まち遊び日記

居住福祉におけるバウチャー・システム

日本福祉大の丸山教授に話を伺った。内容は「居住福祉のバウチャー・システム」。先生には5年前にお会いした時から「アメリカ型の住宅バウチャー制度の導入が必要」という持論をお聞きしていたが、当時は「バウチャー?What?」という状態で、全く理解できな…

「スクラップ&ビルド&メンテナンス」と「公共賃貸住宅の100年経営」

ずいぶん前の話題で恐縮だが、建設通信新聞の元旦号に著名学識者へのインタビュー記事がいくつか掲載されていた。そのなかで、経済学者の松谷明彦氏の主張が目を惹いた。 興味を持った部分は次の二つ。(1)減少する人口局面において、最適な都市規模なんても…

持家政策を評価する視点と公共住宅の役割

藻谷浩介の「デフレの正体」の中に、「公営住宅と持家対策の2段階方式で成功した戦後の住宅政策を見習った医療福祉制度の構築」という提案がある。建築・都市計画関係者からはすこぶる評判の悪い日本の住宅政策を成功例として評価している点が気になっている…

非営利住宅セクター(社会的企業)による住宅供給と英米住宅政策比較

都市再生機構都市住宅技術研究所を今年の7月に退職。今は法政大学兼任講師として教壇に立つ海老塚良吉氏に、「非営利住宅セクターによる住宅供給(日本と欧米の状況)」と題して講演をしていただいた。 海老塚氏には昨年の11月に「民間非営利組織による住宅…

公共住宅団地の高齢化を考える

世の中「高齢化ばやり」である。年金問題、介護福祉の問題、地域の衰退・・・。さまざまな事柄が高齢化に結びつけられて問題とされている。それはある意味、事実だが、それを課題と考えるかどうかは、課題視する側の事情や意識に拠る。事象に伴う将来像を描…

分譲マンションは今後どうなるのか?

都市住宅学会中部支部主催、研究交流会「分譲マンションは今後どうなるのか?-時代の変化が予想する成立と存続の条件」を聴いてきた。講師は、元高崎健康福祉大学大学院教授・元国立公衆衛生院住宅衛生室長の松本恭治氏。既にこれらの役職から退職され自由…

「オランダの社会住宅」訳者の角橋氏に聴く

「オランダの社会住宅」の訳者で「オランダの持続可能な国土・都市づくり」の著者である角橋徹也氏の講演を聴く機会があった。私が幹事を務める都市住宅学会東海支部公共住宅部会主催の講演会の講師になっていただいたもので、角橋氏へのアポイントメントか…

建築士2010年8月号から 「斜面住宅」と「建築士試験」

先に、愛知建築士会の会報から目に止まった記事を引用したので、今度は日本建築士会連合会の会報「建築士」から。目に止まったのは2つ。一つは巻頭のOPINIONから鮫島和夫先生の「高層住宅VS斜面住宅 どちらが安全安心?!」。もう一つは速水清孝氏の連載講座…

ドイツの省エネリフォーム政策

愛知建築士会の会報「愛知の建築」に、前々号から、ドイツ在住の環境ジャーナリスト・村上敦氏による建築講座「省エネを進めるドイツの建築」が連載されている。3回目の2010年8月号は、「ドイツ既築のリフォームの現状と制度について」。 環境対策については…

マンションの課題

都市住宅学会中部支部講演会は、「ストック活用社会における住まいづくりを考える」と題して、京都大学名誉教授・三村浩史先生が話される予定であった。が、講演会前日、急遽、先生が来名できなくなり、地元の3先生によるマンション問題に関する研究発表会に…

第17回愛知まちなみ建築賞

愛知まちなみ建築賞の表彰式が愛知芸術文化センターで開催された。会場に空きがあるので何人か出てくれないかと言われ、翌日が休みのこともあり、午前中で何とか仕事にキリをつけ出席した。 今年度の受賞は全部で7点。主催者あいさつ、表彰式、選考委員長で…

地域の再生は地域力による。住宅市場は誰が整備する?

第5回あいち住まい・まちづくり研究会は「地域戦略」をテーマに、愛知大学三遠南信地域連携センターの黍島先生から「中山間地の居住と定住」、名古屋大学小川准教授から「地域戦略としての中古・賃貸市場の整備」について報告・提案があった。 前半の黍島先…

大家さんに期待 そして、住宅施策と福祉施策の連携について考える

第4回あいち住まい・まちづくり研究会が開かれた。今回の報告者は、弁護士の杉本みさ紀さん、日本福祉大学の児玉教授及び名古屋大学の生田准教授の3名。テーマは「セーフティネット」と「高齢者等の安定居住」で、前者を前2名が、後者を生田准教授が担当した…

■都市は如何に縮小されるか-若しくは、立地はいつまで都市を支配するか

「第3回あいち住まい・まちづくり研究会」に参加してきた。この研究会は、愛知県が主催し、住まい・まちづくり関係の各課題について、毎回、テーマに応じた講師を招き、報告を聞き、意見交換をしているもの。今回のテーマは「都市(まちなか)・郊外住宅地…

日本と欧州における社会住宅のストック・フローの差から考える持家政策を見直すべき理由

住宅供給は社会主義国でもない限り、原則として民間が経済活動として行うものだと思ってきた。しかし、「民間非営利組織による住宅事情」について研究報告をされた海老塚良吉氏の論文「英米独仏における社会住宅の供給組織の動向:1998年度都市住宅学会」(…

