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三河山間地域の定住施策-愛知県交流居住センターの活動

 愛知県交流居住センターという組織がある。愛知県地域振興部山村振興室の取組を受けて、平成20(2008)年に設立された。先日、この事務局長を務めている(一社)地域問題研究所の加藤さんからセンターの活動と県内各市町村の定住施策の状況について話を聞いた。
 まず組織の成り立ちについて。平成19(2007)年に愛知県から(一社)地域問題研究所が委託を受けて三河山間地域の定住促進のあり方等について調査検討。その後、県から活動委託を受ける形で当センターを立ち上げ・・・。というのは間違い。愛知県交流居住センターは、県からの委託を契機に、愛知県を始め地元豊田市など6市町村に、愛知大学、(一社)地域問題研究所、愛知県森林組合連合会、NPO法人ボランタリーネイバーズその他の正会員が集まり、任意団体として設立。活動を行っている。
 主な活動内容は5つ。「(1) 交流居住マッチング事業」は、交流居住を希望する都市住民と三河山間地域の集落をつなぎ、田舎暮らし見学バスツアーなどを行っている。「(2) 交流居住情報の受発信事業」は、ホームページフェイスブックを利用した空き家や地域情報の収集・発信と会員相互の情報交換。「(3) 受入集落支援事業」では、交流居住事業に主体的に取り組む集落に対して交流イベントなどの実施に向けたコーディネート支援等の活動を行っている。その他には「(4) 交流居住フォーラムの開催運営事業」や、交流居住関連の事業や活動を行っている団体等との交流・情報交換、連携・協働など交流居住ネットワークの拡大と、県・市町村への政策提言や研究会活動などを行う「(5) ネットワーク事業等」を実施している。
 「交流居住」という言葉は、「住宅探しから」ではなく、集落と都市住民との「交流」から「居住」につなげていこうという意図で、両者をつなげた言葉として使っている。三河山間地域は軒並み高齢化率50%を超えている。「人」の空洞化が「土地や住宅」の空洞化を招き、さらには「心」の空洞化を招く。この過疎化の悪循環を断ち切って、逆に回すこと。すなわち、田舎暮らしもまんざらでもないと思う「心の過疎化」からの脱却をスタートに、草刈などの集落作業への応援を行うことで「集落や土地の過疎化」からの脱却を図り、Iターン・Uターンを進めて「人の過疎化」からの脱却を図る。こうした循環を持ち込むことが重要だ。そのためにまずは、都市住民や企業の応援を得て、都市住民との交流から始めていきたいと言う。
 近年、都市部でも空き家問題が話題になりつつある。人口減が空き家を生み、治安が悪化し、魅力が低下するというスパイラルは実は都会の方が深刻かもしれない。ストレスの多い都市部での生活を離れ、魅力ある田舎でストレスのない暮らしをすることができれば、それはきっと先に挙げた「過疎化からの脱却スパイラル」に持ち込むことも可能だろう。農山村地域は都市問題解決の可能性の宝庫だと訴える。都市と農山村がWin/Winの関係になって定住促進を進めていきたいし、そうでなければ長続きはしないだろうと言う。
 私自身、10年ほど前に豊田市と合併する前の足助町で働いていたことがある。当時、高嶺下住宅開発のコーディネートをしてもらったのが加藤さんだ。「足助のその後 定住者が着実に増えている」で報告したのが、私が足助町へ行った最新の情報だが、その後、豊田市を始めとする三河山間の各市町村もさまざまな活動を行っている。
 足助町と旭町、藤岡町下山村稲武町を合併した豊田市では、空き家バンクやお試し居住体験などを行うとともに、旧旭町では5年限定で居住できる低家賃住宅を提供している。また、私が足助町にいた時に始めた「スマイルしようかい」も公に募集はしていないが、足助支所でしっかりと実施され成果を出しているとのこと。ちなみに「スマイルしようかい」とは、支所を訪ねる定住希望者を支所の職員が主観的に選別し、これはと思う人にだけ空き家を紹介する仕組みで、紹介する空き家は集落の推薦でリストアップし、定住希望者には空き家所有者だけでなく地域の区長さん等が立ち会って入居の可否を決める。公正平等の観点からは表立ってやりにくいものの、自身も地域の一員である職員の目を通して選別し、また地域の役員等も定住前から懇意となることでトラブルのない定住を実現している。実際、「スマイルしようかい」による定住が一番成果を挙げているとうれしいことを言ってもらった。
 東栄町では、総務省の「定住促進空家活用事業」を利用して、空き家を町が借り上げ、リフォームして賃貸する事業を行っている。また豊根村では、30年で自分の家になる譲渡型定住促進住宅を始めた。さらに、総合計画として「豊根村の村づくり方針」を策定し、その一つに「ライフステージごとの『現役世代生活応援』」を掲げている。「独身期から高齢期まで各世代で必要な生活応援をしますよ」というもので、定住希望者に村の支援策や方針を「見える化」することで定住促進を促している。
 最後に、課題と解決への提案をしていただいた。定住にあたって一番の問題は「就業」だが、例えば移住者自ら小さなビジネスをいくつか作る、いわゆる「複業」を行うことで何とかなっていく。また暮らす中で仕事が見つかることもよくあると言っていた。もう一つは「因習」。私も足助にいた頃、「足助町罵詈雑言」というHPを作って地域の風習や伝統などを紹介していたが、それらを集落全体として担っていく、そんな仕組みを考えていくことが必要だ。さらに「子供」の問題。田舎でもいまやすっかり遊びが貧困化してしまった。もう一度、地域ならではの遊びを考えていくこと。と同時に、高校生以上は下宿なども覚悟しなければいけないことなどを話された。
 最後に、「空き家問題」について盛り上がった。加藤さんからは、空き家の放置はしにくいと感じる意識の醸成や放置すると損をする仕組みを考えたいという意見があった。そして空き家を貸せない理由を一つ一つつぶしていくこと。そのための空き家活用条例の制定などの提案をいただいた。
 田舎の魅力から始めること。そして田舎を生かすことが、都市とのWin/Winの関係づくりにつながる。足助にいた時に町長が言っていた「山里のしたたかな暮らし」への自負の気持ちが地域を前向きにしていく。そんなことを思い出した。本当に楽しくしている人や地域の周りには他の人も集まってくる。交流から始める居住にはそんな思いが籠められている。