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多縁社会

すまい・まちづくりノート

 我々は「縁」によって生かされている。「縁」はかつてのような血縁、地縁だけでなく、いまや様々な形の「縁」が我々の人生を生かしている。そしてそれが様々な住まいの形として見られる。本書は基本的に、こうした様々な住まいの形を紹介するものである。しかし、既に新しい住まいの形としてある程度知ったつもりになっている様々な住まいも居住者などにじっくりと取材すると、理念としてではなく、実態としてその形が見えてくる。そして多縁社会の実態と可能性が見えてくる。
 紹介されるのは、まずは筆者の一人、篠原聡子の住まいだ。「矢来町ハウス」と名付けたその住まいは、姉妹の家族が上下に暮らす2世帯住居だ。1階には事務所があり、その職員も一緒になって多様な関係が生まれている。従妹同士の子供たちの関係。姉妹の夫たちの関わり方なども興味深い。
 続いて紹介されているのが、旭化成ホームズが発表した2.5世帯住宅だ。両親と息子家族に、妹が同居する。それだけだと今どき普通にある家族の形という気もするが、0.5×5世帯と考えると2.5世帯の意味がぐっと変わってくる。0.5世帯とは、家族でありながら個人が集まって住んでいるということだ。
 さらにシェアハウスとコレクティブハウスが紹介される。コレクティブハウスは有名な「かんかん森」だが、建設されて10年が経ち、いよいよ成熟してきたように感じる。そして第4章では、「家のコミュニティ化、コミュニティの家化」と題して、東急電鉄が取り組むシングルペアレント世帯とシングル世帯が一緒に住むシェアハウス「STYLIO WITH 代官山」と、居住者の視点で商店街再生に取り組む高松丸亀町商店街を紹介する。
 さらに第5章では、住まいの一部を地域に開く「在林館」と「雑魚寝館」。そして第6章では2地域居住とクラインガルテンを紹介する。これらはいずれもかなりの決断と準備が必要とされ、誰でもが実践できる形ではないが、しかし新しい住まいの形の1つと言える。
 「支え合い」を家族だけに求められる時代ではなくなったことは既に多くの人々により指摘されている。また、介護保険など社会制度に期待するのも次第に厳しい状況が見えてきた。だからこそ我々は自ら家族や制度に頼らない新たな「縁」を見つけていかなくてはならない。その時に様々な新しい住まいの形が新たな「縁」をもたらしてくれるかもしれない。「多縁社会」はまさにこれから実現していかなければいけない社会の形だ。

多縁社会

多縁社会

●2.5世帯が、0.5×5世帯のような形になるのかもしれない。それが他人同士だったら、シェアハウスという賃貸の形態がある。シニアだけを集めて住むと、グループホームになりますが、シニアもいる中でシングルやカップルが集まったりする。そのような現象の入れ物として、2世帯住宅はかなり適しているのではないかと考えています。(P66)
●手に職を持ち、高い向上心を持つ。そんな自立心のある人たちが集まって、自主運営の生活は営まれている。・・・自立心がないと「住まいのシェア」で生活することは難しい。1人でも十分に暮らしていける人が集まって暮らすことで、お互いのスキルを持ち寄り、個人の生活だけでは得られないメリットを増幅して享受する。そんな豊かな生活が「住まいのシェア」では実践されているのだ。(P99)
●「根本の発想は、単純明快です。自分たちがハッピーに安全に快適に住みたい、ということですから」/まさに商店街は、自分たちにとっての住まいであるという考えがうかがえる。・・・「商店街を活性化すると言っても、郊外のショッピングセンターから『客』を取り戻すことは無理です。・・・そこで『居住者を取り戻す』ことにしたのです」(P16)
●縁(配慮と関心を持続的に持つ関係)を家や家族を超えて、もうひとまわり外側の「コミュニティ」の中で考えると、人間関係はぐっとダイナミズムを持ってくる。/これは、「家族」か、そうではなくて新たな「コミュニティ」か、という問題ではない。両者は相互補完的なものである。・・・「家族」は「コミュニティ」に支えられているのである。/支える分だけ、当然、面倒もある。それでも、得るもののほうがだいぶ大きいと思う人が増えたということだろう。(P286)