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空き家対策と活用促進

 少し前に一般社団法人地域問題研究所開催の「空き家問題の見通しと対策~空き家の有効活用策」というセミナーに参加した。忘れる前にメモを起こしておこう。
 講師は3名。まず、富士通総研の米山秀隆氏。空き家問題についての著書もあるこの分野の第一人者だ。ついで、島根県江津市の森脇さん。そしてNPO法人尾道空き家再生プロジェクトの豊田さんの3人だ。
 まず、米山さんからセミナーのタイトルに沿って、空き家の実態と問題、対策等について体系だった話をされた。愛知県は比較的空き家率も低く、まだ県内で条例制定をしている市町村は少ないが、全国的には昨年10月時点で400を越える自治体で空き家管理条例が制定され、様々な方策が取られている。
 空き家撤去促進策としては、固定資産税滞納に伴い公売を実施している宗像市、転居費の補助を行っている呉市など、土地・建物の寄付等を条件に公費で撤去を行う長崎市など、固定資産税の特例解除を行う立山市など、跡地を無償で借り受けることを条件に撤去費補助と固定資産税免除を行う越前町、空き家バンク登録に対して補助を行う竹田市などがある。
 また、利活用促進策としては、全国で半数を超える市町村が空き家バンクを実施しているそうで、加えて改修費補助をしている市町村も多い。横須賀市では空き家に住む学生を対象に家賃補助を行ったり、茨城県ひたちなか市では公営住宅入居資格者に対して家賃補助を行っている。
 また、空き家関連ビジネスとして、空き家管理代行(定期巡回や屋内清掃など)や空き家の発掘・仲介、買取・再販を行う不動産業者も増えてきている。さらに、シェアハウスやグループホームとしての活用、住み替え支援、神戸市の隣地買い増し支援制度などが行われている。
 最後は、まちづくりと連動して戦略的に空き家対策を実施していくことが重要だという話で終わったが、全国、実に多くの市町村が様々な工夫をし、取り組んでいることがよくわかった。
 事例発表の1例目として発表があったのが島根県江津市広島市松江市の中間に位置する江津市では地域と連携し、しっかりとしたポリシーの下、空き家活用事業に取り組んでいる。空き家バンク登録に至る経過も非常に戦略的に取り組んでおり、空き家発掘にあたっては市が中心となり、所有者に対する不安解消に努めるとともに、固定資産税通知に同封することで市外の所有者への案内を行い、効果を挙げている。また、ハローワークの職員が常駐して職業紹介をするなどの取組や、修繕を見込んで建設業を兼業している宅地建物取引業者へ仲介を依頼するなど、実に様々な工夫をしている。
 5年以上に及ぶ空き家バンクの取組を経て、平成22年度から取り組んでいるのが、創業支援を通じた人材誘致だ。「選ばれる」から「選ぶ」へと考え方をシフトして、ビジネスプランコンテスト”Go-Con”に取り組み、受賞者に対してNPO法人てごねっと石見が起業を支援することで、空き家の活用と定住促進を図っている。実際にレストランやカフェ、デザイン事務所を開業した事例もでてきている。
 「空き家活用をきっかけに、人材が人材を呼び込むまちへ」がキーワード。単なる空き家活用ではなく、創業支援や地域コミュニティと連携することで大きな成果を挙げている。まずは市役所の人材がすごいということだろうか。
 続いて話を聞いたのは、NPO法人尾道空き家再生プロジェクト代表理事の豊田雅子さん。たぶん尾道の事例は既に多くのところで語られているだろうから、あえて重複して私が紹介するまでもないだろう。話を聞いて感じたのは、ただただ豊田さんがすごいなということ。ツアコンとして世界の街並みを見て回り、退職してふるさとに帰り、結婚、出産する中で尾道の魅力を再発見。6年かけて空き家を探し、リフォームを始めてからがすごい。
 尾道建築塾、尾道空き家談義、空き家での蚤の市チャリティ、尾道研究者を使ってのまちづくり発表会、空き地再生ピクニック、空き家再生!夏合宿など、様々な取組をいずれも楽しいイベントに仕立てて、空き家再生の活動を展開している。この日も再生第1号物件の通称尾道ガウディハウスから、旧北村洋品店、三軒家アパートメントなど豊富なスライドを見せていただいたが、既に尾道で16件近い再生に取り組んできたと言う。2歳の子供たちが9歳になったと言うからわずか7年間でこれだけの成果を挙げているというのも驚きだ。
 最近は尾道市空き家バンク事業を受託しウェブページを更新、尾道暮らしへの手引書の発行、空き家めぐりツアーの開催、尾道暮らしサポートなども行っている。また現在は、奥行きの深い町家型の大型空き家を再生する尾道ゲストハウス事業に取り組んでいる。これは単に空き家の再生ではなく、雇用を生み、観光振興にも貢献する。実に多角的に取り組みだ。
 全国各まちに一人ずつ、豊田さんがいればいいだろうけど、あんな人はそうはいない。日常業務と事務規定に縛られる行政職員では無理だろう。やはり尾道は特殊事例として聞くしかないかな。でも大いに刺激を受ける話だった。
 以上、3人の話を聞いた。いずれも簡単に真似すれば足りるという話ではない。それぞれ地域の事情・人材・特色などに応じ、様々な工夫が行われている。もっと言えば、空き家は再生すればいいというものでもない。人口・世帯数が減る中で、いかに人と家をベストマッチングさせるか。今後はそうした政策が求められている。空き家対策はまさにまちづくり施策で、まちづくりの処方箋は千差万別で終わりがない。面白いが、同時に実に難しい。空き家法で片付く話ではない。