団地が死んでいく

 著者名を大山顕氏と勘違いして思わず手に取った。大山顕氏とは住宅都市整理公団のサイトで有名な団地マニアだが、こちらの大山眞人氏は老人問題など取り上げているノンフィクション作家。自ら市営住宅に居住し、最近団地内で発生した孤独死事件から団地の問題に目覚めた、とのこと。  「『孤独死』にいたるにあたっては、・・・住宅そのものにも大きな原因があるのではないかと推測した。・・・つまり『団地が孤独死を生んでいる』とはいえないだろうか。」(P15)という推測のもと、団地問題に立ち入っていくのだが、ハード的な要因も少しは指摘されるものの、結局最後は「孤独死予防の最善策は、『コミュニケーションの確立』しかない。」(P193)という結論に落ち着くわけで、当たり前といえば当たり前。もちろんその目的を達成するためには、事業者側の努力だけでは足りないが、事業者側の配慮も必要。この結論に落ち着くまでに、公営やURの建て替え団地や建て替えられなかった団地のレポート、日本の住宅施策の歴史の研究や同潤会アパート調査、各地の孤独死予防施策の研究などを行っており、著者の勉強におつきあいしながら総括的に勉強できるのは、多少は意味あるかも。それにしても最初の推測に基づく偏見におつきあいしていくのは結構不快でもある。  ということで、推薦はしませんが、こんな本もありました、という紹介です。
●さらに2DKなら玄関扉脇に窓があるが、1DKは扉だけ。玄関からなかの様子をうかがうことは不可能だ。つまり構造的な問題が「死角」を生んでいるのだ。(P55) ●閉じこもりは孤独死につながる。村は民生委員を通じて接触を図るが、なかなか応じてもらえない。そこで考え出したのが、「子どもヘルパー」の存在だ。(P158)