読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

2020年マンション大崩壊

すまい・まちづくりノート

 前著「空き家問題」は、空家対策特別措置法の制定等もあって、大きなヒットになった。また内容も実務的でわかりやすく面白かった。その筆者が今度はマンションの問題について取り上げた。タイトルの2020年とは東京五輪の開催される時期だ。東京五輪後、湾岸タワーマンションなど首都圏のマンションはどうなっていくのか。そして郊外や地方で既に発生しているマンションの空き家は今後どうすればいいのか。具体的な処方箋も添えて、マンション問題に対して警鐘を鳴らす。
 最初に、地方の戸建て空家だけでなく、首都圏のマンションにも多くの空き家が発生していることを統計データにより示す。その上で、管理費・修繕積立金の滞納、住民の高齢化や相続、管理組合の機能不全、放置空き家の発生など、マンションが抱えるさまざまな問題を具体的に示していく。そもそもマンションは管理組合を中心とした一つの共同体であり、それゆえに合意形成は簡単ではなく、改善や建替えはほとんど困難である。
 第5章では、東京の湾岸地区で林立するタワーマンションについて警鐘を鳴らす。中国人が高層階を購入し、管理組合の総会を中国語でやれと要求したという笑えない話も載せられているが、投資目的で取得した富裕な所有者と、居住を目的とする中堅所得者が共有するマンションの将来は非常に厳しいものが想像される。さらに第6章ではマンションの資産価値について考える。簡単に言って、ブランドエリア以外では建物しか価値はなく、それも漸次下落していくというのが結論。
 ではどうすればいいのか。ここで筆者はいくつか興味深い処方箋を提案する。外国人旅行者向けに空き住戸を短期間リースするエア・ビ・エン・ビー(Aiebnb)、中古マンション住戸買取再販事業減築と介護施設やビジネスホテル等への建物用途の変更、簡易宿泊所(POD)への変更も興味深い。また、国や自治体が中心となったマンション整理機構(仮称)の設立と買上げという提案もある。これを民間ベースでやれるように作ったのが、昨年成立したマンション建替円滑化法だと思うが、結局、どこかが少しずつでも買い取っていかないと、マンションの整理は難しい。
 一方で、中古流通の活性化に向けて、中古住宅認定制度などの提案もある。いずれにせよ、いつまでも新築中心で進めていくのは無理がある。既に国の住宅政策はストック重視の方向に舵を切っているが、国民意識が変わるのはまだしばらくかかるのかもしれない。本書がそうした意識改善の一助となればいい。

2020年マンション大崩壊 (文春新書)

2020年マンション大崩壊 (文春新書)

●管理費・修繕積立金の滞納が多いマンションほど老朽化が激しく、市場における流通性に欠ける物件が多くなります。そうした住戸ほど誰も相続したがらない。相続を放棄する、相続をしても住戸を放置し、管理費・修繕費積立金の支払いを免れ続ける。売却しても全額の回収には程遠く、そもそも売却すら叶わない、こんな物件が今後急速に増加してくる可能性が高くなっているのです。/こうした状況の放置は、マンションという共同体の崩壊につながり、やがては多くのマンションがスラム化への道を歩むことになるのです。(P106)

●戸建て住宅であれば、解体更地化することで家屋として滅失させることは可能です。・・・ところが・・・マンションは一人の区分所有者の決断では何一つ解決できない共同体である・・・共同体は区分所有者に共通の利益があるときは共同体としての機能を発揮しますが、共通の利益どころか、不動産あるいは財産としての損失が確信されるようになると、早めにその事態に気付いた区分所有者は、この権利を他に譲ることによって「逃げる」ことを考え、逃げることが遅れた区分所有者はあきらめてそのまま朽ち果てるまで放置する道を選ぶようになります。(P127)

●現在、この湾岸タワーマンションを取得する人の多くは、東京五輪終了までに「売り抜ける」作戦だといいます。・・・しかし投資などというものは、所詮、他人と同じ行動をして利が出るものは少ないのです。五輪をはさんで一斉に売りに出されるような事態が生じたとき、このマンション群はどのようなことになるのでしょうか。(P159)

●マンションが資産価値を維持できるのは、都心部のごく限られたエリアであることがわかります。経年とともに劣化する建物の、資産価値を補って余りある土地としてのブランドを主張できるエリアであれば、資産価値は保たれていくのです。/いっぽうで、建物価値としてしか自らの不動産価値を主張できない一般のマンションは、残念ながら建物価値の減少から逃れることはできません。つぎつぎと建設されていく新しいマンションに、その地位を奪われ続けていく立場にあるのです。(P188)

●住宅について、今後は必ずしも所有権に拘る必要性は薄れてくるように思われます。住宅はそのエリアが好きで一生住み続けたい、そのためのお金も十分にある・・・という方は所有権を取得し、一生住み続ければよい。いっぽうで、今後の時代の変化に対応していかなければならない・・・自分の来し方行く末がまだはっきりとイメージできない人は、無理に住宅を取得せず、賃貸住宅で暮らしていく。そんな柔軟な生き方があってもよいのかもしれません。また、住宅がだぶついている日本にあって、住宅が不足して買い時を失するというような事象は、到底起こりえないことも付け加えておきます。/この所有権の呪縛からの解放が、また新たなる、魅力的な住宅の創造につながるような気がしています。(P242)