植木の町、稲沢市の東郊に中層や低層の住棟が並ぶ市営西島団地がある。昭和40年代に建築された団地で低層棟はだいぶ老朽化が進んできた。南に老人憩いの家、西に環境センターがある立地のこの団地で、平成17年度から老人憩いの家と一体的に建替を行う事業が行われてきた。今年度末に住棟が完成するというので、見学会が開催されたので参加した。
建て替わった建物は、1階に老人福祉センターと団地集会所、2階以上に公営住宅を有するRC造10階建て。既存の50戸に市内の別の2団地48戸の撤去に伴い、86戸の住宅を建設。86戸の内訳は、2DK:35戸、3DK:43戸、3LDK:8戸。
2DKのうち12戸は高齢者用住戸として、緊急通報や安否確認システムを備え、押釦時や長時間水の使用がないときなど登録した連絡先へ通報するとともに、戸外で非常ベルが鳴り、玄関扉が解錠するようになっている。1階に老人福祉センターがあるものの、デイサービス等の事業者が現時点では決まっていないため、直接、老人福祉センターへ緊急連絡等をするようにはしていないとのことだった。
老人福祉センターは広いロビー、18畳2室の和室、リフレッシュ・コーナー、展示スペース等に加え、隣接する環境センターの廃熱を利用した浴室が設置されている。また、開放的な多目的ホールや陶芸室もあり、屋外にはゲートボール場、グランドゴルフコース、多目的広場もある。
この建物の一番の特徴は、買取方式で整備されたという点にある。愛知県住宅供給公社と覚書及び協定を取り交わし、公社は「公募型性能発注方式」で建設業者を募集。結果、比較的安くかつ特徴ある建物が建設され、また市にとっては、建設費に一定の事務費を加えて公社から買い取ることにより、技術職員の不足を補うことができた。
86戸の住宅のうち40戸近くは今後公募していくそうなので、市内在住の方は応募を検討するのもよいだろう。市街地からは少し郊外になるが、市営住宅として意欲的な取り組みがなされた、全国的にも参考になる事例ではないだろうか。