豊橋・水上ビルを読む

 JIA東海支部の機関誌「ARCHITECT」に昨年12月号から豊橋市の建築家・黒野有一郎氏による連載「建築家は、リージョンをもつ。」が始まっている。初回は「『豊橋』と『水上ビル』」というタイトルで、豊橋市の概況と水上ビルの概要について書かれている。そして先日手にした2月号では「『水上ビル』のはじまり」というタイトルで、水上ビル群の中で最も初期に完成し、また豊橋駅寄りにある「大豊ビル」の誕生について紹介されている。
 その内容についてはリンクを張った原文を読んでもらえばいいのだが、水上ビルと言えば私も3年間、豊橋市内の高校に通学し、何度か寄り道した。餃子屋さんがおいしかった記憶がある。
 そして数年前、その水上ビル群の一つである県営住宅の件で関わることとなった。県営大井住宅は駅から連なる水上ビル群の中でも最も遠い位置にある5棟である。地上1・2階は他の水上ビルと同様に店舗となっており、3階から5階までが県営住宅となっている。水上ビルは昭和39年から建設されているから、当然、新耐震基準以前の建築である。しかも牟呂用水の上に立地し、基礎と基礎の間には水路が流れている。耐震性はよいとは言えない。
 このため店舗の所有者と共同での耐震改修を検討したが、複数の地権者が合意するのはなかなか難しい。こうしたこともあって、現在、県営住宅では入居者の募集を停止し、現在の入居者には他の住宅への転居を勧めている状況だ。
 しかし一方で、水上ビルは市民にとっても、地域にとっても大変なじみがあり、愛着のある建物だ。最近訪れたときには、妻面にアーティスティックなペイントがされ、活性化の取組が行われていた。
 「ARCHITECT」の連載を読むと、黒野氏は現在、大豊ビル商店街の理事長として、また水上ビルで行われているアートイベント「sebone」の実行委員長も務めているとのこと。次号では、このイベントについて紹介してもらえると言う。4月号を今から楽しみにしている。