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3.11以降の建築

 2014年11月1日から2015年5月10日まで、金沢21世紀美術館で開催される展覧会「ジャパンアーキテクツ 3.11以降の建築」に関連して発行された。って、まだ開催中じゃないか。できれば見に行きたいな。それはさておき・・・
 この展覧会でゲスト・キュレーターを務める五十嵐太郎と山崎亮の対談が巻頭にあり、その後、「1 みんなの家」「2 災害後に活動する」「3 エネルギーを考える」「4 使い手とつくる」「5 地域資源を見直す」「6 住まいをひらく」「7 建築家の役割を広げる」の各章に分けて、全部で22組の建築家の取組を紹介する。他に3つのプロジェクトが取り上げられているから、全部で25組かな。中には私も知っていた活動もあったが、多くは今回始めて知った。
 三分一博志のエナジースケープの試みはぜひ実物を見てみたいと思う。岡啓輔のセルフビルドの自邸建築は着工から10年が経過して未だ建設中。しかもそれを仮囲いもせず公開で行っていると言う。まさに日本のサグラダ・ファミリアか、東京の沢田マンションか。ぜひ見てみたい。
 他にも興味深いものが多い。日建設計ボランティア部の逃げ地図はHONDAがカーナビに採用したと言うし、浜松に拠点を置き、リノベーションなどを手掛ける403architecture[dajiba]の活動も面白そうだ。さらに内田樹の自邸を設計した光嶋裕介も取り上げられている。有名どころではブルースタジオや東京R不動産も忘れていない。藤村龍至鶴ヶ島プロジェクトや青木淳十日町「まちなかステージ」、乾久美子延岡駅周辺再整備の仕事も掲載されている。
 確かに3.11以降、建築が変わり始めているのかもしれない。建築家が単に建物の設計をするだけでなく、不動産や都市デザイン、住民参加など、その活動は限りなく広がり多様になりつつあるし、地方こそ建築家にとっての発信源となるという伊東豊雄の発言は既に時代から取り残されているのかもしれない。
 最近、リノベーションの事例などを見ても、時代は変わりつつあるなあと感じる。建築も今後その役割を大きく変えていくのだろう。

3.11以後の建築: 社会と建築家の新しい関係

3.11以後の建築: 社会と建築家の新しい関係

●[五十嵐]地域の人と新しい関わりをつくりながら地道にやっていくという方法は、これからの建築家にとって十分ありだろうと思いました。それどころか、地方からポンと次の主流となる建築家が出てくる可能性は高いとも思い始めました。/[山崎]僕もそう思います。今までは地方から東京や世界を目指していたんだけれど、これからは大都市から地方を目指す建築家が出てくるんじゃないかって。(P030)
●逃げ地図が新たな可能性を見せている。自動車メーカーのHONDAは、2013年3月からインターナビに逃げ地図を組み込んでいる。津波が起こった時、どのルートで逃げればいいのかがひと目で分かるようになっている。(P076)
●すでにあるものを壊すのではなく、あるものを使えるならば利用していくということが、これからの日本で建築やものをつくる時には非常に重要です。あるものをどう活かすことができるかというところからまずスタートするほうが望ましいと思います。あるものとは、単に既存の建物だけを言うのではなく、その場所にある風などの自然の要素についてもです。(P094)
●かつての成長時代につくられたインフラは、個々の振舞いに対応するというよりは人々をマスと捉え、抽象化して計画されていた。その結果、「インフラに合わせて」振舞うことが最も合理的に社会をかたちづくる方法になる。そこでは、個人には、社会が用意した規範に「ハマリ」にいくことが求められる。・・・しかし、縮退の時代を迎えた昨今、成長時代に「社会が用意した規範」は至るところで綻びを見せ始めている。そこで必要なのは、個人の振舞いに目を向けたインフラのあり方ではないだろうか。(P150)
●僕は「手で考える」ことや、建築の即興性などを考えながら、生き生きとした建築をつくるという方向に建築を拡張していきたい。・・・ちっぽけな自分だけに頼るじゃなく、周りで起きている様々なことにも意識を向け、「この建築の力になってくれ」と、祈るような思いで建築をつくる。・・・建築は、まちにある。たくさんある。モノをつくる悦びを纏った生きた建築は、まちゆく人々に、生き生きとした明るい思いを真っ直ぐに伝えるはずだ。(P236)