横浜馬車道駅周辺の再開発(北仲通北地区・南地区)

 先日、仕事でUR都市機構の本社へ行く機会があった。せっかくなので、UR都市機構本社が入る横浜アイランドタワーを含めた北仲通南地区とその北側の南地区の再開発について見学をしてきた。
 当日はJR桜木町駅から歩いてみたが、暑い中では少し遠い。大岡川に架かる弁天橋を渡って近付いていく。仮囲いに囲まれた区域では、横浜市庁舎の建設が進められている。横浜アイランドタワーの最大の特徴は、旧横浜銀行本店別館(元第一銀行横浜支店)の白い大理石の古建築が曳家され保存されていることだろう。到着した時にはちょうど映画撮影の真っただ中で、スーツで決めた俳優が玄関先に倒れていた。現在は、ヨコハマ創造都市センターとして活用されている。
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 その後ろに聳える横浜アイランドタワーは高さ119m。27階建てでUR都市機構や鉄道建設・運輸施設整備支援機構などの政府系機関が入る。設計は槙総合計画事務所。旧横浜銀行本店別館の白い外観に合わせたと思われる、ガラスやアルミ面で構成されたスラっとした外観で、よく言えば周囲に溶け込むデザイン、悪く言えば、それほど存在感を感じさせない。
 その西側、大岡川に面した区画では、先述したように横浜市庁舎の建設が進められている。こちらは高さ155m。32階建て。囲み型のかなりボリュームのある建物になる計画で、大岡川に面して飲食・サービスゾーンも計画されているようだから、完成すればアイランドタワーの方は陰に隠れてしまうかもしれない。2020年完成予定なので、完成したらまたぜひ見学に行きたい。
 今回見学のメインは北仲通北地区。こちらは組合施行の土地区画整理事業によって街区整備が行われ、平成27年3月に完了。従前は財務省所有の横浜第2合同庁舎、UR都市機構の海岸通団地、森ビル(株)が所有する倉庫、大和地所(株)、(株)日新などが所有する駐車場用地や小規模な商業ビルなどが建っていた。区域内に区画道路を1本通して再整備。昭和33年建築の平均25㎡以下の狭小住戸による中層住棟が並んでいたUR団地は、シャルーレ海岸通として生まれ変わった。
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 シャルーレ海岸通は低層部を隣接建物の軒高に合わせて21mで分節化。レンガタイルの外壁としている。上部や共用部は最近のURらしいシャープなデザイン。今回、URの方の好意で空き室を見学させていただいたが、1Kの住戸は壁面収納が設けられている以外はシンプルなデザインで、通路に面して小さなキッチンがあるという感じ。これで家賃10万円を超すというのは高いように思うが、ほとんど空き室はないそうだ。
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 共用廊下の眼下には建設中のAPAホテルの様子が見下ろせる。地上35階建て、客室数2311室の最大級のホテルになる予定。2019年秋開業の予定だ。また、シャレール海岸通の区画道路を面して南側、国の横浜第2合同庁舎は1926年に建設された旧生糸検査所。鉄筋コンクリート4階建てだったが、1995年に外壁を残して後部に23階建ての高層棟を建設する改築が行われている。玄関正面の上部に飾られた大きなメダリオンが目を引く。モチーフは生糸検査所らしくカイコ蛾だそうだ。
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 合同庁舎の西側の区画も現在建築中。こちらは森ビルと三井不動産レジデンシャル(株)、丸紅(株)による分譲マンション「ザ・タワー横浜北仲」で、高さ約200m、地上58階建て、1,176戸。階数、戸数ともに1993年以降に横浜市内で販売された分譲マンションの中で最大ということだ。2020年春完成予定。斜めに跳ね上がった軒線や縦線と横線がクロスする外観など、デザイン性を強調した外観はランドマークタワーを意識したデザインかなと感じた。さらに西奥の区画に結婚式場がすでにオープンしている。(株)日本セレモニーが経営する「ノートルダム横浜みなとみらい」。大岡川を挟んで対岸にみなとみらい地区が一望できる絶好の立地となっている。
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 今回、UR都市機構本社を訪ねるというので、ついでに最近建替えが行われたシャレール海岸通を見学しようという程度の予定だったが、思いがけず、北仲通北地区・南地区の再開発を見学することとなった。どちらも事業自体は完了し、現在は区画内の建物が一部完成、残りの区画も鋭意建設中というところだが、みなとみらい地区の整備に伴って急速にポテンシャルが高まった感じ。数年後に来ると、全く雰囲気が変わっているのかもしれない。
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 見学後、昼食を食べに馬車道を歩いた。1904年築の旧横浜正金銀行本店「神奈川県立歴史博物館」や1922年築の旧川崎銀行横浜支店「損保ジャパン日本興和横浜馬車道ビル」、1936年築の旧東京海上火災保険ビル「馬車道大津ビル」などが並ぶ界隈を多くのビジネスマンが歩いていた。鉄道駅から近い立地と活気に横浜のポテンシャルを強く感じた。
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名古屋市営高坂荘のリノベーション住宅

