環境技術を駆使 愛知学院大学名城キャンパス

 職場からすぐ近くにこの4月、愛知学院大学名城キャンパスがオープンした。これまで名古屋の郊外・日進市にあった商学部経営学部・経済学部のビジネス系3学部を名古屋の中心地、名古屋城や官庁街に近接する地区に移設した。地下鉄「名城公園」駅から徒歩1分。道路を隔てて名城公園に隣接している。
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 総合監修を造園家の涌井史郎氏に依頼。設計は大建設計が担当。環境と立地に配慮したすばらしいキャンパスが出来上がった。中でもこだわったのが環境面への配慮。名城公園からの風を西から東へ通すため、施設群を4棟に分けて配置した。西側の幹線道路側には直接開けて緑が接し、市営住宅団地に接する東側も従前からのケヤキを残して歩行者空間を作っている。また、外壁も官庁街や名古屋城を意識して、タイルの色合わせを行い、屋根に庇を回している。最初に中心にそびえる10階建ての「アガルスタワー」最上階のアガルスホールに集合したが、そこから眺める景色は緑あふれる絶景だった。
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 各棟は環境性能への配慮が満載だ。CASBEE名古屋「S」ランクを取得するとともに、国土交通省「住宅・建築物省CO2先導事業」に採択され、年間CO2排出量約31%削減をめざしている。各棟を巡り、採用した環境技術を見学していった。
 まず、アガルスタワーではクールアンドヒートピットを採用し、外気を地中に取り込み、この空気を空調に利用することで冷暖房に必要なエネルギー低減を図っている。また、7階から10階まで中央ホールが吹き抜けとなり、春・秋の中間季は最上階の換気窓を自動開閉することで、研究室窓下の外気取入口からの空気を建物内に巡らせ換気をする自然換気促進システムを採用している。
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 研究室が主体のアガルスタワーには、名城公園側にマグネットラウンジと称するフリースペースを設置し、教員と学生や学生同士の交流を促す。また、グループワーク等が容易にでき、壁面へのプレゼンテーションなども可能なアクティブラーニング教室も自慢の一つだ。
 続いて、北端の「キャッスルホール」に向かう。こちらは約350席のホール「明倫」が中心的な施設。上階には大教室が並んでいる。こちらの環境技術面での売りは「居住域空調」と「誘引放射整流空調」だ。ホール「明倫」では人が滞在する低層部だけを効率的に空調する空調・換気システムが取られている。また、大教室では無数の小さな穴が開いたパネルから空調された空気をゆっくりと押し出すように給気する「誘引放射整流空調」が採用され、快適な室内環境を実現している。冬はパネルからの放射により小春日和のような心地良さだという。
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 キャッスルホールには西側幹線道路から連続して見えるように、各階エントランスに強風で倒木した永平寺五代杉から作られた焼き杉のレリーフが飾られている。これは愛知学院大学曹洞宗による大学という縁によるもの。また、見える化の一環として設置されたエントランスホールにはディスプレイと組み合わされたベンチが置かれ、その下部には防災用の毛布等が収納されている。さらに、ホールの窓面際にも小さなイスとテーブルが設置されるなど、空間を細部まで有効利用している。
 見学はここでアガルスホールの1階機械室に潜る。ここにはリチウムイオン蓄電池が設置され、深夜電力を蓄電して昼間に利用するとともに、屋根庇に設置された太陽光発電も利用している。また、ガスコージェネで発電するとともに、排熱投入型ガス吸収冷温水機や井水を活用した地中熱利用ヒートポンプ、ガスヒートポンプその他の複数の設備機器を設置して、高度の省CO2を実現している。
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 また、井水の熱源利用だけでなく、雨水も活用した中水利用や居室空気のカスケード利用など、徹底した自然・未利用エネルギーの有効活用を行っている。さらに、照明は全館LED照明とし、センサーと組み合わせて点滅・調光を行い、快適で無駄のない環境となっている。
 アガルスタワーの南側には図書館等を内包する「インテリジェンスキューブ」棟がある。図書館は入口に円筒型の書棚が配され、その先に利用者同士のプライバシーに配慮して微妙に配置された閲覧机や軽く開け閉めができる移動式書庫、それらを彩るLED照明が機能的に配置され、非常に快適な空間となっている。
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 続いて最南端の「くすのきテラス」に向かう。こちらは1階がコンビニと学食、2階には「猿Cafe」が入り、屋上庭園となっている。基本的に学生や教員優先だが、特に「猿Cafe」は外部利用を期待しているとのこと。15名以上なら3000円から飲み放題で貸切予約ができる。ちなみにキャッスルホールなどのホールや図書館も外部利用ができるそうだ。
 とにかくすばらしい施設で感激した。名城キャンパスがオープンして以来、メディアで紹介されることも多く、昨年度は志願者増加率全国1位を記録したそうだ。導入された環境技術については、国交省のモデル事業に採択されたこともあり、やや過剰な気がしないでもないが、コスト以上の効果があったということのようだ。次はぜひ、「猿Cafe」でゆっくりその環境を楽しみたい。