ヌーヴェル赤羽台とパルロード赤羽

 横浜での仕事を終えて、東京都北区赤羽に向かった。ヌーヴェル赤羽台はURが建替え事業を進めている団地で、これまでにD街区までが完成している。A~C街区が完成した時点で、2012年度グッドデザイン賞を受賞。さらに2015年末にD街区が完成したことで、2016年度のグッドデザイン賞を受賞している。楽しみに見学に行った。
 JR横浜駅東海道線に乗り、上野を過ぎると、低層の建物が密集した市街地が広がる。「東京の北区と言えばこんなもんなんだ」と首都圏に土地勘のない私は、車窓を眺めながらそんなことを思っていたが、赤羽が近付くと、風景が一変する。マンションが林立。都会だ。後で聞けば、赤羽は北区の商業・交通の中心地で、川口など埼玉県方面からの東京の玄関口となる副都心ということだ。東北線の他、京浜東北線埼京線高崎線が乗り入れる交通の要衝となっている。
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 まず、駅前の再開発ビルの一つである商業施設アピレに向かう。赤羽駅西口は昭和50年代から再開発事業が進められ、商業施設アピレを含む1街区が完成したのが昭和61(1986)年。続いて、隣接する2区画についても再開発事業が実施され、赤羽文化センターに商業施設ビビオなどが入る2街区、イトーヨーカドーが入る3街区がともに平成7(1995)年にオープンしている。これらを総称して赤羽パルロードと名付けられている。
 アピレは新都市ライフホールディングス(株)が運営する商業施設で店舗面積約5,462㎡。今年3月にリフレッシュ・オープンし、現在50のテナントが入る。平日の午後だったが、よく客も入り、賑わっていた。食品店舗が入る地下階から無印良品が入る3階までの4フロアーが店舗となっている。また、3階からは隣接するイトーヨーカドー棟へ連絡通路でつながっている(屋根はない)。イトーヨーカドーは地下1階・地上6階建て。6階の専門店街だけを見て、立体駐車場を経て、ヌーヴェル赤羽台へ向かう。
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 UR赤羽台団地は従前3,375戸。昭和37(1962)年入居の中層住棟が55棟並ぶ大団地だった。区域の両端には赤羽台西と東の各小学校と赤羽台中学校があったが、東小学校は2005年、中学校も閉校となっている。このうち、中学校のあった区域はこの(2017年)4月に東洋大学赤羽キャンパスとしてオープンしている。ちなみに設計は隈研吾。外壁や庇に木の板材が多く使われているのが、遠目ながら見えた。機会があったら、こちらも見学に行きたい。
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 さて、赤羽台団地の中央を南北に道路が南北に走り、トンネルになっている。団地へはその脇にある急勾配の階段を上がっていく。台地上の上に出るとこれがちょうどD街区の東南の端。一番手前の11号棟の1・2階には保育園が入っている。8号棟の間を抜けるとC・B・Aと囲み型の街区が続く。建替えを待つ古い住棟を左に見つつ1街区分進み、右に折れると、左に5号棟。イチョウ通りに面して、カラフルな手すりパネルが面白い。設計は市浦+シーアンドエイ(小島一浩・赤松佳珠子)。その北の端に集会所等があり、UR管理事務所がある。
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 そこで鍵を借りて、7号棟(C街区)と8号棟(D街区)の空き室を見せてもらった。C街区は山本・堀・みのべ設計共同体の設計。住棟の所々に二層吹抜けのボイドが開けられているのが特徴的。共用テラスになっていて、周辺を一望できる。東洋大学の校舎はここから眺めた。またB街区の北側からC街区にかけてスーパーマーケットなどがあるが、これは別途URが事業者を募集して整備されたもの。
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 共用廊下から見下ろすD街区は囲み型の8・9・10号棟を挟んで南北に11号棟と12号棟が並ぶ。12号棟は4階建てで高齢者支援施設なども入る。8号棟に上がり1DKのタイプの部屋を見学した。床面積は44㎡で家賃は11万円余。東京では一般的なんだろうか。従前入居者や高齢者に対しては減額措置や家賃補助の仕組みもあって、最大半額程度の負担で入居できる方もいるそうだが、それにしても高い。それでも入居率は98%と非常に人気が高く、ほぼ満室だ。
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 エレベーターを降り、今度は従前住棟へ向かう。地区の南側にはスターハウス形式の者も含めて、まだ数棟残っている。スチールサッシの付いた部屋はさすがに古かった。続いてB街区、A街区と西に向かう。1階住戸は直接通路側に玄関があり、それぞれ植栽などで飾られている。A街区は1号棟がみのべ建築設計事務所、2号棟がA・W・A設計共同体。
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 1号棟の中をくぐり、中庭へ。中庭には自走式の立体駐車場が緑に包まれている。B街区の3・4号棟はナスカ・空間・日東設計共同体。立体駐車場を取り巻く駐輪場の上をウッドデッキが取り囲み、少し持ち上がって気持ちのいい空間。L字型の住棟が交わる部分を潜り抜ける空間に面して1階住戸の玄関がある。面白い。さらにB街区、C街区、D街区を抜けて、出発地点のトンネル上に出た。中庭を通ってくるだけで気持ちいい。玄関前で遊ぶ子供たち。また子供連れの若い家族にもよく出会った。
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 急な階段を下りて、JR赤羽駅まで歩き、喫茶店で半日を振り返る。A~D街区まで合わせて1,895戸。今後もさらに建替えを続け、計画では2,100戸程度になる予定。デザイン的にも優れ、豊かな暮らしを実現している。いい団地を見学させてもらった。郊外の建替えモデルの一つになりうる団地だ。名古屋圏でもこんな団地を見てみたい。
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