石見銀山・大森の町並み

 山陰旅行で訪れた古い町並み歩き。倉吉の報告をしてからだいぶ時間が過ぎてしまった。公私にゴタゴタが続いているが、気分転換のためにも次の石見銀山・大森の町並みを報告しておこう。
 石見銀山へは4月29日の午後に到着した。前日、倉吉から境港へ行って新鮮な魚介料理を堪能し、この日は足立美術館松江城と堀端で出雲そばを食べてから石見銀山に入った。宿にクルマを止めるとすぐに石見銀山・龍源寺間歩まで歩いた。自然の中を歩く往復4.5kmの散策は気持ちがいい、と言いたいところだが、雨に降られ、散々な状況。だが途中にあった大森小学校の木造校舎は伸びやかで気持ちがよかった。

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大森小学校
 宿の正面に国史跡「渡辺家住宅」があり、夕食・朝食ともに渡辺家住宅の土間を通って奥にある「せせらぎ茶房まぶのや」で食事をした。30日は朝から大森の町並みを散策する。土産物屋などが開くのは10時・11時過ぎのようで、9時にはまだ町並みを歩く人も少なく、その佇まいを堪能した。赤いポスト。通りに面して緑の表出が気持ちいい。家屋の多くは平入りで、通りに面してガラス障子の家も多いが、昔は格子窓だったのだろう。低い30㎝ばかりの縁が出ているのもかわいい。友人に勧められたカフェ・ギャラリー・ショップの群言堂もまだ準備中だった。
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渡辺家住宅
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町並みと緑の表出
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群言堂
 しばらく行くと、きれいに復元された武家屋敷「宗岡家住宅」がある。2018年に改修オープンしたばかりというのでまだ新しい。欄間の意匠が繊細で見事だった。栄泉寺を過ぎてしばらく行くと、「株式会社アットゴー 石見銀山サテライト」という看板が懸かった民家があった。「大田市インキュベーション施設」とも書かれている。リノベーションして利用しているのかな。
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宗岡家住宅
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宗岡家住宅の欄間
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大田市インキュベーション施設
 左手には工夫も食べていたという堅いせんべい「げたのは」を売る有馬光栄堂。うだつに「洋菓子の有馬」と書かれているのは、一時、洋菓子も売っていたのか。しばらく歩くと、武家屋敷「旧河島家」に出る。正面には五月人形が飾られていた。大田市町並み小閏センターは「旧大森区裁判所」。こんな山間に裁判所があったということもすごいが、明治23年に建築された擬洋風な建物で、真っ白く塗られた壁は威厳がある。
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有馬光栄堂
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大森区裁判所
 その先にこんもり盛り上がっているのは観世音寺。ここに登ると前後に連なる大森の町並みが一望できる。緑豊かな自然の中に、オレンジ色の瓦、白い壁、黒い格子。ベージュ色の土壁もやさしい。さらに街道に沿って進む。ドイツパンのお店もある。左手に「理容館アラタ」。正面脇に「理容遺産認定第1号」の石碑が設置されている。内部も大きな鏡に向かって昔ながらの椅子がデンと鎮座。盛時の面影がしのばれる。
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観世音寺からの景観
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理容館アラタ
 また向かいには民家を再生した「山陰合同銀行 大森代理店」。左手には「旧大森郵便局舎」を改修した「オペラハウス大森座」。そして白壁とうだつの町並みが続く。右手のしっくい壁が続く大きな屋敷が重要文化財「熊谷家住宅」。石見銀山御料で最も有力な商家というだけあって、内部も広い。欄間の透かし彫りもきれい。居間の床下には石組みの地下蔵もある。
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山陰合同銀行 大森代理店
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オペラハウス大森座
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熊谷家住宅(右側)
 そして通りもいよいよ終わり。石見銀山資料館は「大森代官所跡」だが、現存するのは角長屋(1815年築)のみ。資料館本館は「旧邇摩郡役所」で1902年建築というから十分古い。帰りは宿に置いたクルマを取りに、代官所前ひろばを通って、旧河島家住宅横の路地を抜けて、来た道を戻った。大森の町はそれほど観光化されることもなく、昔の風情を残して、生きている。一時の世界遺産ブームは去ったとも聞くが、この落ち着いた佇まいはいつまでも残っていってほしい。心癒される町である。
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石見銀山資料館(大森代官所跡)