可児市周辺の大規模商業施設を見て

 岐阜県可児市の「ピアゴ可児店」が「ドン・キホーテUNY可児店」に変わったというので、可児市在住の方の案内で見学をしてきた。場所は可児市役所の隣。ピアゴ可児店は1981年にユニー可児店として開店したが、2010年に一旦閉店。その後、2012年に建物もS造平屋建てに建て替えられ、ピアゴ可児店としてオープンしていたが、ユニー(株)のファミリーマートとの経営統合、さらに、ドン・キホーテへの売却・子会社化に伴って、2017年1月に閉店し、2月21日、「ドン・キホーテUNY可児店」として再オープンした。
 これまで、ドン・キホーテの名古屋栄店とMEGAドン・キホーテUNY東海通店は行ったことがあるが、この規模のドン・キホーテUNY統合店は初めて見る。周辺に競合する食品スーパーも多いということで、ドン・キホーテ色の強い店舗だろうという予想はしていたが、想定どおり、他のドン・キホーテと同様、入口から迷路のような店舗構成が続き、食料品は最奥部に少し。だが、生鮮食料品はなく、弁当や総菜、牛乳などの飲料水、そして菓子類などが並んでいる。スーパーマーケットとしてここで買い物が完結することはなく、他の買い物のついでに購入する、または牛乳などの特定の商品を購入するついでに、他の雑貨類などを購入してもらうという感じ。最近、食料品も扱って売上を伸ばしているドラッグストアや業務スーパーなどの大規模版、またはコストコの小規模版といったところだ。
 私が行ったのは平日の午後だが、開店して間もないということでそれなりに客はいたが、殺到というほどではない。可児市周辺にドン・キホーテはないので、当面はドン・キホーテ・ファンの来店が期待できるかもしれない。しかし、この可児店から距離にして4.2km。クルマでわずか10分弱の距離にある「アピタ美濃加茂店」も今年の10月下旬にはドン・キホーテとの統合店(ダブルネーム店)に転換する方針が公表されている。こちらはたぶん食料品も充実したMEGAドン・キホーテ店にするのだろうが、食料品以外の部分の競合が気になる。どんな店舗にするのだろうか。
 さらに、ドン・キホーテUNY可児店からわずか1.5km、クルマで5分ほどの位置には「ラスパ御嵩」がある。こちらは上述の各店舗よりもさらに大規模なショッピングモールで、アピタ御嵩店を核店舗に68の専門店が入店している。L字型の2階建ての店舗には2ヶ所に吹抜けが設けられ、回遊式となって快適な環境を提供しているが、いかんせん客は少ない。空き店舗も目立つほどではないが、いくつか散見された。
 可児市の人口は10万人強で近年はほぼ増減なく推移している。一方、美濃加茂市は約5万7千人で微増。さらに御嵩町は約1万8千人弱でこちらは減少傾向。これら3市町を合わせると約17万5千人の人口規模になる。ラスパ御嵩が面する道路は国道21号の可児御嵩バイパスだが、東海環状道路の可児御嵩ICに至る間にはカインズ可児店も出店しており、その南にはスーパーセンター・オークワ可児御嶽店がある。オークワは和歌山本社のチェーンストアだが、近年、スーパーセンター・オークワの名称でワンフロア大規模店を多く出店しており、可児市には西部の県道122号沿いに可児坂戸店もある。案内者によるとこの県道122号は最近特に大規模店舗の出店が相次いでいると言う。確かに、スーパーセンター・オークワ可児坂戸店の他に、ヨシズヤが入るパティオ可児から始まり、ホームセンター・バロー可児坂戸店やゲンキー、ダイソーなども大規模な店舗を構えている。
 ちなみに、どの店舗も平屋で駐車場が広い。また、周辺には空き地も多く、同行者が思わず「空が広い!」とつぶやいた。ちなみに可児市の都市計画は、中心市街地には用途地域が定められているが、市街化区域・調整区域のいわゆる線引きはされておらず、県道122号沿いは無指定区域となっている。ラスパ御嵩のある可児御嵩バイパス沿いもほとんどは無指定区域だ。こうした地域を狙って、大型商業施設が多く立地している。
 これら地域の土地所有者の多くは、従前、農業を営んでいたのだろう。だが、都市化が進行する中で、後継ぎ問題もあって農地を手放したり、借地にして日銭を稼ぐことを考えたとしても不思議ではない。だが、これほどにも多くの大規模商業施設が集中的に立地しているのを見ると、将来的に存続するのはどの店舗だろうかと考えてしまう。今後もさらに時代のニーズに合った商業店舗がオープンし、一方で多くの既存店舗が閉店をしていくのだろう。そうして市場淘汰が進められる過程で、地代は下がり、借り手のいない土地が取り残され、散在するようになる。こうした状況を土地所有者はどこまで想像しているだろうか。
 出店するテナントやディベロッパーはいい。彼らはダメなら閉店して、次の街に移っていくだけだ。だが、どこにも行けず取り残されるのは、地元の土地所有者だ。一時のブームでその時に好調な商業者に土地を任せることには慎重でなければならない。将来にわたって長い期間、その土地・その地域で共に事業活動を展開してくれる事業者でありテナントであること。土地活用にあたってはそうした考えが重要ではないだろうか。そして将来的にはこうしてバイパス沿いなどに打ち捨てられた商業施設空き地をいかに管理していくかが、市町村にとっても課題の一つになっていくのではないか。