常滑やきもの散歩道から足を伸ばして
今回のつばき展はINAXライブミュージアムも会場の一つとしたため、散歩道から足を伸ばしてINAXライブミュージアムまで歩いてみた。散歩道の東南「栄町七丁目」に交差点から常滑西小学校の東側をトコトコと南に向かう。
と、黒壁の町家が並ぶ雰囲気のある通りに出る。陶彫のある商店街(とこなめ中央商店街)の東の端。紅白の台の上に展示された陶彫作品があちらこちらに設置されている。それらを見ながら東に歩くと、広い敷地の奥に洋館が建ち、門の左手に十二支の陶彫。右手に彫像。「伊奈」の表札。INAXの創業者・伊奈家。その立派な姿に感心しつつ、さらに足を伸ばしてINAXライブミュージアムにたどり着く。
INAX文化スクエアからライブミュージアムになっては初めての訪問。「世界タイル博物館」や「窯のある広場・資料館」、「陶楽工房」の各施設は変わらないが、「土・どろんこ館」と「ものづくり工房」が増設され、全体として伸び伸びしたいい空間をなしている。特に「土・どろんこ館」の版築壁はベージュ色のやさしい色合いに縄文時代を想像させるような力強さが感じられ圧倒される。その他にも見所は多く、体験型の施設もあって、家族連れでゆうに半日は過ごせる施設になっている。
と言いつつも、「陶楽工房」で展示されていた冨本泰二先生の「早春・椿一輪」を見せてもらい、そそくさと先を急ぐ。日祝日1時間1便運行のとことこバス12:47発に飛び乗る。乗車客は私を含めて2人。しかしバスも可愛いし、常滑駅からINAXライブミュージアムまで片道利用して、行きか帰りかどちらかを歩くのは、常滑を楽しむベストコースだと思う。
バスを神明社前で降りて、普段なら北へ上がるところを、並べられた陶彫に誘われて南に歩いてみた。噂には聞いていたが、その町並の面白さにドンドン引き込まれていった。下見板張、コールタール塗、格子窓などはどこにもある景観かもしれない。今や建替えられた家も多い。それでもかつて一番の繁華街だったとは思えないほどの狭く曲がりくねった道、道に面して表出される緑や陶作品等が独特の雰囲気を醸している。しばらく行くと本町大正館と銘打つRC造レンガ積風の古い建物が現れる。旧・中埜銀行常滑支店。大正6年築で今はギャラリー等に利用されている。
空地を隔てて南に行くと、白龍大神の社があり、さらに歩くと右手奥に古い2階建てRC造の事務所ビルが見える。1階1区画が通り抜けになっていて向こう側の倉庫が見える。壁に「常滑市役所」の嵌め込み石板とその下に「とこなめ中央商店街事務所」のプレート、ふくろうの陶彫。なんか不思議な気分。新四国64番札所・安全寺を過ぎると突然水辺に出る。出会橋。常滑港へ注ぐ大落川はここで二つの小川が合流し、橋が架かり、道が交差する。複雑な地形に木造3階建て、黒壁の家並み、陶彫が並ぶ川辺、からくり時計と招き猫の置かれたポケットパークなど、魅力的な空間が形作られている。
川に誘われ左折するも、塀の上に楽しい陶彫のおじいさんがこちらの路地も面白いぞ、と誘う。ふらふらと狭い路地を入り込み、ポッと出たのはINAXライブミュージアムの北の通り。ミュージアムとは反対側、西に向かって歩くとまたなかなかレトロな町並。狭い道の右側に土管ようかんが面白い鯉泉堂菓舖。ご主人の鯉江さんに声をかけ、昨年11月にオープンしたばかりの常磐蔵へ是非行くようにと教えてもらう。
からくり時計の広場の東のギャラリー常磐蔵はギャラリーと銘打つ割に何を展示しているのかわからず少し不安。思い切って入ってみると、障害者児童の作品に世間遺産の写真が展示されていた。世間遺産とは一昨年、2005年のあっちべたこっちべたフェスタに協賛して開催されたやきもの散歩道界隈の写真展。当時は共栄窯で展示をしていたが、今はこちらで展示がされているとは。それにしても「ここってどういうところ?」と留守番していた二人のおじさん、おばさんに思い切って聞いてみると、商店街が空家を活用して開設している無料休憩所とのこと。障害者支援団体「ねこの手」が管理をし、地元の小学生や老人会等の展示や授産所のクッキーなどを販売している。「さっきまで隣の広場でやっていたイベントの余り物の甘酒があるから飲みませんか?」と誘われ、それじゃとごちそうになった。甘酒とお茶をいただきながら、さまざまなお話を伺い、楽しかった。時が止まったようなこんな施設もいいですね。
さて、常磐蔵を出て、赤いポストの上の猫の郵便屋さんに見送られ、来た道をまた北に戻る。橋の手前には、レトロなモルタル塗りのレストラン「ときわ」。橋の北側、真っ白く塗られた建物はかつては何に使われていたんだろう。気になる。お茶の寿園、イチゴ大福の井桁屋、店先に懐かしい写真を飾った酒のトヨタヤ等々。お店を追っかけてもいずれもレトロで圧倒的に面白い。
この後は、前に報告したとおり、旧渡辺邸でつばき展のお手伝いをして1日過ごして帰ったが、いつものやきもの散歩道に加えて、楽しい時間と空間を体感することができたなあと大満足でした。なお、やきもの散歩道界隈の景観も含めて、マイフォトに収録しました。併せてごらんください。