トヨタホームのスマートハウス

Img_0025 高校時代の友人がトヨタホームの役員に就任した縁もあって、トヨタホームが豊田市で実施している実証実験住宅を見学する機会を得た。経済産業省の「次世代エネルギー・社会システム実証」の採択地区の一つとして、豊田市を中心に関連企業等で実施する「低炭素都市構築実証プロジェクト」は、2010年度から14年度までの5年間、トヨタホームが分譲販売する実証住宅において入居者のエネルギー利用状況等を計測し最適化を図るとともに、PHV(プラグ・イン・ハイブリッド車)、EV(電気自動車)等を導入して低炭素交通システムの構築を目指すものだ。

 豊田市では今年度から、名鉄豊田駅近くの低炭素社会モデル地区でモデルルームやパビリオンの整備を始めるが、トヨタホームの実証住宅は既に豊田市東山町と高橋町の2地区で6月から分譲住宅の販売を開始し、9月には入居が始まる予定となっている。豊田東山地区の一画に6月末、スマートハウスのモデル棟が完成しており、今回、この住宅を見学させてもらった。

Img_0019 スマートハウスには創エネ・蓄エネ・省エネ・の3つの視点から各種の設備が設置されている。「創エネ」の観点からは、家庭用燃料電池システム「エネファーム」と太陽光発電システムが設置されている。こうして作られた電力は、蓄電池に蓄えられる。温水の形で蓄えるエコキュートや充電スタンドを通して電気のやり取りを行うPHVの蓄電池も「蓄エネ」の一つに挙げられている。さらに「省エネ」では、LED照明などの家電機器における省エネ仕様に加え、家電コントローラにより消費電力の表示等を行い、省エネアドバイスを行う。

Img_0003_2 これらの中核として全体をコントロールしているのがHEMSと呼ばれるマネジメントシステムで、住宅全体のエネルギーの状態を把握・予測し、創エネ・蓄エネの最適化を行う。また各戸のエネルギー状況は地区レベルで集積・把握し、例えば太陽光発電量に応じたエコポイントの発行などにより、生活圏全体での行動最適化をめざすこととしている。さらに、FC(燃料電池)バスやEV、PHVの積極的な導入により低炭素交通システムの構築もめざす。 Img_0021

 地域全体の取組み等については、まだ構想段階だが、住宅内の設備については一部の家電設備を除き一揃い設置されていた。中でもHEMSのコントロールパネルでは、プリウスのナビパネルさながら、発電系や蓄電系の電気のやり取りが表示されたり、部屋別の電気使用状況や水道光熱費の推移など多様なモードへ切り替えることができ、見ていて楽しい。また、電動ルーバーシャッターやキーレスドアなどの最新式の設備も設置されている。

 屋外に廻ると玄関脇の駐車場にはプリウスが停められ、充電スタンドと接続している。蓄電池は鉛蓄電池で意外に大きい。リチウム蓄電池の方が小型化できるそうだが、PHVとの電気のやり取りを行うとなると、PHVの蓄電池も含めて、耐久性が大きな検討課題の一つだと言っていた。

Img_0023 さらに雨水タンクやエネファームエコキュートが並べて設置されている。これはモデル住宅だからで、実際の分譲住宅ではエネファーム設置住宅は少なく、オール電化住宅が多いようだ。個人的には、先日の大震災を考えると、電気偏重ではないかと思うが、オール電化に対する一般購入者の支持はまだ高いのだろうか。

 今回、2団地で全67戸の分譲を予定している。6月に販売した東山地区第1期14戸はあっという間に売り切れた。今後、来年にかけて67区画全ての分譲を行い、2014年にかけて入居者に協力を依頼し実証実験を実施する。全国4ヶ所のモデル地区の中でも、PHV・EVも組み込んだ実証実験という点が特徴的なのではないか。実現可能性を考えると、住宅単体の市場化はともかくとして、地域システムとしては課題が大きい。コミュニティレベルの政府がこれを運営するのか、それとも市場ベースで実現するのか。いずれにしても遠い未来の話のような気がする。

●参考

 豊田市低炭素社会システム実証推進協議会

 トヨタすまいるライフ・スマートコミュニティ