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まちなか戸建

 先日、森本先生の講演をお聞きし、やはり読まずばなるまいとさっそく本書を手に取った。基本的には先日の講演会と同じ流れである。講演の中でも話しておられたが、「2部 まちなか戸建の性能」と「3部 まちなか戸建を支える地域ビルダー」が先日の話にはなかった部分。そして「4部 まちなか戸建とまちなか形成」についても「持続可能な住宅地」に関する考察が本書の後の研究成果として講演会で語られていた。

 内容的には、先日の記事でほとんど書いてしまった感があるが、本書で読んで改めて認識したことの一つが、本書で規定する「ミニ開発」や「まちなか戸建」とは敷地面積100m2未満の狭小敷地に立地する、多くは3階建ての戸建住宅だということ。正直、名古屋の感覚ではありえない規模で、これを良好な住宅地と評価するのはさすがに憚られるという思いがする。4部も東大阪市や八尾市など大阪近郊市を対象に実証的研究成果を報告しており、即、全国に敷衍できるわけではない。

 しかし先生が主張されているのは、地域によって許容される住宅の状況は異なるということで、だからこそ地域ビルダーの成長と可能性に期待している。逆に言えば、敷地の共同化等による再開発マンションが常に善とは限らないということで、敷地の共同化が容易でない現状からすれば、所有と利用が個人の自由に任せられる戸建住宅のメリットを生かした住宅地づくりは当然、専門家も積極的に取り組んでいく必要がある課題だということだ。

 2部では高密低層住宅地にふさわしい戸建住宅とは何かを実験的に建設し検証していく。材料や工法、設計の検討も楽しいが、「解体(分解)性能」がこれからの時代に強く求められることを強調している点が目を惹いた。単に耐久性の高い建材を使用するだけではなく、解体時のリサイクル性等を考慮することが、リフォームの容易さにつながり、環境負荷の低減につながっていく。石膏ボードの分離・リサイクルなど問題は大きいが、今後真剣に検討していくべき課題である。

 本書を通じて、具体的で実証的な研究姿勢が非常に参考になる。理想や定論に固まらず、現場を見て研究し発想することの重要さを改めて感じた。

●専門家の立場からすれば、あまりに許容度が大きすぎて、「悪化」としてしか評価できないような動向も、地域の事情によっては許容される。例えば「まちなか」における「ミニ戸建」に対する受容の度合いは、同じ容積率で開発される「高層マンション」よりも高いという傾向は一般的に観察される。高密度化=居住環境悪化としてしまい、どっちもどっちであると評価してしまうと、この地域ごとに育まれたコントロール機能の過小評価につながる。/居住地ごとに働いているこの機能を読み取り、実際に空間の更新を担当する専門家の役割は大きい。単に法律に則っているかどうかで判断するのではなく、相隣・近隣レベルでの「受容と抑制」の機能に対して十分な配慮を行い、仕事をすることが求められている。(P13)
●戦後わが国における零細戸建持家の発展過程には、いくつかの特徴が見られる。/第1は、住宅の延床面積が着実に増えてきている点である。/第2に住宅の性能(構造・防火・断熱・設備)が着実に向上してきている。/第3は、零細戸建持家が大都市における戸建住宅の容積率増大を主導してきたことである。/第4は空間更新の柔軟性である。/第5に・・・地域ビルダーの成長である。・・・以上のような点を考えると、これら零細戸建持家を「市場の失敗」や「都市計画の失敗」によるあだ花としてとらえるのではなく、都市型住宅の確立に向けた発展途上にあるものと位置づけ、その供給・更新メカニズムを十分に活用して、新しい都市型住宅地像を構築することが急務であると思われる。(P66)
●住宅分野でなにより大切なことは「解体(分解)性能」を高めることである。解体(分解)性能を高めることは、建替時におけるリサイクル性能が高まることにつながるだけではなく、住宅のリフォームを容易にすることにつながる。リフォームの容易さは結果的には住宅の長寿命化につながるのである。/このように考えると、住宅の長寿命化を主張することとあわせて、いたずらに建築物や住宅の堅固さ追求し、解体性能を等閑視することは誤りであるということになる。それは結果的には長寿命化にとってもマイナスとなるからである。(P108)
●筆者等は、このように居住が継続されていく中で違法状態になっているものの、地域的にはそのような住み方が許容されている住宅地の状態を「違法・地域許容建築物群」としてとらえている。(P212)・・・これに対して多くの地域で発生している高層マンション反対運動等では、合法であるにもかかわらず、地域的には受け入れられない状況もみられる。これを「合法・地域不適合建築物群」と呼んでいる。(P225)
●上から規制の網をかぶせたまちづくりではなく、個別の更新主体の申請を原則として、それを誘発し、上手にくみ上げていくという仕組みづくりが、まちなか戸建を核とする住宅地形成に向けての自治体の大きな役割となるであろう。(P239)