 今年のGW明けの5月、名古屋市天白区の市営高坂荘で、高坂学区地域コミュニティ活性化プロジェクトの一環として、若年世帯向けにリノベーションされた市営住宅の募集があった。
 高坂学区は高齢化率が41.7%(H27.12.1現在)と名古屋市266学区の中で最も高くなっている。昭和41年に完成した市営高坂荘に至っては、755戸のうち、65歳以上のみ世帯が430戸と入居戸数の6割以上を占めている。そんな状況の中、市営住宅の空き家住戸を活用し、住宅供給公社がリノベーション予算を確保して4戸を改修。今回、募集が行われた。
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 戸数は2タイプ4戸。市営住宅の空き室を定住促進住宅として提供するもので、入居資格は中学終了前の子供がいるか、夫婦とも35歳以下の若年世帯で、所得月額123,000円以上487,000円以下という定住促進住宅としての所得制限がある。
 もう既に入居は始まっているが、少し前、6月1日に入居前の住居を見学する機会があった。当日は設計を担当した公社職員から設計コンセプトなどの説明をいただいた。プランは2種類。高坂荘は元々1DK住戸に1室増築して延べ床面積48.78㎡、3Kの住戸として提供されている。増築部屋とのつなぎの部分にキッチンを配して、1室は和室の2LDKとしたAタイプと、独立キッチンを確保して、全室洋間にした1LDKとしたBタイプを用意した。
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 Aタイプはキッチンをあえて間取りの中心にすることで、炊事をしながら全室を見渡せ、子供の行動をいつも見守ることができることをコンセプトとしたが、キッチンが狭く感じられ、人気はイマイチだった様子(とは言っても、この時点で2戸に対して3世帯の申し込み)。一方のBプランは、収納は少ないながら入居者の自由に任せることとし、こちらは3倍の倍率となった。ホームセンターの(株)カインズとコラボして、モデルルームでの生活提案を行ってもらったことも新聞等で話題となった。
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 ただし、今回の事業は地域コミュニティ形成モデル事業として市が2800万円のリニューアル費用を負担したから可能となった事業でもある。今後、継続していくのはなかなか困難だろう。市や地域としてはこうして入居された方が地域活動にも参加していただき、地域の活性化につながっていくことを期待していたが、たぶんこうした取組を地域へ広げていくには、戸建て住宅の空き家を活用する方策が必要だろう。事業としては、採算を度外視してリノベーションしたら若年世帯の入居がありました、中でも人気があったのはBタイプの住戸でした、という結果でしかなかったように感じる。ちなみに、愛知県住宅供給公社でもリノベーション賃貸が好評を博しているが、基本的にリノベーション費用は3年程度で回収できるよう、費用及び家賃を設定している。それを考えると、相当に恵まれた事業だと言える。今後、周辺地区も含めた高坂地区全体での継続的な取組が期待される。

県公社住宅を活用した高齢者住宅「ゆいま~る大曽根」

 6月に名古屋市大曽根で(株)コミュニティネットが、県公社住宅の空き室を活用したサービス付き高齢者向け住宅「ゆいま~る大曽根」の募集を開始し、新聞やテレビ等でも取り上げられた。(株)コミュニティネットのホームページにはその後の状況が掲載されているが、6月の時点で入居予約が55%。7月には「入居予約者のプロフィール」などの記事も掲載されている。こうした記事が掲載されるということは、まだ満室というわけではないということかと思うが、好調な出足と言って差し支えないであろう。
 しばらく前の話で申し訳ないが、5月30日に愛知県住宅供給公社の方から、公社住宅の空き室をサ高住とするに至った経緯などを聞かせていただく機会があった。そのことを簡単に報告しておく。
 全国的に公社住宅は空き室が多いと言われるが、愛知県公社においても昭和40年代、50年代に建設された住宅を中心に空き室が多くなっている。大曽根住宅は昭和50年・51年に管理開始された11階建て4棟480戸の住宅で、住戸面積が50㎡弱という狭さや地下鉄駅から徒歩15分という立地も影響してか、近年、特に空き家が増加している。
 こうした中で、1階が店舗スペースとなっている併存住宅2棟について、サービス付き高齢者住宅として利用する貸与住宅40戸(追加可能戸数30戸)、高齢者生活支援施設として活用する賃貸施設約50㎡(1戸分)及び大型店舗スペース約982㎡、さらに任意で貸与可能な小型店舗スペース2区画(各88.8㎡)を条件に、昨年6月から事業者の募集を行った。その結果、(株)コミュニティネットが事業者として選定された。
 サ高住及び関連施設に係る工事については、(株)コミュニティネットが補助制度を活用して実施し、県公社は共用部分のバリアフリー改修などを実施する。残りの一般住宅は現在も家賃53,200円~56,200円(共益費とも)で賃貸しているが、サ高住住戸については一括して事業者に約65%の家賃で賃貸。また店舗等のスペースも相応の賃料で賃貸する。事業者はこれを受けて、3タイプにリニューアルし、家賃65,000円~74,100円、生活サポート費37,800円~45,360円(二人)、共益費5,000円で高齢者に貸し出していく。
 上述したように、既に多くの入居予約者がいるということで、まずは順調なスタートということか。9月の入居開始が楽しみだ。さらに県公社では、新婚向け・子育て世帯向けのリノベーション住宅の募集も行っている。こちらも好評のようだ。サ高住の導入が大曽根住宅、さらには公社全体の活性化につながることを期待したい。