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反骨の市町村

すまい・まちづくりノート

 筆者の相川俊英氏はダイヤモンド・オンラインで「相川俊英の地方自治”腰砕け”通信記」を連載している。そこからの記事に加筆修正して発行された本ということで、元のウェブサイトを見に行ったら、3月31日を最後に連載が終了していた。私はこれまでこの連載を読んだことはなく、筆者の存在も知らなかった。がんばっている地方を紹介する本だが、政府が「地方創生」に取り組むとした昨夏以降、こうした内容の本は増えているのだろう。しかし本書にしたところで、際立って面白い取組みが紹介されているわけでもない。国にお任せの市町村行政を「タリキノミクス」、一方、自律的に活性化に取り組む市町村などを「ジリキノミクス」と名付け、代表例を紹介していく点が読みやすく面白いかもしれない。
 「タリキノミクス」として批判されているのは、宮崎県川南町、愛知県飛島村、神奈川県南足柄市大阪府大阪市、北海道夕張市岐阜県土岐市、そして熊本県。一方、「ジリキノミクス」として紹介されているのが、福島県泉崎村福島県矢祭町、神奈川県秦野市島根県雲南市山形県鶴岡市、千葉県印西市、愛知県岡崎市徳島県神山町、長野県下條村、神奈川県相模原市高知県四万十市徳島県美波町だ。中でも、筆者のお気に入りが長野県下條村。身の丈サイズで職員削減などを行った点が気に入ったのだろうか。大阪市も橋下市政になってからは改革を行っていると評価が高い。
 しかし大阪市への高評価を読むと、筆者はどこまで取材して、どこまで理解して評価しているのだろうかと逆に疑問になってくる。岡崎市の商店街での取り組みについても、確かに取り組んでいる内容は評価するが、商店街活性化の点で成果が出ていると言うにはまだまだ時間を要する。
 神山町の事例は興味深く、また一般的にも評価は高いが、なぜそうした結果につながったかと考えると、一人の独創的な人物の存在と多くの偶然があったと言える。「タリキノミクス」として批判される多くの市町村の中でも、きっと多くの職員や住民が地域のことを思い、他力ではない取組みを行っていると思うが、結果が現れてこなければ評価されることもない。結局、「タリキノミクス」「ジリキノミクス」と言ったところで結果を見てラベルを貼っているだけの話ではないのか。
 だから最近、この種の本を読むのはそれほど楽しいことではない。それでも何か情報があればと思って読む。話題に乗り遅れないために。でもどれだけ本を読んでもそれで「ジリキノミクス」が達成されるわけではない。逆にこんな本を読んでいる時点で「タリキノミクス」なのではないか。とすると、「タリキノミクス」を批判する筆者自身が多くのタリキストによって生計を立てていることになる。なんとも矛盾な話だ。地域活性化は多くの真剣な努力と多くの幸運の末にあると思う。どれだけこの種の本を読んでも地域活性化にはつながらないのではないか。

反骨の市町村 国に頼るからバカを見る

反骨の市町村 国に頼るからバカを見る

●一時期ブームとなった第三セクターのほとんどが失敗に終わっているだけに、「吉田ふるさと村」の健闘ぶりは特筆に価する。/なぜ、うまくいっているのか。いくつかの要因が考えられる。/地域の農林商工業者が大同団結して設立されたこともあって、当初から多角経営の道を選択したこと。あらゆる地域資源に着目し、その活用に知恵を絞ってオリジナル商品を生み出してきたこと。・・・また、設立時に行政が「赤字補填はしない」と宣言したことも大きい。/税金による支援を当てにする甘えの意識が少しでもあったら、こうはいかなかっただろう。(P130)
●大きな転機が1997年にやってきた。徳島県神山町に国際文化村を創る構想を公表したのである。大南さんたちは県の構想を新聞記事で知り、こう考えた。/国や県がつくった施設は住民自身が管理、運営することになるだろう。最初から自分たちの思いを込めた国際文化村を創っておかなければ、有効に使えない。どんなものが欲しいのか住民側から提案するべきだ。/さらに、「入れもの」よりも「入れるもの」が重要で、自分たちがソフト事業を立ち上げていくことで、最適化された施設(ハード)が見えてくるのではないかと。(P151)
●移住者を「優遇策」で呼び込もうとしている自治体は多いが、神山町のグリーンバレーの移住支援活動は極めてユニークだ。優遇策で釣るようなことはせず、住民側が移住希望者を、地域になじめるかどうかなどを見極めて判断するのである。/その究極が「ワーク・イン・レジデンス」というプログラムだ。空き家物件ごとに地元住民が希望する職種の人に入ってもらうもので、「この空き家にはパン屋さん」「こちらにはウェブ関係を」といったように指定する。将来、町にとって必要な働き手や職種の人たちを集めようと言う考えだ。(P154)
●地域活性化の道は「ジリキノミクス」によってしか切り開けない。「タリキノミクス」から「ジリキノミクス」に一人ひとりの意識を大転換させなければならない。/では具体的に何をすべきなのだろうか。/まずは自分たちが納めている税金の使い方に注意を払い、ものを言うことだ。・・・税金の使い方や集め方を他人任せにしないことこそが「ジリキノミクス」の大前提である。(P208)