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見えない道路

 「見えない道路」とは二項道路のことである。タイトルはカッコいいが内容は正直わかりにくい。長く東京都で建築行政に関わってきた筆者が2001年に提出した学位論文をベースに二項道路に係る諸問題について考察する。文章がわかりにくいことに加えて、第2章「判例にみる二項道路問題」が多くの部分を占めており、判決文がわかりにくい。そして何より、特定行政庁が一手に建築確認を行ってきた時代に第一線で活躍してきた自負がここかしこに散見される。
 第2章では判例を取り上げつつ、一括指定の処分性(一括指定は処分かどうか)、交通要件(誰がどのように利用すれば道路と言えるか)、建築物連担要件(二戸以上あれば連担?)、中心線判定(道路中心線はどうやって決まるか)、基準時問題(基準時とはいつか)の諸問題について現状の判断を詳細に解説していく。だが、どうしてみなし道路幅員は4mなのか、既存道路幅員は1.8mなのか。規定適用時の道路存在がどうして必須になるのかなどの疑問に対して明確に答えを示すわけではない。あくまで法規定が先にあり、それをどう適用していくか、判断していくか、道路を拡幅させていくのかが筆者の一番の課題認識となっている。
 第4章では地域の実情に応じ、4m未満でも三項道路として扱っていく方策についての提案がされているが、その解説も正直わかりにくい。結局、筆者は本書で何が言いたかったのか。第4章では「『基準時が新たに設定できたら』というグチがこぼれるのは、本音のところでやむを得ないのかも知れない。しかし・・・そんなことをしたら、先人のここまでの汗と涙を伴った苦労が水の泡となるし・・・」(P180)という記述がある。時代の変化を考えれば、先人の汗と涙を考慮する必要はないと思うが、建築行政一筋、75歳の筆者にはそれを言うのも詮無いことかもしれない。
 二項道路問題に対してもっと抜本的な対策はないものか。人口減少時代にふさわしい法規制のあり方について考える必要がある。そんな期待に応えてくれる本ではなかった。久しぶりに自費で購入したのに少し残念な内容だった。

見えない道路 建築基準法  二項道路

見えない道路 建築基準法 二項道路

●これまでの「待ち」の行政から、「建築指導課」といえどもまちづくりの発想をもって、地域に向けてアクションを起こす行動が必要である。とりわけ、二項道路の拡幅という課題に対して、いまや、市民の任意の建て替えを待っていてはいけない。行政が積み残してきた問題状況を打開するべく行動に出なければならない。時代がストック活用の方向に動いているこのとき、建築基準行政は現場重視の業務執行を目指すべきだろう。(P59)
●特定行政庁の二項道路指定が現に存在し、それを大前提として、敷地・建築物にかかわる適法性、運用手続きの適法性が争われ、二項道路の指定効果そのものに触れられることはなかったのがこれまでのおおかたの実態だ。・・・具体的なその後の処分のきっかけをつくるのは、当事者住民および関係住民であって、行政側は待ちの姿勢でこうした機会に臨むということも実態である。二項道路一括指定という方法が抱える問題、指定道路台帳の未整備が生む問題のなかに、行政の現実があるのである。(P72)
●再指定基準は、既存幅員2.7m~3.0mに対しては、それぞれ壁面線指定距離(片側)1.8m、2.0m、2.25mのいずれかを選択できることとしている。また、3.0~3.5mの幅員を有する道路についてはそのままの数値をもって縮幅再指定をし、壁面線は道路中心線からの距離2.0m、2.25mの位置に指定をする。・・・また、縮幅道路後退線と壁面線との間は植栽ゾーンとすることを提案する。・・・私はこれを「修景道路」と名付けた。こうした内容の沿道住民、所有者による建築協定、いうなれば、「沿道協定」を結び、沿道利用者一体となった管理、役割分担などで維持保全をおこなうこととする、というものだ。(P177)