人口減少時代の災害救援と復興計画

 仮設住宅の建設が難航している。適当な用地がない、資材が入らない、労働者が確保できないなど、その原因は次第に変化してきている。厚労省の仮設住宅建設に係る補助額は戸当たり250万円程度だが、聞くところによると、今回は寒冷地仕様のための断熱材やエアコンの設置などで1戸当たり400~600万円近くもかかっているらしい。

 仮設住宅の入居期間は原則2年ということだが、これだけの経費をかけて建設したものをすぐに解体してしまうというのももったいない話だ。

 2年で壊してしまう仮設住宅の建設に500万円もかけるのであれば、そのお金をそのまま民間借家の家主に渡すことにすれば空き家を抱える家主も喜ぶ。2年として月20万円。これで入退去の手続きも行政がやってくれるのであれば、家主にとっては万々歳だ。

 現在の災害救助法は、被災地の近くに当面住むことのできる住宅を確保し、雇用の回復など生活再建を図りつつ、基本的には従前に居住していた地域に戻って生活することを前提としている。そうした考え方の下では、被災地域の周辺には借り上げられる住宅は少なく、仮設住宅の建設が必須の選択肢とならざるをえない。

 しかし、今回の災害は全てがこれまでの災害と違う。被災地が従前のように復興することは考えにくい。これは被災の状況というのもあるが、もうひとつの大きな要因が人口減少だ。産業基盤から根こそぎ被災し、ゼロから復興する必要がある中で、住民の年齢は高齢化し人口減少局面にある。それも被災地だけではなく、日本全体が人口減少を始めているのだ。

 これまでは被災していない周辺地域では人口増を続けており、空き家も少なかった。しかし今は日本全国、公営住宅を除いては、多くの空き家が発生している状況なのだ。そう、空き家がもっとも少ない公営住宅で無理やり空き家を確保して被災者の受け入れをしているのだ。まるで笑い話である。

 ここ数年の都市計画の話題は、人口減少時代における都市縮小であり、コンパクトシティであった。戦後から一貫、野放図に拡大し続けてきた日本の土地利用の縁辺部で突如、土地の縮小が発生したのである。これを機に、都市の縮小とコンパクト化を実現すべきではないか。

 現在、既に若い世帯では、妻の実家などを頼りに、雇用のある遠方へ疎開している世帯も多い。今は避難所に身を寄せている世帯であっても、雇用のある都市で空き家もあるならば、若い世帯は早晩、避難所を脱して被災していない、または被災の少なかった都市部への移住を始めるだろう。被災地復興のための建設労働で若い世帯をつなぎとめることもあるだろうが、建設工事が終わればそれまで。どういう産業を興していくかを第一に考えなければ、復興計画はあり得ない。今回求められている復興計画とはすなわち、人口減少時代の日本の産業地図を描く仕事なのだ。

 被災地だけの小さい視野で復興を考えては、復興が成った途端に過疎化が訪れる。誰も住まない街になる恐れすらある。被災者の住む場所を考えるのならば、やはり将来の復興を念頭に置いて考えるべきだ。建設できるところに仮設住宅を建てる。それで本当に後悔しないだろうか。

 幸い、仮設住宅の建設がなかなか進まない。どこにどういう住宅を建てるべきか。今一度よく考えてみる必要があるのではないだろうか。