環境共生住宅 シティファミリー志段味/県営山野田住宅

 名古屋市が環境型社会対応住宅のモデルとして、芸術家・荒川修作をデザイナーに迎え建設した志段味循環型モデル住宅「シティファミリー志段味」。建設前からその奇抜なデザインはこの地域の専門家の注目を集めていたが、完成後も期間限定の試験入居募集を行うなど、一時かなりの話題となっていた。最近はこうしたブームも一段落していたが、今年1月に名古屋市が、このモデル住宅を含む一帯約3.2haにおいて木造住宅を含む約200戸の循環型社会対応住宅を建設すると公表し、再び注目を集めている。

Imgp5857 この地区は、私の家からも近く、名古屋へ出る際の幹線道路沿いなので、今までもよく通ってはその奇抜な外観を眺めていたが、先日初めて道路脇に車を止め、住宅の内外を見て回った。

 全部で7戸の小さな住宅だが、全部で4棟に分かれる。このうち北東に位置するA棟が荒川修作デザインの2階建ての1戸建て。A棟を取り巻くように建てられたあとの3棟は2階建ての各フロアー1戸ずつの2戸建て。まるで天命反転地のように歪曲したA棟は外観を見るだけではカラフルでもあり緑も豊かに生い茂ってたいへん楽しそうに見える。屋上緑化や壁面緑化、太陽光発電など環境要素もふんだんに取り入れられており、モデル住宅の役割を十分果たしている(ただし、建設中の苦労や曲面が多用され段差も多い平面図を見ているだけに、手放しでは褒めにくいのだが)。B・C・D棟は中庭を囲んで木製デッキでつながっており、緑の豊かさや棟の間を吹き抜ける風などで住み心地の良さを感じさせる。これらの各棟にはエコキュートやガスコージェネ燃料電池システムなどの新技術がモデル的に利用されている。その他、透水性舗装やクールチューブ、雨水貯留、共同菜園、次世代省エネ対応の断熱性能、生ゴミの堆肥化、自然素材やリサイクル材の使用などが試みられている。

 今回、外から見ただけでも、環境共生住宅の楽しさの一端を窺うことができたが、建設・費や維持管理費は相当な額になるはずで、モデル住宅と銘打つのであれば、こうしたデータはぜひ積極的に公開してほしいと思う。ちなみに、今回公表した循環型社会対応住宅の建設地に南東側では既に名古屋市住宅供給公社による環境配慮住宅が分譲され完売している。この住宅の建設にあたっては、モデル住宅の実績は活用されたのだろうか?

Fitimgp5867 この後、少し足を伸ばして、県営山野田住宅にも立ち寄った。こちらは公営住宅ということもあり、最小限の建設投資しかされていないが、愛・地球博開催時の外国人用宿舎として一時利用されたこともあり、環境共生住宅としての工夫がいくつか凝らしてある。外から見て一番目立つのが、妻面に施された壁面緑化。8階建ての最上階には太陽光発電も乗せられている。住棟の北側にある平屋の共用棟(集会所、自転車置場等)の屋上には木製デッキの間に緑化がなされ気持ちいい空間となっている。その他、雨水貯留や透水性舗装、LED照明、リサイクル材の使用などが取り入れられている。志段味循環型モデル住宅に比べればかなり見劣りするが、公営住宅として活用されていることを考えれば、現実的な取組みと言える。しかし、建設費や維持管理の問題から全ての県営住宅で同様の仕様を取り入れるわけにはいかないようで、その点は残念。

 これまでも、サンコート砂田橋など環境に配慮した住宅もいくつか見てきたが、これらがモデルとなり、一般的な手法としてもっと多くの住宅で採用されるようになるといいと思う。そのためにも行政にはもっと積極的な情報提供を期待したい。  その他の画像は、マイフォト「環境共生住宅 シティファミリー志段味/県営山野田住宅」をごらんください。