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愛知県農業大学校 追進館

建築アルバム

 愛知県岡崎市の東部、美合町に県が運営する農業大学校がある。昭和9年に開校され、この地域で多くの農業の担い手を育成してきた。愛知県は全国有数の農業県・畜産県でもある。現在でも全寮制の農学科では1学年100名弱の学生が2年間に渡り、農業・畜産に関する実務技術や経営ノウハウ等を学んでいる。また、農業従事者を対象とした研修なども行われ、毎週水曜日には農畜産物の実習販売を行うなど、地域でも親しまれている施設である。
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 東側から正門を入ってすぐの左側に古さびた木造の講堂が建っている。追進館である。開校の翌年、昭和10年に建設されて以来、講堂として利用され、平成18年に宮崎あおいが主演したNHK朝の連続ドラマ「純情きらり」のロケ地としても使われた。北側の樹木の中にねずみ色に塗られた小振りな玄関が突き出している。
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 屋内に入ると、意外に広い空間が来場者を迎え入れる。数年前に天井が落下したため現在は使用禁止にしているが、それ以外の部分は想像以上にきれいだ。壁側面には斜めにテーパーのついた柱が10本近く並び、柱から伸びる梁は途中で中折れする台形の形状をしている。柱・梁の軸組みの間を白い漆喰の壁と天井で仕上げ、窓下の腰壁は濃い茶色の板張りとなっている。また、明かり取りの高窓の下に合わせて水平にボーダーが走り、妻壁や天井にも濃い茶色のボーダーが回って内観を引き締めている。
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 講堂ステージの左側、二宮尊徳の銅像の脇に小さな小部屋がある。昭和21年昭和天皇がご視察の際に休憩をされた部屋だそうで、天井の四隅に鳳凰を打ち抜いた飾り板が美しい。講堂本体から西側に突き出る下屋の形式になっている。
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 室内はきれいだが、外に出ると外壁などはかなり傷んでいる。褐色に塗られた下見板張りの外壁は修繕すれば何とかなるだろうが、屋根のセメント瓦はどうしたものか。今どきセメント瓦など製造されていないだろう。それでも何とか今の形で残したいものだ。校長先生からは登録文化財にも指定していきたいと強い意気込みを聞いた。十分それだけの価値はある。ぜひ保存していきたい建物の一つだ。