の具体的な評価スキームについて提言をしてきたと言う。中古住宅の価値がきちんと評価され流通する市場の整備は重要だ。
 そして第3章以降は次第に「空き家問題」から離れていく。第3章は住宅の寿命。これは中古住宅の適切な評価と関係がある。第4章では「新築持ち家」偏重の住宅政策を批判し、賃貸住宅の家賃補助を提案する。第5章は不動産仲介業の物件情報囲い込みへの批判、第6章は、「小規模分散型」再生可能エネルギーを軸とした地方分権社会への提言、そして第7章は海外への不動産投資について。なかでもフィリピンをお勧めするのだが、筆者が最近セブ島でのリゾート開発に関わっているそうで、本書全体が、筆者自身が最近経験したことや考えたことを書き散らかしたという感じがする。
 改めて裏表紙のキャッチコピーを読めば、「『空き家時代』への処方箋を示す」と書かれ、「空き家」はこれからの住宅問題も象徴する言葉の一つとして使われているに過ぎない。何だ、そうだったのか。それでも、一般向けにわかりやすくこれからの住宅問題を語っている。そしてその多くは方向は間違ってはいない。一般人が読んで損になる本ではない。

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)

(036)「空き家」が蝕む日本 (ポプラ新書)

●造ったそばから価値が毀損する住宅を買わせていては、住宅ローンという負債が個人に残るだけ。新築住宅販売の売上や利益は業界側のものですが、引渡し後の中古住宅の価値は個人のものです。これは国債発行による公共工事と構図としては似ていて、負債が個人に集中するぶん、たちが悪いのです。(P66)
●そう遠くない未来に、中古住宅の新しい評価の枠組みは必ず創られるでしょう。そして、詳細は別としても、その形はだいたい決まっているようなものです。(P77)
●賃貸住宅の居住者に、まともな「家賃補助」がないのは、先進国では日本くらいなものです。・・・たとえばイギリスでは、ざっくりいって全世帯の20%近く、借家世帯の50%の世帯に対して、6万円程度が支給されています。・・・これは日本でもできるはずです。「その財源はどこにあるのか?」と問われそうですが、新規に見つける必要はありません。「家賃補助」の予算は、住宅予算のうち新築持ち家に偏りすぎているバランスを修正すればよいだけです。(P102)
再生可能エネルギーは「小規模分散型」にするのがポイントです。このことによって基礎自治体レベルで、エネルギーの自立が図れ、大規模電力会社からエネルギーを買う必要がなくなります。新分野での地域雇用も生まれます。これまでエネルギーを買うために地域の外に出ていたお金が外に出ていかず、地域内をぐるぐる還流するのです。・・・ドイツでは、農業や手工業者など地域で暮らす人々がこのことに気づいたからこそ、あちこちで取り組みが始まっているわけです。(P135)