地方分権とナショナル・ミニマム

地方分権改革推進委員会が公営住宅の入居基準を地方で独自に定めることができるよう改正するよう勧告を出した。当初、単身者入居も認める方向で報道されていたが、最近は収入基準も地方で定める方向の議論が出ているようだ。 先日の都市住宅学会のワークショ…

公営住宅自治会支援ビジネスを始めませんか

公営住宅の入居者が高齢化、低所得化し、自治会の運営が困難になってきている。UR賃貸住宅などでは、家賃の中に共益費相当分も含まれているため、入居者は家賃さえ払っていれば、共用部分の清掃やエレベータの管理などは住宅事業者がやってくれる。URであれ…

学会大会というものに参加して

私は学部卒で、卒業論文も書かずに(卒業設計だけで)卒業したので、学会大会なぞトンと縁がなかった。就職後、必要があって(というか、恥ずかしいことに、割引価格で参考書籍が購入できるという特典につられて)建築学会に入会し、誘われて見学会や講演会…

公共住宅の課題と再生

11月27~29日で都市住宅学会大会(名古屋)が開かれ、最終日の最後のプログラムの一つで、ワークショップ3「公共住宅の課題と再生(理念・事業・制度)」が開催された。コーディネーターを東海学園大学の三宅先生が務め、パネリストは国土技術政策総合研究…

民間非営利組織による住宅供給と貧困ビジネス

「民間非営利組織による住宅事情」に関する研究報告を聞いた。都市再生機構都市住宅技術研究所の海老塚氏による講演で、海老塚氏の執筆で3月に発行された同名の書籍をベースにした話。もっとも、本書を私はまだ読んでいないし、海老塚氏の講演も、民間非営利…

住宅施策の鬼っ子 公営住宅の行く末

最近つくづく感じるのは、公営住宅は戦後住宅施策が生んだ最大の鬼っ子だということである。戦後住宅施策の三本柱と言えば、住宅公団、住宅金融公庫と公営住宅である。そしてそれらを計画論的に支えたのが住宅建設計画であったというのが、一般に言われる戦…

環境の時代と住まいの可能性

木造住宅を中心に活躍する建築家・三澤文子氏の講演会があったので参加した。三澤氏は奈良女の物理学科を卒業後、専門学校で建築を学びんだという異色の建築家。その後、藤本昌也氏が主宰する現代建築研究所で民家型構法を学び、夫の三澤康彦氏とともにMs建…

まちづくりのツボ教えます

5日開催されたまちづくりシンポジウムに参加した。講師は近畿大の久隆浩教授。「まちづくりのツボ教えます」とは何ともベタな演題。若干のいかがわしさを感じつつ、あまり期待せずに参加。最近の疲れもあり、冒頭はうつらうつらしていたが、途中から面白さに…

郊外住宅団地再生研究会

(社)地域問題研究所が呼びかけて、「郊外住宅団地再生研究会」が開催された。人口減少社会における郊外住宅団地(ニュータウン)が抱える問題や課題を共有し、「魅力の維持や再生に向けた取り組みについて、地域住民の活動と行政施策の両面から検討」しよう…

減災のまちづくりと建築の危機管理

防災まちづくりの第一人者、室崎益輝先生の講演会があったので参加した。ちなみに室崎先生の今の肩書きは関西学院大学総合政策学部教授。高名な先生でもなかなか再就職には苦労されているようだ。それはさておき・・・。 いつも都市計画に関する話題が尻切れ…

ニュータウンの再生-行政とまちづくりの論理

4月25日(土)に(社)都市住宅学会中部支部の講演会が開催された。テーマは「ニュータウンの再生」。内容は、「高蔵寺ニュータウンの現状と再生に向けた取り組み」についてNPO法人高蔵寺再生市民会議代表の曽田忠宏氏から、「桜ヶ丘ハイツにおける住民主導の団…

住宅手当制度の創設

欧米では住宅困窮者に対する施策として住宅手当の支給が一般的である。日本では昭和26年に公営住宅制度が創設されて以来、低所得者向けには低家賃の住宅を直接供給しており、住宅困窮者個人に直接住宅手当を支給することは行ってこなかった。この間、「石よ…

ハウジング&リフォームあいち2009

今年も「ハウジング&リフォームあいち2009」が開催される。今回は主催者である「愛知ゆとりある住まい推進協議会」が設立20周年ということで、例年にも増して盛大なイベントとなっているはず。「エコな住まいで快適ライフ」をテーマに、エコリフォームや太…

英国の社会的住宅制度に学ぶ

世界の公営住宅施策シリーズ、第3弾はイギリス。中京大学の岡本祥浩教授にお話を伺った。 イギリスと言えば、サッチャー政権下の公営住宅の払い下げが有名だ。この背景として、「国民が持ち家所有を望んでいる」というのが公式には政府見解だそうだが、ロン…

地域と大学の連携まちづくり

(社)都市住宅学会中部支部の講演会に行く。講師は名古屋大学の小松先生。演題は「地域と大学の連携まちづくり~住環境の創生・再生事例を中心に」。先生も執筆者の一人として参加し、最近発行された「地域と大学の共創造まちづくり」からの紹介が主な内容だ…