豊田市が整備し、この4月にフルオープンした「とよたエコフルタウン」の見学に行ってきた。豊田市は2009年に環境モデル都市に指定され、人と環境と技術が融合する「ハイブリッド・シティ」をキーワードに環境先進都市づくりを進めている。2010年には横浜、けいはんな、北九州と並んで、次世代エネルギー・社会システム実証地域の一つに指定され、トヨタ自動車やデンソー、中部電力、東邦ガスなどの地元企業と連携し、様々な実証実験等を展開している。
これまでの取り組みを取りまとめ、市民等に低炭素な暮らしを提案し、啓発する拠点としてオープンしたのが「とよたエコフルタウン」だ。これまでも一部施設は整備・公開されていたが、今春に山間地エリア・中山間地エリア・都市部エリアと整備して、パビリオンにも「発見の森」を付け加えてフルオープンした。都市住宅学会中部支部でガイドツアーに参加する見学会が開催されたので参加した。
自宅からは愛知環状鉄道に乗って新豊田駅で下車。歩いて施設に向ったが、この日はとにかく暑い。駅を出発した時にはカーシェアリング・システム「Ha:mo」のステーションを横目で見て歩き始めたが、市役所にあるステーションを通り過ぎる頃には「いっそ借りて現地へ向かおうか」とステーションの看板をしげしげと見てしまった。残念ながら利用には事前の登録と利用講習の受講が必要ということで利用はかなわなかったが、一人乗りの電気自動車COMSはなかなか魅力的だ。
その後、見学会の中でシステムの説明を聞くことになるが、借りられる乗り物は一人乗りの電気自動車COMSが100台、二人乗りのCOMSが3台、3輪の一人乗り電気自動車i-ROADが4台、そして電動アシスト自転車PASも100台用意されている。利用料はCOMSが10分200円(二人乗りは300円)、その後1分につき20円加算。またPASは約半額で提供されている。現在会員は約2000人。次第にその人数を伸ばしているようだ。
駅から歩いて約15分。ようやく施設に到着。きれいなガーデニングに迎えられるウェルカムガーデンから左側が山間地エリア。その右側、交流広場を囲んで舗道が巡り、奥にハウスメーカー各社によるスマートハウスが展示されている。豊田市産材を利用した「木でつながる家」、ライフステージによって変化する「住み継ぐ家」、環境技術の体験と対応リフォームを展示する「住まいの環境技術総合パビリオン」の3棟がある。ここは中山間地エリアという位置付けだが、その南側には都市の食料生産の展示がされており、菜園の他、食べられる壁面緑化システムや植物工場ユニットなどが設置されている。食べられる壁面には水菜やイチゴがポットの中に植えられ、イチゴは赤い実をつけていた。
通路を通って南側の都市部エリアに渡る。通路と舗道の交差部にはITS技術を利用した交差点確認システム(カメラで通過交通を感知して歩行者等へ注意喚起など)などが設置されている。また通路の西側にもスマートハウスが1棟展示されており、こちらでは「クルマとつながる家」ということで、HEMSで家とクルマをつなぐエネルギー管理を行う仕組みを展示していた。その向かい側には、豊田市産木材で建設された地産地消レストラン「ホガラカ」があり、けっこう賑わっているようだ。
さて、今回の見学会は敷地南側中央に位置する「パビリオン」からスタートする。総合インフォメーションとして、豊田市の環境政策やHEMS、EDMS(地域で電力の需給バランスを調整するシステム。モデル団地としてトヨタホームの東山地区と高橋地区が分譲されている。「トヨタホームのスマートハウス」参照)などを紹介するスマートライフギャラリーと、自然と生物に学ぶものづくりを展示する「発見の森」、エコフルシアターなどで構成されている。「発見の森」は今春オープンした施設で、市内の企業等が最先端の技術を紹介しているが、ものづくりのメッカである豊田市らしい展示となっている。
当日は専任ガイドさんがパビリオン内、エコフルタウン内を約1時間にわたって懇切丁寧に案内してもらった。ここまで紹介してきた施設等に加え、パビリオン北側には水素ステーションがあり、またHa:moのステーションもある。これらを女性ガイドがトヨタ製のパーソナルモビリティ「Winglet」に乗って案内をしてくれる。またガイドの最後には、WingletやCOMSの試乗もさせてもらった。これが一番楽しかったのは言うまでもない。
豊田市では環境モデル都市の指定以降、トヨタ自動車等と積極的に連携し、先進的に環境政策に取り組んでいる。今回見学した「とよたエコフルタウン」の展示やHa:moなどのカーシェアリングだけでなく、スマートハウスへの固定資産税控除も新築の場合は3年間実質無料となる制度とするなど様々な手法でもって独自の環境政策を進めている。「とよたエコフルタウン」はJAから借地して整備しているが、借地期間が切れる7年後には7年後には、これらのエコライフは普通の一般的な技術になっているはず。そんな思いを込めて「ミライのフツーを目指そう」とのキャッチフレーズを掲げている。合併により都市部から山間地まで日本の縮図となった豊田市。その取り組みは日本の未来を先取りしているのだろうか。正直、ここまで先進的に取り組んでいるとは思わなかった。すっかり感心して帰ってきた見学会だった。